幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『聖母マリアのカンティガ集 ― 13世紀スペインの語り歌』 バーゼル・スコラ・カントールム/トマス・ビンクリー

聖母マリアのカンティガ集 ― 13世紀スペインの語り歌』 バーゼル・スコラ・カントールム/トマス・ビンクリー
Cantigas de Santa Maria
Lobgesänge auf die Jungfrau Maria, Spanien. 13. Jh.
Das Mittelalter-Ensemble der Schola Cantorum Basiliensis
Leitung/Direction: Thomas Binkley


CD: BMGビクター株式会社
BVCD-5044 (1992年)
税込定価2,000円(税抜価格1,942円)

 

f:id:nekonomorinekotaro:20210628192810p:plain

 

1.聖なるマリア、夜明けの星よ (カンティガ第100番) 3:22
Santa Maria, strela do dia (Cantiga 100)
2.天国への道を (カンティガ第389番) 12:07
A que pera parayso (Cantiga 389)
3.言うがいい、おお、うたびとたちよ (カンティガ第260番) 4:01
Dized' ai, trobadores! (Cantiga 260)
4.不信の徒らであろうとも (カンティガ第181番) 8:16
Peroque seja a gente (Cantiga 181)
5.いとも栄光高き御方の (カンティガ第195番) 26:53
Quena festa e o dia (Cantiga 195)

Total Time - 54:59


バーゼル・スコラ・カントールム:中世アンサンブル
指揮: トマス・ビンクリー

唱歌手[詩節担当]:
モンセラート・フィゲーラス: ソプラノ(1、4、5)
ジョゼップ・ベネート: カウンター・テノール(2、5)
ジョアキン・プロウバスタ: テノール(3、5)

唱歌手[折り返し句担当]:
シルヴィア・グライナー
ジェンマ・ヤンサーナ
ラウレン・ポメランツ
ジョゼップ・カブレ
ギリェン・フランセスク

器楽奏者:
ドナルド・アーヴィング、アンドレ・ジェキエ: フルート
ランドール・クック: シャルマイ、フィデル
スターリング・ジョーンズ: レバブ、ラベル
ジェースン・パラス: レベック、フィデル、リラ
トマス・ビンクリー: リュート、シトラ、打楽器類
ケン・ズッカーマン、ソロモン・ロス: リュート
ロバート・クランシー: マンドーラ
ローラン・オーベール: ギターン
テルミ・チノネ: サラセン風ギター
ティモシー・ドーティ: ハープ
サリー・ソープ=スミス: プサルテリウム


Aufnahme/Recording: Pere Casulleras, Kurt Deggeler
Technik/Technical equipment: Perevox
Aufgenommen/Recorded: 13.-17. III. 1980 St. Arban Kirche Basel
Titlebild/Front cover picture: aus/from "Les cantigas de Santa Maria de Alfonso El Sabio"
(Bibliothek des Klosters des Escorial/Bibliotheca of the monastery of the Escorial)


◆本CD「解説」(濱田滋郎)より◆

「〈聖母マリア頌歌集〉の訳語を通じても知られるこの集成は、アルフォンソX世が最も力を入れたライフ・ワークであったと見ていい。その内容は聖母マリアへの敬虔で抒情的な頌歌(ほめうた)と、まことに多種多様な形で世のあちこちに行われた聖母の奇蹟物語である。物語としての筋を持たない純粋な頌歌は“0番”にあたる前口上をも含め10番、20番、30番……と末尾に0がつく10番ごとに挿入され、他はすべて、魔訶不思議で、神秘で、しかもしばしば民話ふうに親しみやすい――時にはこんにちの“不敬な”われわれが思わず笑ってしまうような――奇蹟物語なのである。」

中世音楽の研究家・実践家として著名なビンクリーはかねてこの集成を現代に蘇生させようと力を注いできた一人である。彼は元来クレマンシックらと並んで中世音楽演奏にあたり“新しい解釈”をとる上で最尖端に位置する人で、ことに中世におけるイスラム圏からの影響を重視する立場をとってきた。(中略)まず、対象となった《聖母マリアのカンティガ集》それ自体が、中世ヨーロッパの他のいかなる集成にもまして、イスラム圏からの影響を匂わせているものである。たとえば[4]のカンティガ(第181番)などは物語の舞台がモロッコであるばかりか、旋律にもアラブ系の歌謡に相通ずる、イスラム圏ふうの香りが感じとれる。」
「この演奏の特色は、在来の《カンティガ集》の録音が採ってきたような、歌詞を1・2番程度にとどめてなるべく多くの曲数を収録するという、断片的・サンプル的な方法を離れているところにもある。ディスク後半すべてが、第195番のカンティガ1篇だけで占められていることからも、それは即座に察せられよう。(中略)ここで採られているリズムの変化(中略)、楽器の使用とその方法、(中略)まったく自由な(原譜にこだわらない)器楽による間奏曲の挿入などについては、これがあくまでひとつの解答例であり、いくらでも異説は唱え得ることを認めねばなるまい。ともあれ、ここでビンクリーとバーゼル・スコラ・カントールムの人びとは、たんなる試みの域を超えて豊かな円熟味を感じさせる、じつに楽しい演唱を繰りひろげている。」


◆本CDについて◆

ブックレット(全32頁)に「解説」(濱田滋郎)、歌詞対訳(濱田滋郎)、図版(モノクロ)1点、「バーゼル・スコラ・カントールム・ドクメンタ」シリーズCDリスト。解説は日本語によるもののみで、原盤解説は掲載されていません。

原盤は独ハルモニア・ムンディ。1980年録音。オリジナルLPでは#1~4がサイド1、#5がサイド2でした。

聖母マリアのカンティガ集」に関しては、その後、エドゥアルド・パニアグアによる全曲録音(たぶん)のテーマ別「カンティガ」シリーズが出ていますが、それはたいへんイスラム色が濃い演奏になっています。本作ではリズムを強調した程よいイスラム(アラブ=アンダルース)テイストが心地よいです。

★★★★★


Thomas Binkley - Cantigas de Santa Maria

youtu.be

 

nekonomorinekotaro.hatenablog.com

nekonomorinekotaro.hatenablog.com