幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『伊福部昭の芸術 1  譚 ― 伊福部昭 初期管弦楽』 

伊福部昭の芸術 1 
譚 ― 伊福部昭 初期管弦楽』 

The Artistry of Akira Ifukube 1 
TAN - Akira Ifukube Orchestral Works 


CD: Firebird/King Record Co., Ltd. 
KICC 175 (1995年) 
¥2,800(税込)(税抜価格¥2,718) 
Made in Japan 

 

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日本狂詩曲(1935) 
JAPANESE RHAPSODY 
(Ed. Collection Alexandre Tcherepnine) 
1.Ⅰ. 夜曲 Nocturne 8:05 
2.Ⅱ. 祭 Fête 7:33 

土俗的三連画(1937) 
TRIPTYQUE ABORIGENE 
(Ed. Ongaku No Tomo) 
3.Ⅰ. 同郷の女達 Payses Tempo di JIMKUU 3:18 
4.Ⅱ. ティンベ TIMBE nom regional 2:23 
5.Ⅲ. パッカイ PAKKAI Chant d'AINO 5:33 

交響譚詩(1943) 
BALLATA SINFONICA 
(Ed. Ongaku No Tomo) 
6.第1譚詩:アレグロ・カプリッチオーゾ Prima Ballata: Allegro capriccioso 7:59 
7.第2譚詩:アンダンテ・ラプソディコ Seconda Ballata: Andante rapsodico 7:52 


広上淳一指揮/日本フィルハーモニー交響楽団 
JYUNICHI HRIOKAMI conducting the JAPAN PHILHARMONIC SYMPHONY ORCHESTRA 


録音:1995年8月22日―24日、29日―31日、9月1日 
東京、セシオン杉並 
Recorded: 22-24, 29-31 August, 1 September, 1995 
SESSION SUGINAMI HALL, TOKYO 

監修:伊福部昭 
Supervisor: AKIRA IFUKUBE 
プロデューサー:福田稔 
Producer: MINORU FUKUDA 
ディレクター:松下久昭 
Director: HISAAKI MATSUSHITA 
エンジニア:高浪初郎 
Engineer: HATSURO TAKANAMI 
アシスタント・エンジニア:亀龍恒太 
Assistant Engineer: KOTA KIRYU (SCI) 
アート・ディレクション:平石誠 
Art Direction: MAKOTO HIRAISHI 
カヴァー・デザイン:美登英利 
Cover Design: HIDETOSHI MITO 
フォトグラフ:斉藤忠徳 
Photograph: TADANORI SAITO 
プロモーション:森川進 
Promotion: SUSUMU MORIKAWA 


◆本CD解説「伊福部昭の肖像」(片山素秀)より◆ 

「伊福部の作風は、1930年代から90年代の今日まで一貫している。それは、民族的、土俗的、エスニック、フォークロリスティック…といった形容句で語れる種類のものだ。但し、民族的云々といっても、彼の場合は、日本、アイヌ、その他の北方諸民族、更にスラヴ等の要素が独特に結合した、きわめてハイブリッドな、一種ユーラシア的な広がりを有するものである。」


◆本CD「自作を語る」(伊福部昭)より◆ 

「『日本狂詩曲』について」
「私の最初の管弦楽曲で、21才のときの作品です。この曲が出来上がった頃、ちょうどチェレプニン賞の募集広告を見ました。この賞は、ロシアの作曲家、アレクサンドル・チェレプニンが、日本の作曲家から広く管弦楽曲を募り、パリで審査するものだったのですけれど、審査員の予定者の中にモーリス・ラヴェルの名が入っていたのです。実際は病気で審査を外れてしまったのですが……。とにかく、ラヴェルの名が魅力的で、彼に見て貰えるならと、応募しました。
 結果、この作品は第1位になり、ボストンで初演されたのですが、日本では、作曲以来45年間、コンサートで取り上げられはしませんでした。レコード録音はありましたけれども……。それだけ長い期間、演奏機会に恵まれなかったのは、やはり、私の音楽が、あまり日本のクラシック音楽界から好まれていなかったことの証明だろうと思っています。もし、近年、多少は事情が変わってきたとするなら、それは、たとえばロック・ミュージックのおかげで、私のリズムを強調する音楽に違和感を覚えぬ方が増えたとか、日本人の耳が、私の音楽を受け入れてくれる方向に、変わってきたせいではないでしょうか?」

「『土俗的三連画』について」
「1936年、私は北海道の厚岸で林務官生活に入っていましたが、そこから横浜に出て行って、チェレプニンに1ヶ月間、作曲を習いました。そのとき、チェレプニンは、レッスン料を取らないうえ、滞在費までもってくれるという破格の扱いを、私にしてくれたので、その恩に報いるため、彼に曲を献呈する約束をしました。
 チェレプニンは、私の厚岸での仕事と生活に興味を示し、僻地でそんな暮らしをしている作曲家は世界でも珍しいのだから、その暮らしの印象を音楽で書き留めておくべきだと力説しました。実はそのとき、既に私は、言われるまでもなく、そういう趣旨の室内オーケストラの作品を書き始めており、その曲名や楽章構成について、彼と話し合った記憶があります。
 こうして出来上がったのが『土俗的三連画』なのです。」

「『交響譚詩』について」
「次兄、伊福部勲の追悼曲として作ったものです。兄は、東京の羽田の夜光塗料研究所に勤めていて、太平洋戦争中の1942年、放射線障害で逝ったのです。」
「この曲の第2譚詩には、もともと『日本狂詩曲』の第1楽章として書き、結局削除した、「じょんがら舞曲」の素材を使い込んであるのですが、それは、ボストンでの『日本狂詩曲』の初演にあたり、こちらでパート譜を用意して向こうに送らねばならなくなって、兄にも手伝ってもらったこと――その思い出を刻んでおきたいという気持ちからです。
 ところで、今回の録音では、私が直截にプレイヤーの皆さんに色々と勝手を言い、注文をきいて貰っています。おかげで、この曲ですと、たとえば、第2譚詩のフルート・ソロが、今回、私のイメージ通りの演奏になりました。ここのフルートには、言うまでもなく、日本の祭り囃子の笛のイメージが重ねられているのですが、この部分を、西洋の管楽器の通常の奏法通りに、タンギングを入れて吹かれると、日本の音型をヨーロッパの楽器で無理やりやっているなという感じが、どうしても出てしまいます。ですから、ここのフルートは、日本の笛の吹き方に従って、タンギングなしで吹く……、そうすると、表情がかなり日本らしくなり、具合がいいのです。そういうことを確かめながらやれたのは、本当に有り難いことでした。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全28頁)にトラックリスト&クレジット、「伊福部先生のこと」(黛敏郎)、「伊福部昭の肖像」(片山素秀)、「自作を語る」(伊福部昭/インタビュー:片山素秀)、曲目解説(片山素秀)、演奏者紹介、英文解説、写真図版(モノクロ)5点。

伊福部昭の肖像」「自作を語る」「演奏者紹介」は本シリーズ「1」~「4」共通です。
演奏はミニマル&メカニックな感じです。

★★★★★ 

 

土俗的三連画