幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『ブルガリアン・ヴォイスⅡ (ブルガリアの声の神秘)』

ブルガリアン・ヴォイスⅡ (ブルガリアの声の神秘)』
Le Mystère des Voix Bulgares Volume 2


CD: 日本コロムビア株式会社 
30CY-2225 (1988年) 
¥3,000 
Made in Japan 

 

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1.笛音 
Kaval Sviri (arr. Peter Liomdev)
Ensemble Trakia, plovsiv 1982
2.病(娘よ、起きておくれ) 
Stani Mi, Maytcho (comp. Krasimir Kyurkdjiyski)
Choeur RTB, sofia 1983
Solo: Nadejda Chwoineva
3.ディ・リ・ド 
Di-Li-Do (arr. Kyrill Stefanov)
Ensemble Pirin, Blagoevgrad 1970
4.嫁娶(ギョーロの結婚) 
More Zajeni Se Ghiouro (arr. K. Kyurkdjiyski)
Choeur RTB, sofia 1984
5.白絹の衣 
Tche Da Ti Kupim Bela Seitsa (arr. K. Kyurkdjiyski)
Choeur RTB, Sofia 1984
6.女狐(子供達はもういない) 
Ovdoviala Lissitchkata (arr. trad.)
Orchestra Yvan Kirev, 1957
Solo: Verka Siderova/Tinka Pescheva
7.月読(つきよみ) 
Messetchinko Lio (arr. Krasimir Kyurkdjiyski)
Choeur RTB, Sofia 1975
Solo: Nadejda Chwoineva
8.ルーシュカ 
Ei Mori Roujke (arr. Kyrill Stefanov)
Ensemble Pirin, Blagoevgrad 1970
Solo: Vasilka Karadalieva
9.ドラガンと夜啼鶯 
Dragan I Slavei (arr. Philip Koutev)
Choeur Philip Koutev, 1973
Solo: N. Karadjova/St. Petkova/Y. Taneva/S. Nikolova
10.アトマジャはストラヒールに告げる 
Atmadja Duma Strachilu (arr. Krasimir Kyurkdjiyski)
Choeur RTB, Sofia 1979
Solo: Kalinka Valcheva
11.2つのトゥルラシ地方の唄 
Dve Tourlaski Desen (arr. Nik. Kaufman)
Quatuor vocal: Kalinka Valcheva/Vasilka Andonova/Paulina Gortscheva/Stoyanka Boneva
12.トドルカ 
Trenke, Todorke (arr. K. Kyurkdjiyski)
Choeur RTB, Sofia 1982
13.子のない若妻 
Besrodna Nevesta (arr. Nik. Kaufman)
Choeur RTB, Sofia 1979
Solo: Radka Aleksova
14.告白(ロドペの哀歌) 
Izpoved (arr. K. Kyurkdjiyski)
Choeur RTB, Sofia 1976
15.ギョーレ・ドス 
Ghiore Dos (arr. Stefan Moutafchiev)
Choeur RTB, Sofia 1982
16.ミルカ、眠っているのなら 
Spis Li, Milke Le (comp. Gueorgui Mintchev)
Choeur RTB, Sofia 1973
(extrait de "Starobulgarski Chroniky" Oratorio)


Art Direction, Design and Typography:
Vaughan Oliver at 23 Envelope
"Shepherdess" Photography: Catherine Cellier
Illustration: Gill Sampson
Field Photography: Simon Larbalestier

Licensed from Disques Cellier


◆本CD解説(濱田滋郎)より◆ 

ブルガリア女声合唱は、発声のほか、ハーモニーの点にもたいそう大きな特徴を持っている。一般西洋音楽のように五度、四度、三度、六度のいわゆる協和音にもとづいて合唱を組み立てる考えとは全く違って、ブルガリアの人びとは二度、七度、九度などの不協和音程による合唱を行なう。(中略)主なメロディーの下に、あまり動きのない一本調子のメロディーを置く。これはしばしば指摘されるように、ブルガリアにも古来伝わるバグパイプ(ガイタと呼ばれる)のドローン・バス(必ず鳴っている持続低音)からの影響かもしれない。さらに、主なメロディーに添えて、それよりは弱く影のような具合に他の声がつくのだが、そこに生ずるハーモニーが、すでに言ったとおり普通のこととして不協和音を含むのである。
 このように不協和音程のまま平行する合唱は、じつはブルガリアの特産物ではない。ベルカントの本場イタリアでさえ、山間の村には、少なくとも近年まで、伝統的に平行2度の重唱を行なってきた人びとがある。おそらく、かつては、この唱法はヨーロッパにもかなり広く聴かれたのではなかろうか。近代的ハーモニーが人びとのあいだに普及するにつれ、そのような伝統はしだいに消えていってしまった。しかし、ブルガリアでは、それは消えぬどころか、生命の炎をあかあかと保ちつづけているのである。(中略)前のCDは演唱者の名を記していなかったが、おそらくそのようなアマチュアの歌――とすれば最高度に洗練されたものだが――を集めたものなのだろう。ここに聴く“第2集”では演唱者(合唱団、ソリストたち)が明記され、プロあるいは少なくともセミ・プロの人びとであることがわかる。国立放送合唱団(RTB)や、この国の合唱運動に力をつくした大立者フィリップ・クーテフ(1903-82)の合唱団による演唱も含まれる。ここでたいへん興味深く感じられ、同時に快哉を叫びたくなるのは、ブルガリアのこうした民族的合唱においては、アマチュアもプロもまったく同じ平面に立っている、という事実である。言いかえれば、ここでは“洗練”は“西欧化”の同義語ではない。ブルガリアの合唱音楽から、いま真先に多くのことを、根本的なことを学び取らねばならないのは私たち日本人である。」
「面積日本の約3分の1、人口1千万に達しないブルガリアは、かつて数百年間(1393-1878)もトルコの支配下にあった。住民の血と文化の中には西洋的なものと東方から来たそれとが、もはや分かちがたく混在している。西方スペインの例にも見るとおり、長い長い人種混淆のうちから自然に醸成された音楽には、汲めども尽きぬ深みがある。“ローカル”などと言い捨てるのは間違いで、じつはこれらこそ、真の意味で最もユニヴァーサルな音楽なのである。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(四つ折 8頁)に「Le Mystere des Voix Bulgares」(Marcel Cellier/Translated from the French by Catherine Gaitte)。
日本語ブックレット(三つ折 6頁)に「声であれ、楽器であれ、精緻なアンサンブルは織物にたとえられる」(成澤玲子)、「ひときわ特異な光を放つ「青星」のような《ブルガリアン・ヴォイス》」(濱田滋郎)。濱田滋郎の解説中に歌詞大意。

★★★★★ 


Ghiore Dos

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