幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

あがた森魚  『日本少年(ヂパング・ボーイ)』

あがた森魚 
『日本少年(ヂパング・ボーイ)』 

Mario Agata 
Zipangu Boy 


CD: Tokuma Japan Communications Co. Ltd  
シリーズ: 徳間ジャパン名盤コレクション 
TKCA-72464 (2002年)[2枚組]  
¥3,200(定価)(税抜価格¥3,048) 

「24ビット高音質サウンドによるデジタル・リマスタリング
「本CDはオリジナルLPのジャケット・帯・歌詞カード等を可能な限り忠実に再現したものです。」

 

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Disc 1 

1.ヂパング・ボーイ (三分四十三秒) 
詞・曲 あがた森魚
(リ)細野晴臣 (リ)茂木素子 (リ)三浦光紀 

2.夢みるスクールデイ(一) (二分十秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲 ムーンライダース 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木博文 (ハ)椎名和夫 (ヘ)岡田徹 (ト)矢野顕子 (チ)武川雅寛 (ヨ)鈴木慶一 (ネ)土井正二郎 

3.夢みるスクールデイ(二) (三分十八秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲 鈴木慶一
(ロ)鈴木博文 (ヘ)岡田徹 (ト)矢野顕子 (カ)鈴木慶一 (ネ)土井正二郎 

4.薄荷糖の夏 (四分八秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲 ハリイ・ホウソン 
(イ)島村英司 (ロ)平野融 (ハ)鈴木茂 (ホ)駒沢宏季 (ヘ)矢野顕子 (ヲ)ハリイ・ホウソン (ヤ)松田幸一 ◎ヘルプ・ミー・ロン・ロン・コーラス 矢野顕子大貫妙子山下達郎 

5.航海・Ⅰ (一分二十二秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲・指揮 矢野誠 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木博文 (ハ)椎名和夫 (ヘ)岡田徹 (ト)矢野顕子 (チ)武川雅寛 (ヨ)鈴木慶一 (ネ)土井正二郎 

6.リラのホテル (三分二十六秒) 
語り あがた森魚  詞・曲・編曲 かしぶち哲郎 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木博文 (ヘ)かしぶち哲郎) (チ)武川雅寛 (チ)椎名和夫 (ル)(マ)矢野誠 

7.航海・Ⅱ (一分十七秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲・指揮 矢野誠 
(イ)かしぶち哲郎) (ロ)鈴木博文 (ハ)椎名和夫 (ヘ)岡田徹 (ト)矢野顕子 (チ)武川雅寛 (ヨ)鈴木慶一 (ネ)土井正二郎 

8.函館ハーバー猫町ホーボー (一分三十秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲 鈴木慶一 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)平野融 (ハ)椎名和夫 (チ)武川雅寛 (カ)岡田徹 

9.函館ハーバーセンチメント (四分十一秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲 鈴木慶一 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)平野融 (ハ)椎名和夫 (チ)武川雅寛 (カ)岡田徹 

10.航海・Ⅲ (五十秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲・指揮 矢野誠 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木博文 (ハ)椎名和夫 (ヘ)岡田徹 (ト)矢野顕子 (チ)武川雅寛 (ヨ)鈴木慶一 (ネ)土井正二郎 

11.つめたく冷して (二分三十八秒) 
詞 あがた森魚  編曲 ハリイ・ホウソン 
(イ)島村英司 (ロ)平野融 (ハ)鈴木茂 (ホ)駒沢宏季 (ヘ)矢野顕子 (ヲ)細野晴臣 ◎香港赤色(ホンコンレッド)ジョダネアーズ 矢野顕子大貫妙子山下達郎 

12.山田長政 (三分四十一秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲 細野晴臣 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木博文 (ハ)椎名和夫 (ヘ)岡田徹 (チ)武川雅寛 ドラ・キー坊 

13.航海・Ⅳ (一分二十秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲・指揮 矢野誠 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木博文 (ハ)椎名和夫 (ヘ)岡田徹 (ト)矢野顕子 (チ)武川雅寛 (ヨ)鈴木慶一 (ネ)土井正二郎 

14.ウェディングソング (三分十四秒) 
詞 岡田徹鈴木慶一  曲 岡田徹 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木博文 (ハ)徳武弘文 (ト)岡田徹 (ツ)武川雅寛 (ネ)土井正二郎 (ヲ)かしぶち哲郎 ウエイトレス・石谷貴美子 ◎コーラス 武川雅寛椎名和夫矢野誠 アンド 火の玉ボーイズ アンド ガールズ

15.ゴーヂャス・ナイト (三分十八秒) 
詞 あがた森魚  曲・編曲 本多信介 
(イ)(レ)かしぶち哲郎 (ロ)六川正彦 (ハ)本多信介 (ヘ)矢野誠 (チ)武川雅寛 酔漢(ドランカー) 矢野誠 


