幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

ジョン・レンボーン  『ザ・レディ・アンド・ザ・ユニコーン』

ジョン・レンボーン 
『ザ・レディ・アンド・ザ・ユニコーン』 
John Renbourn 
The Lady and the Unicorn 


LP: 日本コロムビア株式会社 
シリーズ:トランスアトランティック・アンソロジー――バート・ヤンシュ&ジョン・レンボーン・コレクション 
YZ-157-LA (1982年) 
¥2,000 
Made in Japan 

 


帯文:

「ジョン・レンボーンほど好奇心の強いギタリストはいない。尊敬する鬼才デイヴィー・グレアムの影響だろう。そのジョンがフォーク/カントリー/ブルースのレパートリーを逸脱し、至芸とも言うべきルネッサンス音楽に挑戦したアルバムだ。1970年の作品で、4作目のソロである。敢えて16~17世紀ごろの音楽にスポットを当てたのは、そのメロディの美しさに魅せられたからだ、とジョンは語っている。複雑な編曲や工夫を加えず、素朴に作品の主題旋律を奏で、フォーク・ギター・ファンのためのルネッサンス音楽への入門盤の役割も果している。なかには「マイ・ジョニー・ワズ・ア・シューメイカー」「スカボロー・フェア」などのイギリスを代表する伝統民謡も含まれ、興味は尽きない。フェアポート・コンヴェンションのフィドル奏者デイヴ・スウォーブリックほか才芸に富んだミュージシャン達がバックに参加し、アンサンブルを楽しむのにも格好のアルバムだ。」


Side One 

1a. TROTTO  0:40 
トロット 
1b. SALTARRELLO  1:53 
サルタレーロ 

2a. LAMENTO di TRISTAN  1:58 
トリスタンの嘆き 
2b. LA ROTTA  0:55 
ラ・ロッタ 

3a. VERI FLORIS  0:44 
ヴェリ・フロリース 
3b. TRIPLE BALLADE  2:00 
トリプル・バラッド 

4a. BRANSLE GAY  1:13 
ブランゼル・ゲイ 
4b. BRANSLE de BOURGOUGNE  1:34 
ブルゴーニュのブランゼル 

5a. ALMAN  1:25 
アルマン 
5b. MELANCHOLY GALLIARD  2:47 
メランコリー・ガリヤード 

6. SARABANDE  2:41 
サラバンド 


Side Two 

1. THE LADY AND THE UNICORN  3:21 
ザ・レディ・アンド・ザ・ユニコーン 

2a. MY JOHNNY WAS A SHOEMAKER  4:16 
くつ屋のジョニー 
2b. WESTRON WYNDE  1:25 
ウェストロン・ウィンディ 
2c. SCARBOROUGH FAIR  7:22 
スカボロー・フェア 


ギター/ジョン・レンボーン 


John Renbourn - guitars, sitar 
Terry Cox - hand-drums, glockenspiel 
Don Harper - viola 
Len Nicholson - concertina 
Tony Roberts, Ray Warleigh - flutes 
Dave Swarbrick - violin 

Produced by Bill Leader 
Recorded at Livingstone Studios - Barnet 


「This record contains a variety of instrumental pieces including medieval music, folk tunes and early classical music. The oldest are probably the English dance tune, *Trotto* and the Italian, *Saltarello*, to which I have added drone accompaniment, tuning the guitar to D G D G C D. 

*Lament Di Tristan* and *La Rotta* are fourteenth century Italian pieces played originally on vielle. They too are without harmony but have the tune doubled either on sitar or glockenspiel. 

The three part conductus, *Veri Floris*, composed during the Notre Dame period, is a setting for the words, "Under the figure of the true flower which the pure root produced, the loving devotion of our clergy has made a mystical flower constructing an allegrical meaning beyond ordinary usage from the nature of a flower" 

This is followed by the triple ballade *Sanscuer-Amordolens-Dameparvous* of Guillaume de Machaut. 

*Bransle Gay* and *Bransle De Bourgogne* are from the danceries of Claude Gervaise, composed in about 1550. The first is played on solo guitar but the second uses flute, fiddle and has a second guitar line added. 

The anonymous *Alman* is taken from the Fitzwillilam virginal book and is followed by *Melancholy Galliard* by the English lutanist John Dowland. 

