幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『伊福部昭の芸術 2  響 ― 伊福部昭 交響楽の世界』

伊福部昭の芸術 2 
響 ― 伊福部昭 交響楽の世界』 

The Artistry of Akira Ifukube 2 
KYO - Akira Ifukube Orchestral Works 


CD: Firebird/King Record Co., Ltd. 
KICC 176 (1995年) 
¥2,800(税込)(税抜価格¥2,718) 
Made in Japan 

 

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シンフォニア・タプカーラ(1954/79) 
SINFONIA TAPKAARA 
(Ed. JFC) 
1.第1楽章:レント・モルトアレグロ 12:32 
1st Mov.: Lento molto - Allegro 
2.第2楽章:アダージョ 9:42 
2nd Mov.: Adagio 
3.第3楽章:ヴィヴァーチェ 8:01 
3rd Mov.: Vivace 

管弦楽のための「日本組曲」(1933/91) 
JAPANESE SUITE 
(Ed. Zen=On) 
4.第1曲:盆踊 アレグロ・エネルジーコ 5:01 
I. BON-ODORI, Nocturnal dance of the Bon-Festival 
5.第2曲:七夕 レント・トランクイッロ 5:27 
II. TANABATA, Fête of Vega 
6.第3曲:演伶(ながし) クアジ・ブルレスコ 5:46 
III. NAGASHI, Profane minstrel 
7.第4曲:佞武多(ねぶた) マルチアーレ・ペザンテ 6:31 
IV. NEBUTA, Festal ballad 


広上淳一指揮/日本フィルハーモニー交響楽団 
JYUNICHI HRIOKAMI conducting the JAPAN PHILHARMONIC SYMPHONY ORCHESTRA 


録音:1995年8月22日~24日、29日~31日、9月1日 
東京、セシオン杉並 
Recorded: 22-24, 29-31 August, 1 September, 1995 
SESSION SUGINAMI HALL, TOKYO 

監修:伊福部昭 
Supervisor: AKIRA IFUKUBE 
プロデューサー:福田稔 
Producer: MINORU FUKUDA 
ディレクター:松下久昭 
Director: HISAAKI MATSUSHITA 
エンジニア:高浪初郎 
Engineer: HATSURO TAKANAMI 
アシスタント・エンジニア:亀龍恒太(SCI)  
Assistant Engineer: KOTA KIRYU (SCI) 
アート・ディレクション:平石誠 
Art Direction: MAKOTO HIRAISHI 
カヴァー・デザイン:美登英利 
Cover Design: HIDETOSHI MITO 
フォトグラフ:斉藤忠徳 
Photograph: TADANORI SAITO 
プロモーション:森川進 
Promotion: SUSUMU MORIKAWA 


◆本CD「自作を語る」(伊福部昭)より◆ 

「『シンフォニア・タプカーラ』について」
「私は、ロシアの作曲家、チェレプニンから、1936年に、日本で、短期間ですけれども様々な教えを受けました。そのとき、彼は私にこう言いました。「バラキレフだって、シンフォニーを1曲作るのに30年かかった。おまえも、次はシンフォニーを書きたいと思うだろうが、そのテクニックではまだ無理である。もっと勉強してから挑戦するように……。」
 それから、一体、自分はいつになったらシンフォニーを書けるかと、ずっと自問自答してきました。1943年の『交響譚詩』のときは、第1楽章をソナタ形式にしたし、これをシンフォニーと銘打っても……という気持ちもありましたが、結局そうせず、戦後改めて挑戦して、ついに『シンフォニア・タプカーラ』を書きました。これは3楽章仕立てで、何となく交響曲らしいとはいえ、第1楽章はきちんとソナタ形式のかたちを取っていないし、『シンフォニア…』と付けるかどうか、実は随分悩んだのです。最終的には、日本人にとっての、ありうべきシンフォニーとして書いてみたということで、多少破格でも、『シンフォニア…』としました。
 あと、この曲の第3楽章のテーマは、記譜のうえでは、はっきりそうはしなかったのですが、実のところ、4拍目にアクセントが来て欲しいのです。アイヌのタプカーラなる踊りは、最後の拍が、強いというか、長いのです。第3楽章は、その気分の再現を狙っているのでして、今回の録音から、そういうタプカーラのイメージが、少しでも伝わってくれればと思います。」