Disc 2 

1.ヴヰクトリアルの夜 (三分十八秒) 
編曲 ハリイ・ホウソン  詞 あがた森魚 曲 細野晴臣 
(イ)島村英司 (ロ)平野融 (ハ)鈴木茂 (ニ)細野晴臣 (ホ)駒沢宏季 (ヘ)矢野顕子 (ヲ)細野晴臣 (ル)(ヨ)矢野誠 

2.沙漠典(さぼてん)ボリボリ (三分二十四秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲 武川ボリボリ雅寛 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木博文 (ハ)(チ)椎名和夫 (チ)(ネ)武川雅寛 (ヌ)鈴木慶一 (ム)羽島幸次 (ム)大竹守 

3.溺れろ伊達野郎(だんでい) (四分十二秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲 サーフムーンライダース 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)平野融 (ハ)椎名和夫 (ヘ)岡田徹 ◎コーラス 鈴木慶一南佳孝武川雅寛 

4.航海・Ⅴ (一分十一秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲・指揮 矢野誠 
(イ)野口昭彦 (ロ)鈴木博文 (ヘ)矢野顕子 (ヨ)岡田徹 (ネ)土井正二郎 (ネ)本多信介 (ネ)かしぶち哲郎 

5.ラ・クカラーチャ (二分二十七秒) 
詞 あがた森魚  曲 墨国(メキシコ)民謡  編曲 武川ボリボリ雅寛  指揮 矢野誠 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木博文 (ニ)椎名和夫 (ム)羽島幸次 (ム)大竹守 
◎ブルーハ聖歌隊 ハリイ・ホウソン夫妻・南佳孝鈴木慶一矢野顕子石谷貴美子・長門芳郎武川雅寛岡田徹 聖歌隊指揮・矢野誠 

6.航海・Ⅵ (四十四秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲・指揮 矢野誠 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木博文 (ハ)椎名和夫 (ヘ)岡田徹 (ト)矢野顕子 (チ)武川雅寛 (ヨ)鈴木慶一 (ネ)土井正二郎 

7.洋蔵爺のこと (三分三十秒) 
作文・曲 あがた森魚  編曲 ラヂヲ・ホウソン 
(イ)島村英司 (ロ)平野融 (ハ)鈴木茂 (ニ)西岡恭蔵 (ホ)駒沢宏季 (ヘ)矢野顕子 (チ)武川雅寛 

8.最后の航海(七回目の航海) (六分四十秒)
詞・曲 あがた森魚  編曲・指揮 矢野誠 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木慶一 (ハ)椎名和夫 (ヘ)岡田徹 (ト)矢野顕子 (チ)武川雅寛 (ヨ)鈴木慶一 (ネ)土井正二郎 

9.ノオチラス艦長ネモ (五分五十四秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲 キャプテン・ホウソン 
(イ)島村英司 (ロ)平野融 (ハ)鈴木茂 (ホ)駒沢宏季 (ヘ)矢野顕子 

10.彩光∞無限 (六分十秒) 
詞・曲 あがた森魚  編曲 細野晴臣 

11.夢みるスクールデイ(三) (一分三十七秒)  
詞・曲 あがた森魚 編曲 ムーンライダース 
(イ)かしぶち哲郎 (ロ)鈴木博文 (ハ)椎名和夫 (ヘ)岡田徹 (ト)矢野顕子 (チ)武川雅寛 (ヨ)鈴木慶一 (ネ)土井正二郎 

12.日本少年 (一分三十秒) 
詞・曲 あがた森魚 
(リ)細野晴臣 (リ)茂木素子 (リ)三浦光紀 ◎歌 あがた森魚細野晴臣 

13.別れの軍楽隊(蛍の光) (一分三十六秒) 
演奏 悲しい心の苦楽部楽団(クラブバンド) 
横濱メリケン波止場にて録音 


◎凡例 
(イ)太鼓=ドラムス (ロ)電氣四弦=エレクトリックベース (ハ)電氣六弦=エレクトリックギター (ニ)六弦=アコースティックギター (ホ)滑走洋線=スチールギター (ヘ)洋琴=ピアノ (ト)電氣洋琴=エレクトリックピアノ (チ)提琴=フィドル (リ)風琴=オルガン (ヌ)電子風琴=エレクトリックオルガン (ル)手風琴=アコーディオン (ヲ)原子鍵盤=シンセサイザー (ワ)電子弦盤=クラビネット (カ)電子洋弦=チェレスタ (ヨ)電子琴盤=ソリーナ (タ)木琴=シロホン (レ)振動金琴=ヴィブラホーン (ソ)吹琴=ハーモニカ (ツ)浮楽々=ウクレレ (ネ)打楽器=パーカション (ナ)圓金盤=シンバル (ラ)空飛圓金盤=ユーホーシンバル (ム)唬喇叭=トランペット (ウ)金尺叭=フルート (エ)苦楽喇叭=クラリネット (ノ)玻璃琴=グラスハープ (オ)打琴=ハンマリングハープ (ク)六弦蛇皮線=ギターじゃびせん (ヤ)電子線盤=アリチャックハープ (マ)電子琴喇叭盤=クラリネットソリーナ 