Side One concludes with the *Sarabande* in B Minor by J. S. Bach. 

Side Two consists of two short guitar pieces, *The Lady and The Unicorn* and an arrangement of the sixteenth century song *Westron Wynde*, and two folk songs *My Johnny Was A Shoemaker* and *Scarborough Fair*. Both arrangements have flute, viola and guitar. 

I have not presumed to reproduce early music as it would originally have been played, but hope nevertheless that the qualities of the music can be enjoyed, though interpreted as they are on more recent instruments. 

John Renbourn」


◆黒田史朗による解説より◆ 

「ブリティッシュ・フォーク/ブルース界の実力派ギタリスト、ジョン・レンボーンが1970年に発表した、これは彼にとって4枚目のソロ・アルバムである。」
「このアルバムにはレンボーンがフォークとかブルースとかカテゴリーに縛られず、ただひたすらに‟ギター音楽”をやりたい、と云う彼の主張がにじみでている。」
「あえて16~17世紀ごろの音楽にスポットをあて、このアルバムを制作したのか、そうした真意について、ジョン・レンボ0ンはインタビューに答えて、こう発言している。(中略)これは「ミュージック・ナウ」(1971年1月2日号)に掲載されたものだ。
 問「アルバム‟ザ・レディ・アンド・ザ・ユニコーン”について?」
 答「グループ(ザ・ペンタングル)と別にレコードを作るチャンスがあったので、試みてみたかったことを試みてみたんだ。全曲ほとんど原曲のままで演奏したんだ。まったく細工なんかやらなかったよ。どれも中世のメロディで、オリジナルなメロディを利用した曲で作ることも出来たし、僕なりの解釈を加え自分のものにすることも出来たけれど、結局、オリジナルなものには勝てないんだと判っていたので、こうしたんだ。これ以上に良いメロディなんて作れなかったよ。だから、ただこういうメロディが好きだから、それをそのまま録音したんだ。すごく短い曲もあるけれど、それでも素晴しい。中世の曲とフォーク曲のレコードになっちゃった。どの曲もそれぞれ素晴しいし、僕らはそれをそのままレコーディングしたんだ。自分で自分のレコードを聞くって云うことはめったにない。自分でも‟うるさいナ! とめちゃえよ!”と云っちゃうんだけど、このレコードは2・3回も聞いたけど、気に入っちゃってるんだ。」
 内気で無口なことで有名なジョン・レンボーンがこうも云っているのだから、よほど満足したアルバムなのであろう。」


◆本LPについて◆ 

E式シングルジャケット。裏ジャケにトラックリスト&クレジット、John Renbournによるライナーノーツ、写真図版(モノクロ)1点。インサート(2頁)にトラックリスト、黒田史朗による解説「中世音楽に挑戦する名手ジョン・レンボーン」(「第1回日本発売盤に際し掲載された解説書を転載しました。」)、「トランスアトランティック・アンソロジー」(LPリスト/ジャケット図版(モノクロ)10点)。
第1回日本発売盤は日本ビクターSWG-7562『レディ・アンド・ユニコーン/ジョン・レンバーン』(1972年)。

ゲストはペンタングルのテリー・コックス(Side One #2 ハンド・ドラム、グロッケン)、レイ・ウォーレイ(Side One #3、4 フルート)、デイヴ・スウォーブリック(Side One #3、4 ヴァイオリン)、リー・ニコルソン(Side One #5 コンサーティーナ)、ドン・ハーパー(Side Two #2 ヴィオラ)、後にジョン・レンボーン・グループのメンバーになるトニー・ロバーツ(Side Two #2 フルート)で、フォーク系のみならず様々なジャンルで活動するセッション・ミュージシャン達ですが、ロバーツ、ウォーレイ、ハーパーは本来はジャズ・ミュージシャンなので、レンボーンは「ほとんど原曲のまま」といっていますが、自家薬籠中のフォーク曲(Side 2 #2)ではインプロヴィゼーションを交えてテーマ&ヴァリエーションというか、ジャズ的な展開をみせています。

タイトル曲(Side Two #1)のみレンボーン作曲。バッハのサラバンド(Side One #6)はセミアコにエフェクト(フェイズシフター)をかけて演奏しています。

「一角獣と貴婦人」のタペストリーをあしらったジャケットもよいです。

★★★★★ 


Sarabande