「『日本組曲』について」
「1933年のことですが、ジョージ・コープランドというピアニストの『スペイン音楽集』なるアルバムが、ビクターからSP3枚組で発売されたのです。このレコードにつき、日本の音楽雑誌には酷評ばかり出たので、三浦淳史君と、どんなにひどいか聴いてみました。すると、これがとんでもない、素晴らしくいいのです。そこで、あちらに連名でファンレターを送りましたら、折り返し手紙が来ました。その内容は、「地球の裏側に住みながら、私の演奏を理解してくれるとは、君達はよほど音楽に詳しいに違いない。きっと作曲もするだろうから、曲を送れ」というのです。これを受けて三浦君は、私に相談なしに「ソナタ組曲を早速送る」と返事を書き、「これで君が書かなかったら国際信義の問題だ」と、私を脅しました。ならばというので作ったのが、私が19才のときの『ピアノ組曲』です。
 あちらで組曲というと、メヌエットやリゴードンなど、舞曲を並べるのが慣例な訳ですから、すると日本人が組曲を書く場合、盆踊りやねぶたやながしを並べればよいのだろうと思い、そういう構成にしました。
 この『ピアノ組曲』を、作曲以来58年たってオーケストレーションしたのが『日本組曲』なのです。」

 

◆本CD「曲目紹介」(片山素秀)より◆ 

シンフォニア・タプカーラ」
「タイトルのタプカーラとは、アイヌの踊りの一形式を指す。それは、「男性の立ち踊りで、両手を前にさしのべ、腰を落として、両足を踏み鳴らしながら舞う、儀式の際の重要な踊り」(伊福部昭)だと言う。」
「伊福部は、このタプカーラをはじめとする、アイヌの様々な神事、あるいは世俗的な芸能に、少年期を過ごした音更で、じかに接した。そして、彼らの生活と、その生活の場、茫漠たる平原地帯である音更周辺の風景への郷愁の情を、タプカーラの一語に集約し、このシンフォニーを書いた。」
「この曲の初稿は、映画音楽『ゴジラ』と同年の、1954年に完成し、『日本狂詩曲』の初演者、フェビアン・セヴィツキーの取り計らいにより、翌年、インディアナポリスで初演され、続いて東京でも上田仁の指揮で演奏された。が、作曲者は、出来に満足せず、70年代に改訂を加え、その作業は79年に完了した。この際の改訂では、いきなりAllegroで開始されていた第1楽章冒頭に、Lentoの序奏を付加するのにはじまり、各楽章の構成やオーケストレーションに、多々変更がなされている。」

「日本組曲
「この作品の原曲は、作曲者19才のときの事実上の処女作『ピアノ組曲』である。伊福部は、これを、当時スペインに在住していたアメリカ人ピアニスト、ジョージ・コープランドのために作曲した。」
「1991年になって、伊福部は、このピアノ曲集を、サントリー音楽財団の委嘱により、管弦楽にアレンジし、タイトルを『日本組曲』とした。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全28頁)にトラックリスト&クレジット、「メフィストと作曲家」(三浦淳史/『伊福部昭の宇宙』(音楽之友社)より転載)、「伊福部昭の肖像」(片山素秀)、「自作を語る」(伊福部昭/インタビュー:片山素秀)、「曲目紹介」(片山素秀)、「演奏者紹介」、英文解説、写真図版(モノクロ)6点。

伊福部昭の肖像」「自作を語る」は「1」~「4」共通です。

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