幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

John Renbourn  『Live In Kyoto 1978』

John Renbourn 
『Live In Kyoto 1978』 


CD: Drag City Inc. 
DC713CD [STEREO] (2018) 

 

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1. Candyman (reverend Gary Davis) 
2. Anji (Davey Graham) 
3. I Know My Babe (trad. arr. Renbourn) 
4. So Early in the Spring (trad. arr. Renbourn) 
5. Kokomo Blues (Mississippi Fred McDowell) 
6. The Cuckoo (trad. arr. Renbourn) 
7. Banks of the Sweet Primroses (trad. arr. Renbourn) 
8. John Barleycorn (trad. arr. Renbourn) 
9. Peacock Rag (Arthur Smith) 
10. The Earle of Salisbury (William Byrd) 
11. Transfusion (Charles Lloyd) 
12. Lamentation for Owen Roe O'Neill - The Orphan - The English Dance (trad. arr. Renbourn) 
13. Medley: Gypsy Dance - Jew's Dance (Hans Neusiedler) 


Recorded on the 30th of May, 1978 
at Jittoku in Kyoto, Japan 

Recording Engineer: Satoru Fujii 
Executive Producer: Masaki Batoh 
Master Tape Restoration & Conversion: Kazuo Ogino 
Audio Restoration & Mastering: Mike Walker of Renbourn Guitar Workshops 
Cooperation: Toshihiro Kitajima, purpleyuko, Coffe House Jittoku 
Front cover folding screens, "Scenes In and Around the Capital," (C) The Metropolitan Museum of Art.
Image source: Art Resource, New York 


◆本CD解説(馬頭將噐)より◆ 

「この歴史的なジョン・レンボーンの演奏記録は、京都にあるCoffee House 拾徳(じっとく)で1978年5月30日に催された一晩だけのパーフォマンスです。主催は本作の録音エンジニアでもある藤井暁。」

「今回のジョンのライブテープは、ドイツのウーヘルのレコーダーで録音され、ライブ後に藤井から友人の北島利容に直接譲られたもので、ずっと彼の京都の自宅で保管してあったものを今回提供して頂きました。」


◆本CDについて◆ 

見開き紙ジャケット仕様。中ジャケに馬頭將噐(Masaki Batoh)による解説(日本語/英語)。馬頭さんといえば本CDのリリース元Drag Cityからも多数のリリースがあるサイケデリックロック/アシッドフォークバンドGhost/The Silenceの人ですが、それはそれとして、本作はレンボーンのライヴ録音の中でも出色の出来です。
盲目のブルースマン、ゲイリー・デイヴィス作の#1はファースト『John Renbourn』(1965年)収録曲で、ドノヴァンも『Fairytale』(1965年)でカバーしていました。早口言葉を交えた歌詞で場を和ませた後で、バート・ヤンシュやポール・サイモンの演奏でお馴染みの、60年代フォーク・リヴァイヴァル時のフォーク・ギタリストがこぞってコピーしたというデイヴィ・グレアム作のインスト「アンジー」でギターの腕前を見せつける流れです。
続くフォーク・ブルースの#3は女性ブルース・シンガーのバーバラ・デインの歌唱によるもので(ペンタングルの「Way Behind the Sun」もバーバラの歌唱が元になっていると思います)、セカンド『Another Monday』(1966年)に収録されていました。
ミシシッピ・フレッド・マクダウエル作のブルース#5は1971年のアルバム『Faro Annie』より、イギリスからアメリカ(アパラチア)まで広く伝わるバラッド#6も同じアルバムからで、ペンタングルも『Basket of Light』(1969年)で演奏していましたが、ペンタングル・ヴァージョンとは(その他のヴァージョンとも)メロディも歌詞もだいぶ違っています。
トラフィックで有名なバラッド#8、16世紀ドイツのリュート奏者ハンス・ノイジードラー作の#13はジョン・レンボーン・グループ『A Maid in Bedlam』(1977年)より。イギリス・ルネッサンスの作曲家ウィリアム・バードのヴァージナル曲#10、ジャズ/フュージョンのチャールス・ロイド作のブルース曲#11はサード『Sir John Alot of Merrie Englandes Musyk Thyng and ye Grene Knyghte』(1968年)より。#12の1曲目(17~18世紀のアイルランドのハープ奏者オ・カロラン作)は1976年の『The Hermit』より、2曲目(アイリッシュ・ジグ)と3曲目(中世舞曲、ボドリアン図書館所蔵写本MS Douce 139より)は本作の翌年(1979年)リリースの『The Black Balloon』より。
スコットランド民謡の#4(ペンタングル『Sweet Child』でジャッキー・マクシーがアカペラで歌っていました)、イングランド南部民謡の#7、アメリカ北西部のフィドル・チューン#9、#12の3曲目(前述)は本作の翌年(1979年)の再来日時にスタジオ録音された『So Early In The Spring』でも取り上げられています。
というわけで、これまでの全てのソロ作及びリーダー作(そして未リリース作)から満遍なく選曲されているのも心憎いですが、何よりレンボーン本人がリラックスして鼻歌まじりで超絶技巧インスト曲を演奏したり、聴衆もレンボーンの英語のギャグに笑ったり突っ込んだりしています。#12の「English Dance」では手拍子&大歓声。最後の「伴奏と旋律が違うキーで書かれている」という「Jew's Dance」では演奏がだんだんクレイジーになっていく演出で聴衆を沸かせています。音もこの手の蔵出し音源としてはわるくないです。ジャケがメトロポリタン美術館蔵「洛中洛外図屏風」なのも気が利いています。

★★★★★ 


Banks of the Sweet Primroses


Gypsy Dance/Jew's Dance