『Stravinsky: Les Noces (The 1917 and 1923 versions)』
Péter Eötvös
ストラヴィンスキー
バレエ・カンタータ《結婚》
指揮:ペーテル・エートヴェーシュ
CD: Hungaroton
HCD 12989 (1988)
Manufactured by Sanyo in Japan
発売元:株式会社アルファエンタープライズ
HCD247 (1989年)
Igor Stravinsky
Les Noces / The Wedding
ストラヴィンスキー(1882~1971)
バレエ・カンタータ《結婚》
1. The 1923 version
Part I 第1部(1923年版)
1. Scene 1: The Bride's chamber 5:07
第1場~花嫁の家で
2. Scene 2: At the Bridegroom's 5:33
第2場~花婿の家
3. Scene 3: The Bride's departure 2:54
第3場~花嫁の出発
Part II 第2部(1923年版)
4. Scene 4: The wedding feast 9:26
婚礼の祝宴
2. The 1917 version
Part I 第1部(1917年版)
5. Scene 1: The Bride's chamber 5:11
第1場~花嫁の家で
6. Scene 2: At the Bridegroom's 5:51
第2場~花婿の家
7. Scene 3: The Bride's departure 2:54
第3場~花嫁の出発
Part II 第2部(1917年版)
8. Scene 4: The wedding feast 9:28
婚礼の祝宴
Alla Ablaberdyeva - soprano
アラ・アブラベルディノワ(S)
Ludmilla Ivanova - mezzo-soprano
ルドミラ・イワーノワ(M-S)
Alexey Martinov - tenor
アレクセイ・マルティノフ(T)
Anatoly Safiulin - bass
アナトリ・サフューリン(B)
Slovak Philharmonic Chorus
スロヴァキア・フィルハーモニー合唱団
Adrienne Hauser, Zoltán Kocsis, Pi-hsien Chen, Imre Rohmann - pianos (1)
エイドリアン・ハウザー、ゾルターン・コチシュ、ピー・シュン・チェン、イムレ・ローマン(ピアノ)
Amadinda Percussion Ensemble (1)
アマディンダ・パーカッション・グループ
Aurél Holló, Benedek Tóth - percussion (1)
アウレール・ホロー、ベネデク・トース(パーカッション)
Savaria Symphony Orchestra (2)
サヴァリア管弦楽団
Conducted by Péter Eötvös
指揮:ペーテル・エートヴェーシュ
Reording Producer: András Wilheim
Sound Engineer: Ferenc Pécsi
Cover: A 19th century Russian painting
Photo: Kalman Garas
Design: Miklos Szuts
in co-operation with International Bartók FEstival, Szombathely
Sung in Russian
Total time: 46:33
◆本CD邦語解説(竹家晋平)より◆
「作曲者の回想によれば合唱曲としての着想は1912年に遡るといわれる。「春の祭典」の初演後より本格的な準備にとりかかり、まず台本作成のためにロシアの民族詩集を読みあさったが、適当なものが見つからず、遂には1914年の夏、キエフへ取材旅行まで行って、ようやくピエール・キリエフスキーの編集した10巻からなる民族詩集を入手したのだが、スイスのクラーレンスへ戻ったのは、第1次大戦勃発の僅か数日前であった。このキリエフスキー編の民族詩集にあるおびただしい婚礼歌、及び更に古い時代のものを集めたアファナシエフ編の詩集も参考にして、ストラヴィンスキー自ら台本を書き、直ちにその秋から作曲にとりかかったのであるが、様々な事情で中断され、ようやく一応の完成を見たのは1917年である。(中略)しかしながらストラヴィンスキーはこの曲の楽器編成について満足な結論を出しかねていた。当初の計画は「春の祭典」並みの大編成であったが、これはすぐ放棄され、変わってグースラ、バラライカ、ギターなどの民族楽器を主体としたものや、今回のディスクで初めて耳にすることが出来た1917年のチェンバー・オーケストラ版、更には2つのツィンバロンと自動ピアノ、ハーモニウム、打楽器という実験的な版など、様々な紆余曲折を経て、ようやく1923年初演の4台のピアノと打楽器による決定稿に落ち着いたのである。」
「さてこれは、1923年の現行版に併せて、1917年のチェンバー・オーケストラ版が世界初録音された、まさに画期的なディスクである。」
「このディスクのもう1つの特色は、オリジナルのロシア語で演奏していることである。」
「「結婚」は、ある意味では第1期のストラヴィンスキーの特色が最もよく現れた作品である。ロシア民謡の素材は第4場に使っただけで、あとの主題は全て創作であるが、全体としてはディアギレフの言う様に極めてロシア的であり、土俗的なヴァイタリティに満ち満ちている。殊に大きな特徴は強烈にして執拗きわまるリズム・オスティナートであり、合唱の執拗な単音反復と相まって、一種独特の呪文的な効果を上げているのである。
冒頭にストラヴィンスキーが余人に与えた影響について記したが、特にカール・オルフについて言えば、この「結婚」が直接もたらした影響は計り知れぬものがある。オルフと言えば、まず何と言っても「カルミナ・ブラーナ」が代表作だが、この曲には強烈なリズム・オスティナートと共に、「結婚」のある部分と殆んど類似したフレーズが出て来る。しかしこれはまだ序の口であって、周知の様に、「カルミナ・ブラーナ」は「トリオンフィ3部作」の第1部をなすものだが、第2部「カトゥーリ・カルミナ」の楽器編成は4台のピアノと打楽器という「結婚」と同じものであり、更に第3部「アフロディーテの勝利」の題材は、婚礼を前にした花嫁、花婿~行列の出発~婚礼の祝宴と、「結婚」の内容と全く同じと言ってもいいもので、つまりオルフは「結婚」を演奏形態と題材に分け、夫々を別の作品に借用したのである。この事実が、何よりも雄弁に「結婚」がオルフに与えた影響の大きさを物語っている。」
◆本CDについて◆
輸入盤に邦文「別冊解説書」(投げ込み)付。
2枚組用ジュエルケース(24mm厚)にCD1枚とやや厚みのあるブックレットが入っています。原盤ブックレット(全52頁)にトラックリスト&クレジット、解説(Amdrás Wilheim)、歌詞について(Eric Walter White)――以上は英・仏・独文――、歌詞(ロシア語原文と英・仏・独訳)、写真図版(モノクロ)2点。ブックレット裏表紙に「Compact Disc Digital Audio System」について(独・英・仏・伊文)。投げ込みライナー(十字折り)にトラックリスト&クレジット(邦文)、竹家晋平による解説、歌詞邦訳(木村博江/「本訳はD. ミラー・クレイグによる英語版によったものです。」)。
たいへんダイナミックでパーカッシヴな演奏です。場合によってはちょっとうるさいです。二つのヴァージョンをききくらべることによって、1923年版「結婚」の特異性が再認識されます。何事も一朝一夕には成就しない、結婚もあせってはならない、そういうことだと思います。
★★★★★
The 1917 version
◆参考◆
Peter Eötvös: Secret Kiss (2018)