幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『伊福部昭の芸術 3  舞 ― 伊福部昭 舞踊音楽の世界』 

伊福部昭の芸術 3 
舞 ― 伊福部昭 舞踊音楽の世界』 

The Artistry of Akira Ifukube 3 
MAI - Akira Ifukube Orchestral Works 


CD: Firebird/King Record Co., Ltd. 
KICC 177 (1995年) 
¥2,800(税込)(税抜価格¥2,718) 
Made in Japan 

 

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舞踊音楽「サロメ」(1948/87) 
Ballet "SALOME" 
1.前奏曲 2:04 
Prelude 
2.ヘロデ王宮殿内の広いテラス 0:59 
SCENE - A great terrace in the Palace of Herod. 
3.サロメの召使、ユダヤ人、ナザレ人など 5:05 
The slaves of Salomé, Jews, Nazarenes, etc. 
4.宴の間が騒がしくなる 0:18 
Noise in the banqueting-hall. 
5.ヘロデ王と王妃ヘロディアス、及び廷臣たちの登場/ヘロデ「サロメは何処だ? 女王は何処だ?」 3:33 
Enter Herod, Herodias, and all the Court. / Herod: Where is Salomé? Where is the Princess? 
6.サロメ登場 2:30 
Enter Salomé. 
7.ヘロデは、もうサロメから目線を外さない 3:46 
Herod looks all the while at Salomé. 
8.ヘロデ、サロメ、ヘロディアスⅠ 1:13 
Herod, Salomé, Herodias I 
9.ヘロデ、サロメ、ヘロディアスⅡ 2:43 
Herod, Salomé, Herodias II 
10.サロメ「私は、召使たちが香料とヴェールを持ってくるのを、そして、私のサンダルを脱がしてくれるのを、待っているのです」 0:25 
Salomé: I am waiting until my slaves bring perfumes to me and the seven veils, and take from off my feet my sandals. (Slaves bring perfumes and the seven veils, and take off the sandals of Salomé.) 
11.サロメ「用意はできております、王様」 サロメは、7枚のヴェールの踊りをおどる 2:07 
Salomé: I am ready, Tetrach. (Salomé dances the dance of the seven veils.) 
第1の踊り 
first dance 
12.第2の踊り 1:57 
second dance 
13.第3の踊り 0:38 
third dance 
14.第4の踊り 1:36 
fourth dance 
15.第5の踊り 2:49 
fifth dance 
16.第6の踊り 1:40 
sixth dance 
17.第7の踊り 2:07 
seventh dance 
18.首斬役人、ナーマンは、水槽の中へ降りて行く 0:28 
The Executioner goes down into the cistern. 
19.サロメは水槽にもたれ、聞き耳を立てる 0:42 
Salomé learns over the cistern. 
20.水槽から首斬役人の、大きな黒い腕だけが出てくる。その腕は、ヨカナーンの首を差し上げている 0:17 
A huge black arm, the arm of The Executioner, comes forth from the cistern, bearing on a silver shield the head of Jokanaan. 
21.サロメは、その首をつかむ。ヘロデはマントで顔を隠す。ヘロディアスは笑みを浮かべ、扇をくゆらせる。ナザレ人たちは跪き、祈りはじめる 7:48 
Salomé seizes it. Herod hides his face his cloak. Herodias smiles and fans herself. The Nazarenes fall on their knees and begin to pray. 
22.ヘロデ「私は何も見たくない。私は誰にも見られたくない。松明を消せ。月を隠せ」 0:13 
Herod: I will not look at things, I will not suffer things to look at me. Put out the torches! Hide the moon! 
23.召使は松明を消す。星は消える。巨大な黒雲がよぎり、月を隠す。舞台は深い闇に覆われる。王は階段を上がりはじめる。 0:29 
The slaves put out the torches. The stars disappear. A great cloud crosses the moon and conceals it completely. The stage becomes quite dark. The Tetrach begins to climb the staircase. 
24.一条の月の光がサロメに落ち、彼女を照らし出す 0:30 
Salomé is moonlits. 
25.ヘロデ「その女を殺せ!」 0:08 
Herod: Kill that woman. 
26.兵士たちは突進し、その盾で、ヘロディアスの娘、ユダヤの王女、サロメを押し殺す 0:13 
The soldiers rush forward and crush beneath their shields Salomé, daughter of Herodias, Princess of Judaea. 

