幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『究極の声絵巻~バリ島ボナのケチャ』

『究極の声絵巻~バリ島ボナのケチャ』
Kecak and Sanghyang of Bali
ワールド・ミュージック・ライブラリー 28


CD: キングレコード株式会社
KICC 5128 (1991年)
定価2,500円(税抜価格2,427円)

 

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§ ケチャ Kecak
1.プロローグ Prologue 6:07
2.ラーマとシータの登場~金の鹿を追うラーマ Entrance of Rama and Sitha; Rama chases the golden deer 5:34
3.聖者に身をやつしてシータを誘拐する魔王ラヴァナ Garbed as a saint, Rawana, the king of hell, kidnaps Sitha 5:21
4.魔王の島に幽閉されたシータ Sitha, imprisoned on the island of the king of hell 4:13
5.アノマンの登場 Entrance of Anoman 6:32
6.ラーマを迎え撃つメガナダ Meganada ambushes Rama 6:33
7.ジャタユ(ガルーダ)の救出 Rescue by Jatayu (Garuda) 3:55
8.スグリワとメガナダの対決 Confrontation of Sugriwa and Meganada 4:20

§ サンヒャン Sanghyang
9.サンヒャン・ドゥダリ Sanghyang Dedari 7:43
10.サンヒャン・ジャラン Sanghyang Jaran 5:59


演奏: 「ガンダ・サリ」ギアニャール県ボナ村
performed by "Ganda Sari," desa Bona, Gianyar
1990年11~12月: バリ島にて録音
Recorded November and December, 1990 in Bali


Producer: Kyoji Hoshikawa
Engineer: Hatsuro Takanami
Cover Design: 美登英利
Cover Photo: ラーマヤナ絵画(部分)(イダ・バグース・ケトゥ・パンダ画、アグン・ライ・ファイン・アート・ギャラリー蔵、古屋均撮影)


帯文:

「バリ島といえばケチャ。
元祖ケチャを誇るボナ村から圧倒的迫力と
臨場感を伝えるケチャの決定盤!ケチャのイメージ一新!」


帯裏:

「バリと言えばケチャ、そしてケチャならボナ。元祖ケチャを誇るボナ村から、そのルーツになったと言うカミオロシの儀式サンヒャンも収録。マルチ・マイク・アレンジならではの圧倒的迫力と臨場感は、これまでのケチャのイメージを一新。」


◆本CD「解説」(皆川厚一)より◆

「現在バリ島で主に観光用に上演されているケチャは、ヒンドゥ以前の時代からあるとされるバリの土着の宗教儀礼サンヒャンと、インドの古代叙事詩ラーマヤナを合体させたものである。ケチャの最初の創作の試みは記録によれば1935年頃ギアニャール県にある有名な“象の洞窟”の村、ブドゥルにおいて始められた。そのきっかけは当時村に住み着いていたドイツ人画家ウォルター・シュピースがサンヒャンの高度な音楽性、即ち楽器を用いず人間の声だけでガムランと同じ複雑なリズム表現を行う点に注目し、それを儀式としてではなく新しい芸能として作れないものかと村人たちにもちかけたことにあるといわれる。」

「サンヒャンは本来芸能ではなく、黒魔術や伝染病の流行から村を守るために様々な霊媒を使って神のお告げを聞くための儀式である。音楽的に見るとこの儀式の特徴は楽器を用いず人間の声の集団的なエネルギーによって霊媒をトランス状態に導くという点にある。」
サンヒャン・ドゥダリ
「ドゥダリとはビダダリ、即ち“天女”の事であり、天女の衣装をつけた初潮前の2人の少女を霊媒として踊らせトランスに入らせてお告げを聞くというものである。」
「サンヒャン・ジャラン」
「ジャランとは馬のことで、実物の馬ではなく木馬にまたがった少年ないしは僧侶がいわゆる“火渡り”をしながらトランスになるというものである。」

「今回のレコーディングは、ボナの劇場で深夜にかけて行なった。劇場といっても、ステージと客席との間が離れており、その空間は両側に壁がなく高い屋根と柱だけの広い土間造りになっている。」
「今回の録音では、円の中心に4本のダイナミック・マイクを、外側に向けて立てて収音した。つまり、ケチャのまっただ中に、一歩踏み込んで聴いた音になっており、実際に客席から聴こえる音場と、ちょっと違った立体感に満ちた迫力と遠近感を楽しめることを目標にしている。
 なお、劇場全体の熱気と、蛙の声などの周囲の環境音は、AKGコンデンサー・マイク、C-451 2本で捉えて現場でミックスしてある。」


◆本CDについて&感想◆

ブックレットに日本語および英語解説、写真図版(モノクロ)5点、「ワールド・ミュージック・ライブラリー」CDリスト、地図2点。
本作は1999年に『バリのケチャ――ボナの声絵巻』、2008年に『バリ/ボナのケチャ』として再リリースされています。

「レロレ ルーレロ」
「ロレロ ルーロリ」
ケチャをあまりききすぎると、まねしたくなるので要注意です。しかしこれだけ堂々と奇声を発することができたら、さぞ楽しいことでしょう。日本の伝統芸能や民謡、物売りやセリ(ヤッチャ)をおもわせる発声法もあります。
⑤では、ケチャにとりかこまれつつ、女の人がソロで歌い、男の人がセリフを言っています。
⑨の「ドゥダリ」では、女声合唱とケチャっぽいパートが交代に歌われています。
⑩の「ジャラン」では、ケチャっぽいパートと男声合唱が交代に歌われています。
要するにケチャというのは、「ポンチャック」とか「演歌チャンチャカチャン」みたいな合いの手が入る歌メドレーの合いの手の部分が複雑化したやつなのではなかろうか。
それはともかく、河野亮仙「ケチャ/芸能の心身論」(吉田禎吾監修『神々の島 バリ』春秋社、1994年、所収)によると、「ボナのケチャはサンギャン・ドゥダリ、サンギャン・ジャランの商業公演とともに併せて上演されるので、今日でも最も人気の高いケチャ公演の一つだ。」とあるので、本CD所収のサンヒャン(サンギャン)もそうした商業サンギャンなのでしょう。

★★★★☆

 

Ganda Sari - Kecak and Sanghyang of Bali

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