制作(プロデュース) 細野晴臣あがた森魚 
副制作(コ・プロデュース) 鈴木慶一矢野誠 
監督(ディレクター) 三浦光紀 
副監督(アシスタント・ディレクター) 天野近 
録音技術主任(レコーディングエンジニア) 小林俊夫 
録音技術助手 三橋守 
音響効果(エフェクト) 本間明、天野近、加門清邦、藤田博一 
録音盤技術主任(カッティングエンジニア) カール・トッカ 
編曲(アレンジ) ムーンライダース矢野誠鈴木慶一武川雅寛細野晴臣 
音楽(インペグ)士依頼事務 石谷・山田音楽事務所 
給仕(ウェイター) 長門芳郎・上村律夫 
表紙構想(ジャケットイメージコンセプト) あがた森魚 
表紙(イラスト)繪 鈴木翁二 
写真(フォト) 井出情児・茂木友輔・桑本正士(協力 ヤング・ギター) 
表紙(ジャケット)・題字意匠(ロゴデザイン) 茂木友輔・酒井正俊 
御協力感謝(スペシアルサンクス)の人々 ムーンライダース・ティンパンアレイ・矢野顕子・茂木素子・Many Many TROPICAL WINDY Bro. 


Staff for Reissue 
制作: 島野典和、鍋島謙介、原一翔、北島浩明、小田学徳間ジャパンコミュニケーションズ) 
監修: 高護(ウルトラ・ヴァイヴ) 
監修アシスタント: 藤田雅啓、桑原綾子、川手知子(ウルトラ・ヴァイヴ) 
アートワーク: 永易建治(ホットファズ・デザイナーズ) 

 

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「日本少年 附録 航海日誌」

 

◆本CDについて◆ 

LP(2枚組)は1976年にフィリップスレコードよりリリースされました。

見開き紙ジャケット(A式)仕様。投げ込み(十字折り)にトラックリスト&クレジット、「マスタリングについて」、CDライナーノーツ(辻凡人/湯浅学)、「徳間ジャパン名盤コレクション全35タイトル」(CDリスト)。LP歌詞カード復刻(十字折り4頁)&「附録 航海日誌」復刻(8頁)。

中耳炎の少年が病床で過ごす夏休みの空想(妄想)航海日誌。しかしその後の人生といえども熱に浮かされてみている夢でないとは断言できないです。

夢と希望のジパング・ボーイ、とはいえ、「病的な性格の為に」「人に嫌らわれて居た」「洋蔵爺(ようぞうじい)」や、やはり病的な性格の人間嫌いのネモ船長が登場する本作は、われわれの内部にひろがる海=心のダークサイドへの目配りも欠けていないです。

本作その他のあがた森魚CDをきいていて、あがた氏同様、稲垣足穂の愛読者であった澁澤龍彦の最後の小説『高丘親王航海記』(1987年)や幼年期回想エッセイ『狐のだんぶくろ』(1983年)を連想しました。

チンドン屋の奏楽は、必ずしも陽気でにぎにぎしいとはかぎらない。(中略)へんに物悲しいところもあって、ハメルンの笛吹きのように、子どもたちを否応なく惹きつけるのである。私はチンドン屋のあとについて、街をどこまでも歩いていった記憶がある。もう帰らなければ、と何度も思いながら、ついつい見知らぬ街まで来てしまったときの心細さをよくおぼえている。」
「私は前に、チンドン屋クラリネットに物悲しい情緒を感じると述べたが、あらためて考えてみると、単に物悲しいというだけではまだ足りないような気がする。なにか不気味な、白昼の狂気とでもいった情緒に私たちを誘いこむ、面妖な気分を伝播していたように思われてならないのだ。」
澁澤龍彦『狐のだんぶくろ』所収「チンドン屋のこと」より) 

「かように俗塵をきらい幽居を好んだためか、親王の異名の一つに頭陀親王という尊称があるほどだ。頭陀とは、身を雲水にまかせた質素な托鉢行脚の生活をいう。異名といえば、これほど異名のあるひともめずらしく、後世一般には法名により真如親王あるいは真如法親王と称するが、本名は高岳親王であり、そのほかに禅師のみことか、みこの禅師とか、入道無品親王とか、入唐三のみことか、池辺の三の君とか、さらにまた、うずくまり太子などという異様な呼び名さえある。うずくまりとは、一見、いかにもひっこみ思案で優柔不断な性格を暗示しているようで、おもしろい。そういう性格のひとだったからこそ、かえって逆に古代日本最大のエクゾティシズムを発揮することができたのではなかったか。」
「子どものころから夢を見るのが得意だったし、楽しい夢ばかり見てきたとつねづね自負している自分である。楽しい夢は思い出してこそ、ますます楽しくなる。夢とは思い出そのものだといってもよいくらいなので、その思い出すという機能を失うならば、夢は死んだも同然ではあるまいか。」
澁澤龍彦『高丘親王航海記』より)

 

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「附録 航海日誌」表紙のあがた氏近影も澁澤龍彦っぽいです。

★★★★★