『シタール幻想~真美のラーガ』

シタール幻想~真美のラーガ』 
Classical Music of North India/Sitar and Tabla I 
ワールド・ミュージック・ライブラリー 12 


CD: キングレコード株式会社 
KICC 5112 (1991年) 
税込定価¥2,500(税抜価格¥2,427)

 

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帯文: 

シタールの至宝=ナグとの最後の録音となったミシュラの
白鳥の歌。これぞインド音楽芸術の精華!」


帯裏文: 

「タブラ界の至宝マハプルシュ・ミシュラ、白鳥の歌となった好サポートを得て、変幻自在に羽ばたくモニラル・ナグのシタール。ベストセラーの第一作に続いて、ここでも彼らならではの絶妙のプレイを披露。」


1.プリヤ・ダネシュリー Puriya Dhaneshri 23:23 
2.ラーガ: ラゲシュリ Raga: Ragheshri 24:02 
3.ターラ: ジャープタール Tala: Jhaptal 10:25 

シタール: モニラル・ナグ 
Sitar: Sri Manilal Nag 
タブラ: マハプルシュ・ミシュラ 
Tabla: Pandit Mahaprush Misra 

録音: 1985年9月13日、キングレコード第2スタジオ 
Recorded Sept. 13, 1985 at the #2 Studio, King Record, Tokyo

Producer: Katsuhiko Nishida
Engineer: Hatsuro Takanami

監修: 草野妙子 

Cover Design: 美登英利 
Cover Photo: プルリアのチョウ「太陽神」(田淵暁 撮影・国際交流基金提供) 


◆本CD解説(鳥居祥子)より◆ 

「“レとダ、そしてマ(引用者注:インド音名。「レ」と「ダ」に下線、「マ」の上に「|」)が倦怠感を暗示する。……日没を前に、一日を終えた世界がそこにある。” ――Omkarrath Thakur プリヤ・ダナシュリはサンディプラカーシュ(昼と夜の境いめ)に奏されるラーガである。この時間帯に奏でられるラーガには、けだるさ、思慕、憂うつ、といった情感がつきまとう。」
「タブラの加わらないアーラープの部分ではラーガの本質を歌い上げることが中心になる。(中略)西洋音楽を聞き慣れた耳には魔可不思議にさえ聞こえる流れをウニャウニャと続けておいて、基音(音列の開始音)のサや五度上のパに、ポッと解決するあたり、まさにプリヤ・ダナシュリ独特のけだるさが漂っている。
 シタールで声楽的な表現をしようとする時使われるのが、ミーンドという、弦をフレットに添って引っ張るテクニックだ。ミーンドを使うことによって、一つのストロークだけでレースのように繊細な音の運きをすることができるし、また、右手のストロークとの組み合わせで、独特のうねり感を出すことができる。モニラル節(ぶし)ともいえる旋律の歌わせ方は、この右手のストロークをともなったミーンドの使いかたにある。モニラルの演奏はのびやかで、アーラープから拍節感のあるジョールへと進むにつれ、プリヤ・ダナシュリのもつけだるさが、清涼な夜への期待へとかわってゆくのが感じられる。
 タブラが入った部分は、十拍で一周するジャープタールにのっとって演奏されている。タブラにはテカ、シタールにはガットと呼ばれる定型があり、一方が即興する間、他方は定型を守り続ける。
 ガットの部分の聞きどころは、いかに美しく、かつ、かっこよく一拍めに戻るか、である。ここでは、旋律を歌うように流し、自然に一拍めに戻る形で始まり、やがてガットの中に、ターンと呼ばれる走句が入ってくる。ターンは次第に長いものになり、何周か回った後ティハイを伴って一拍めに戻る形が現われる。ティハイというのは、同じフレーズを3回繰り返し最後の音を一拍めにもってゆくことで、一拍めを強調する目的で使われる。」
「全体的なテンポは徐々に上がり、やがてジャープタールのままジャーラーに入る。
 ジャーラーというのは、撥弦楽器が独自に開発した部分で、チカリ弦を旋律の合い間に合いの手のように入れてゆく。テンポが上がるとティンタールに切りかえる演奏家が多いが、モニラルはジャープタールのまま演奏を終結している。」

「“ラーゲシュリはラーギニ(ラーガの女性形)と呼ばれるのがふさわしい。甘く柔らかく、それでいて、しっとりと落ち着いている” ――O. Thakur」
「ラーゲシュリは夜のラーガだ。アーラープはゆっくりと始まり、きめ細かなミーンドや低音部での展開が静かな夜を思わせる。」
「ガットは十六拍で一周するティンタールだ。ティンタールは器楽でもっとも多く使われ、ほんの数十年前までは、シタール音楽はティンタール以外のターラで演奏されることはなかった。(中略)“モニラルはヴィシュヌプール・ガラナ(流派)の代表者であるが、マイハール・スタイルを気持ち良く自由に取り入れて…” という一節を新聞評で読んだことがある。マイハール・スタイルというのは、アラウディン・カーンを長として、アリ・アクバル、ラヴィ・シャンカール、ニキル・ベナルジーといった人達を中心とした音楽家集団が生み出した新しい形式、テクニックを指している。ティンタール以外のターラを演奏すること、シタールで元来、旋律を弾くことのなかったカラージと呼ばれる低音弦での展開など、モニラルが彼らから取り入れたものは少なくない。マイハール一派(歴史的にみて、ガラナとは言えない)に限らず、モニラルは自分の受けついだ伝統の中に、積極的に良いものを取り入れてゆこうとする開放的な意欲がある。(中略)とはいえ、彼は自分の引き継いだ伝統の枠組みから離れてしまうことはない。」
「ここでは、ガットはマッディラヤ(中位の早さ)で始まる。」
「ティハイできめる、という構築美より、旋律を歌い上げることに重点が置かれているが、後半タブラがテカを離れてシタールの即興のパターンに加わるサート・サンガットは、2人の息がぴたりと合って気持ちがいい。コンサートではこういうラヤカリ(リズムの遊び)が何分も続くのだが、ここでは、うわっと雰囲気を盛り上げておいて、そのままジャーラーにはいる。
 ジャーラーというと、スピード感の追求のみにとらわれてしまうことが多いが、どんなに早くても旋律を歌うのがヴィシュヌプール・ガラナの特徴だ。チャ、チァ、チャと入る正確なチカリと旋律を歌うミーンドが、甘く夢見心地で、かつスリリングなクライマックスへ導いてくれる。」


◆本CDについて◆ 

ブックレットに「解説」(鳥居祥子)、「演奏者とその演奏について」(荒井俊也)、英文解説、「ワールド・ミュージック・ライブラリー」CDリスト、地図2点。

シタールのモニラル・ナグとタブラのマハプルシュ・ミシュラをフィーチャーした二枚のうちの「Ⅱ」で、1988年に「エスニック・サウンド・コレクション 19」『シタール幻想Ⅱ~眞美のラーガ』(K30Y-5119)としてリリースされ、本CDはその再発、1999年の「ワールド・ミュージック・ライブラリー」には未収録で、2008年の「ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー」で『シタールの芸術―モニラル・ナグ、マハプルシュ・ミシュラ』(KICW-85009/10)として2枚組にまとめられました。

★★★★★ 


Puriya Dhaneshri

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