幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

John Renbourn  『Faro Annie』 

John Renbourn 
『Faro Annie』 


CD: Castle Music, a label of Sanctuary Records Group Ltd. 
CMRCD534 (2002) 
Made in England 

 

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スリップケース表。


1. White House Blues (Trad. Arr. Renbourn)  3:36 
2. Buffalo Skinners (Trad. Arr. Renbourn)  3:40 
3. Kokomo Blues (Arnold)  3:56 
4. Little Sadie (Arnold)  3:19 
5. Shake Shake Mama (Jansch, Renbourn)  3:26 
6. Willy O'Winsbury (Trad. Arr. Renbourn)  5:40 
7. The Cuckoo (Trad. Arr. Renbourn)  3:59 
8. Come On In My Kitchen (Johnson)  3:54 
9. Country Blues (Jansch, Renbourn)  3:38 
10. Faro Annie (Renbourn, Cox, Thompson, Draheim)  3:28 
11. Back On The Road Again (Tard. Arr. Renbourn)  3:14 


John Renbourn: Vocals, guitars, harmonica, sitar 
Pete Dyer: Harmonica on "Come on in my kitchen" and "Kokomo Blues." 
Dorris Henderson: Vocals on "White House Blues," "Kokomo Blues" and "Back on the road again." 
Terry Cox: Drums on "Faro Annie" and "Shake Shake Mama." 
Sue Draheim: Fiddle on "Willy o'Winsbury," "Little Sadie" and "Country Blues." 
Danny Thompson: Bass on "Faro Annie" and "Shake Shake Mama," 


Original cover design: John Ashcroft 
Reissue design: Becky Stewart @ Hi-Hat 
Project co-ordinators: Steve Hammonds & Antony Amos @ Sanctuary Records Group Ltd. 
Front cover photos: Janet Kerr and Shepard Sherbell 
Sleeve notes: Colin Harper 
Aditional photos: Redferns 
Producer: Bill Leader 
Engineer: Nic Kinsey 
Recorded at Livingston Studios 
Mastering: Andy & Sean @ Masterpiece 

Originally released on Transatlantic TRA 247, 1971 


◆本CDについて◆ 

ジョン・レンボーンのソロ第5作。1971年録音、1972年リリース。

スリップケース、透明ジュエルケース。ブックレット(全12頁)にColin Harperによる解説、トラックリスト&クレジット、モノクロ写真図版4点、モノクロ図版(LPレーベル面)2点、「Also available...」CDリスト&カラー図版(ジャケ画像)10点。

TransatlanticからRepriseにペンタングルごと移籍することになって、まだソロ・アルバムを作る契約が残っていたので大急ぎで作ったということで、それなりに大味な作風になっています。古楽(中世/ルネサンスバロックの器楽曲)とイングランドの伝承民謡に基づいたインスト曲から成っていた前作『The Lady and the Unicorn』(1970年)から一転して、歌もの中心でブルースやカントリーなどアメリカ色が強くなっていて、ファースト・アルバムに戻ったような感じです。ダニー・トンプソンとテリー・コックスのペンタングル仲間だけでなく、かつてのガールフレンドのドリス・ヘンダーソン、当時のガールフレンドのスー・ドライハム(のちジョン・レンボーン・グループ)がゲストで参加しています。
そういった意味では、ファースト以前のドリス・ヘンダーソンとのデュオ作から、ペンタングルを経て、後のジョン・レンボーン・グループへの発展過程における自己検証であって、たんなる原点回帰ではないです。

#1はアメリカ第25代大統領ウィリアム・マッキンリーの暗殺(1901年)を扱ったバラッド。チャーリー・プールのレパートリー。レンボーン(歌、ギター×2)、ドリス・ヘンダーソン(コーラス)。
#2は19世紀後半のアメリカ西部開拓時代のバッファロー狩りを扱ったバラッド。詳しくはOn The Trail Of The "Buffalo Skinners"。レンボーン(歌、ギター、シタール)。
#3は原盤LPのクレジットでは「Trad. arr. Renbourn」、本CDでは「Arnold」(Kokomo Arnold)となっていますが、ミシシッピ・フレッド・マクダウェル(Fred McDowell)の「Kokomo Blues」です。レンボーン(歌、ギター、エレキギター)、ドリス・ヘンダーソン(コーラス)、ピート・ダイアー(ハーモニカ)、ダニー・トンプソン(ベース)、テリー・コックス(ドラムス)。
#4も原盤LPでは「Trad. arr. Renbourn」、本CDでは「Arnold」となっていますが、これはアメリカの殺人バラッドです。実話に基づいた殺人バラッドはたいへん人気があって、アメリカのものではペンタングルも取り上げている「Omie Wise」や、ミシシッピジョン・ハートで有名な「Stack O'Lee」などがあり、ジミ・ヘンドリックスで有名な「Hey Joe」もこの流れにあります。「Little Sadie」は本作以前にはクラレンス・アシュリー、ドック・ワトソン、ボブ・ディラン、トゥリーズ、別題ではウディ・ガスリー(「Bad Lee Brown」)、キングストン・トリオ(「Bad Man's Blunder」)など多数の録音があって、クラレンス・アシュリーのヴァージョンが近いですが、歌詞が一部異なっています。レンボーン(歌とギター)&スー・ドラハイム(フィドル)。
#5は原盤LPでは「Trad. arr. Renbourn」、本CDでは「Jansch, Renbourn」となっていますが、マンス・リップスカム(Mance Lipscomb)作のブルースです。レンボーン(歌、ギター、エレキギター)、ダニー・トンプソン(アルコ・ベース)、テリー・コックス(ドラムス)。
#6はスコットランド民謡で、レンボーン(歌とギター)&スー・ドラハイム(フィドル)のデュオ。1972年のペンタングルのヴァージョン(歌はジャッキー・マクシー)とほぼ同じで、アン・ブリッグスのヴァージョンが元になっていると思いますが、アン・ブリックのヴァージョンの元になっているのは1968年のスウィーニーズ・メンのヴァージョンです。遡るほど訛りが強くなります。
#7はイギリス民謡で、ペンタングルも『Basket of Light』で取り上げていますが、それとはだいぶ違います。レンボーン(歌、ギター、シタール)&ダニー・トンプソン(ベース)。
#8はロバート・ジョンソン作のブルース。レンボーン(歌、ギター、スライドギター)&ピート・ダイアー(ハーモニカ)。
#9は原盤LPでは「Trad. arr. Renbourn」、本CDでは「Jansch, Renbourn」となっていますが、アメリカのバンジョー奏者ドック・ボッグス(Dock Boggs)の演奏が元になっているようです。レンボーン(歌、ギター)&スー・ドラハイム(フィドル)。
#10はレンボーン(ギター、エレキギター、ハーモニカ)、スー・ドラハイム(フィドル)、ダニー・トンプソン(ベース)、テリー・コックス(ドラムス)のセッションで、インストのブルースです。
#11は原盤LPクレジットには「Ian A. Campbell」、本CDクレジットには「Trad. Arr. Renbourn」とあり、本CD解説にはAlex Campbell作とあって、どれが正しいのか謎です(イアン・キャンベルとアレックス・キャンベルは別人です)。しかしもうめんどくさいので誰が作者でもいいです。レンボーン(ギター、エレキギター)、ドリス・ヘンダーソン(歌、コーラス)、ダニー・トンプソン(ベース)、テリー・コックス(ドラムス)。

★★★★☆ 


Little Sadie


Willy O'Winsbury


Faro Annie