幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『サティ: 初期ピアノ作品集』  ラインベルト・デ・レーウ

『サティ: 初期ピアノ作品集』 
インベルト・デ・レーウ 

Satie 
The Early Piano Works 
including 
Gymnopédies / Gnossiennes 

Reinhert de Leeuw 


CD: Philips/日本フォノグラム株式会社 
シリーズ: DUO “デュオ” 
PHCP-9139~40 (1993年) [2枚組] 
¥2,900(税込)(税抜価格¥2,816) 

 

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サティ 
Erik Satie (1866-1925) 

初期ピアノ作品集 
The Early Piano Works 


DISC 1 

グノシエンヌ 
Gnossiennes 
1.第1番 No. 1 5:37 
2.第2番 No. 2 3:07 
3.第3番 No. 3 4:19 
4.第4番 No. 4 3:02 
5.第5番 No. 5 3:23 
6.第6番 No. 6 2:25 

7.舞踏のための小序曲 
Petite ouverture à danser 2:19 

8.天国の英雄的な門への前奏曲 5:39 
Prélude de la porte héroique du ciel 

9.ゴチック舞曲 13:33 
Danses gothiques 

ジーヴ 
Ogives 
10.Ⅰ 2:47 
11.Ⅱ 3:58 
12.Ⅲ 2:38 
13.Ⅳ 3:37 

3つのジムノペディ 
Gymnopédies 
14.第1番 No. 1 5:58 
15.第2番 No. 2 4:57 
16.第3番 No. 3 4:53 


DISC 2 

3つのサラバンド 
Sarabandes 
1.第1番 No. 1 6:41 
2.第2番 No. 2 7:19 
3.第3番 No. 3 6:04 

バラ十字教団のファンファーレ 
Sonneries de la Rose+Croix 
4.教団の歌 5:09 
Air de l'Ordre 
5.大司教の歌 6:06 
Air du Grand Maître 
6.大修道士の歌 3:43 
Air du Grand Prieur 

冷たい小品 
Pièces froides 
 逃げださせる歌 
 Air à faire fuir 
7.Ⅰ 3:38 
8.Ⅱ 1:49 
9.Ⅲ 3:37 
 ゆがんだ踊り 
 Dnases de travers 
10.Ⅰ 1:41 
11.Ⅱ 1:25 
12.Ⅲ 2:15 

13.祈り 1:34 
Prière 

4つの前奏曲 
Quatre préludes 
14.ノルマンディの騎士たちによって催された祝宴 若き乙女を賛えるために 4:16 
Fête donnée par des Chevaliers Normands en l'Honneur d'une jeune Demoiselle 
15.エジナールの前奏曲 2:17 
Prélude d'Eginhard 
16.ナザレ人の第1前奏曲 5:25 
1er Prélude du Nazaréen 
17.ナザレ人の第2前奏曲 4:35 
2ème Prélude du Nazaréen 


インベルト・デ・レーウ 
Reinbert de Leeuw 

録音: 1974年~1977年、オランダ 
[ADD]ステレオ録音 
Total playing-time 
DISC 1: 73:32 
DISC 2: 69:07 


◆本CDについて◆ 

2枚組用ジュエルケース(10mm厚)。6頁ブックレット(巻き三つ折り)に渡辺茂による解説(「エリック・サティの足跡/初期ピアノ作品について/演奏者について」)。インレイカードにトラックリスト&クレジット、インレイ裏(トレイ側)に「フィリップスDUO“デュオ”」シリーズCDリスト。

デ・レーウのサティはたいへんゆったりしています。というかのろのろしています。テンポのはやいコマーシャルなサティ演奏に慣れた耳できくと躓きそうになります。あまりのろのろしていると遠足だったら置いて行かれて迷子になってしまいます。しかし遠足というのは集団行動の規律を教え込む為の、子どもたちをいわば社会という軍隊へ送り込むための軍事演習であって、目的は生まれ持った「個性」を剝奪して社会性を刷り込むことです。ところでサティといえば最も孤立無援な「個性」的な作曲家であって、うっかりして軍隊に入ってしまったサティは集団生活に嫌気がさしてわざと気管支炎になって兵役を逃れたというエピソードすらあるほどです。晩年のサティは「サティ・グループ」と称して近所の子どもたちを集めてピクニックに出かけるのを楽しみにしていたそうですが、ピクニックは遠足とは違います。アラバールの不条理劇に「戦場のピクニック」というのがあるように、「戦場」のシノニム(同義語)が「遠足」だとしたら、アント(アントニム/対義語)は「ピクニック」です。「ジムノペディ」は古代スパルタ人のイニシエーション儀式である「ギムノパイディア」(身体調教によるスパルタ教育)に対するサティの皮肉であって(音楽教育もまたスパルタ教育の一種です)、社会にイニシエートして規律正しく集団に奉仕するよりは、むしろ遠足をサボって学級崩壊してピクニックに出かけよう、300円のおやつに条件反射的に拘束されることなく気の向くままに森の木の実を摘み野の花の蜜を吸おう、甘いミツを吸ったツミへの「罰」として、いっそ軍隊から追放されよう、という、ある種の「ゆとり教育」であるといってよいです。

★★★★★ 


Gymnopédie No. 1


Danses gothiques