27.兵士の序楽(1944) 8:26 
Prelude du Soldat 


広上淳一指揮/日本フィルハーモニー交響楽団 
JYUNICHI HRIOKAMI conducting the JAPAN PHILHARMONIC SYMPHONY ORCHESTRA 


録音:1995年8月22日―24日、29日―31日、9月1日 
東京、セシオン杉並 
Recorded: 22-24, 29-31 August, 1 September, 1995 
SESSION SUGINAMI HALL, TOKYO 


監修:伊福部昭 
Supervisor: AKIRA IFUKUBE 
プロデューサー:福田稔 
Producer: MINORU FUKUDA 
ディレクター:松下久昭 
Director: HISAAKI MATSUSHITA 
エンジニア:高浪初郎 
Engineer: HATSURO TAKANAMI 
アシスタント・エンジニア:亀龍恒太(SCI)  
Assistant Engineer: KOTA KIRYU (SCI) 
アート・ディレクション:平石誠 
Art Direction: MAKOTO HIRAISHI 
カヴァー・デザイン:美登英利 
Cover Design: HIDETOSHI MITO 
フォトグラフ:斉藤忠徳 
Photograph: TADANORI SAITO 
プロモーション:森川進 
Promotion: SUSUMU MORIKAWA 


◆本CD「自作を語る」(伊福部昭)より◆ 

「『サロメ』について」
「これは貝谷八百子さんのためのバレエ曲です。貝谷さんは、東洋人の体つきを生かせる新作バレエを作ってゆかねば、所詮本場とは勝負にならぬと、中近東を舞台に、アジア系の女、サロメを主役とする出し物を考えた訳です。
 さて、このバレエ曲を、私は1986年にコンサート用に大幅に改訂しております。それが、今回録音されている版ですけれども、この改訂につき、述べておきます。
 まず、オリジナル版作曲の際には、ダンサーの体力上の制約もあって、音楽としてもっと書き込みたい、延ばしたいという箇所を、かなり中途半端に詰めておかねばなりませんでした。そうした心残りの箇所を、この改訂版では、みな満足のゆく分量にまで、拡大しています。
 更に、幕切れの箇所ですけれども、ワイルドの原作では、サロメが兵士の盾で押し潰され、即死するところで一気に幕となります。私の音楽も、この原作通り、勢いをもってドッと終わりたかった……。ところが、貝谷さんは、サロメが死んで直ちに幕では、ダンサーの見せ場がなくなるので、なかなか幕が下りないことにしようと言うのです。それで、盾で潰されてから、月の光が変わったりとか、様々な演出を入れ、舞台上で倒れているサロメをたっぷり見せてから幕との段取りになりました。ですから、音楽もオリジナル版は、静かな箇所が付いて終わったのです。
 なるほど、ダンサーとしては、その方がいいのでしょうけれど、それでは原作通りにならないし、音楽としてもどうも格好が悪いので、この改訂版では、当初の意図通り、サロメが潰され、一気に幕のかたちにしてあります。」

「『兵士の序楽』について」
「私の作品表に、戦争中、陸軍の委嘱により作曲された作品と記載されていますが、私本人には、この作品の成立の経緯について、あまり定かな記憶がないのです。(中略)演奏するとか、したとかいう通知も、一切貰った覚えはないし、実のところ私は、この作品が、今回の録音以前に音になっているかどうかすら知りません。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全28頁)にトラックリスト&クレジット、「伊福部昭先生との出会い」(池野成)、「伊福部昭の肖像」(片山素秀)、「自作を語る」(伊福部昭/インタビュー:片山素秀)、「曲目解説」(片山素秀)、「演奏者紹介」、英文解説、写真図版(モノクロ)4点。

伊福部昭の肖像」「自作を語る」「演奏者紹介」は「1」~「4」共通です。
サロメ」はシュトラウスよりよいです。「兵士の序楽」はえんえんフリゲートマーチですが、仏語タイトル「Prelude du Soldat」はストラヴィンスキーの「L'Histoire du soldat」(兵士の物語)を連想させます。

★★★★★ 


舞踊音楽「サロメ