『ディーリアス:管弦楽曲集』
ビーチャム
Delius: Orchestral Works
Complete Stereo Recordings
Sir Thomas Beecham
Royal Philharmonic Orchestra
CD:EMI Classics/東芝EMI株式会社
シリーズ:Grandmaster Series
TOCE-3302・3 (1998年) [2枚組]
定価2,854円(本体2,718円)
Made in Japan
帯文:
「ディーリアスの最高の理解者…巨匠ビーチャムのステレオ録音のすべて。」
「このディスクは高密度な情報量をもつ20ビット/88.2kHzの信号処理でマスタリングされており、オリジナル・ソースのすばらしいサウンド・イメージとパワフルかつ繊細な響きを忠実に再現しています。」
「――レコード芸術推薦――
ディーリアス芸術の真髄。そのイギリスの田園風景のたたずまいを想わせる、詩情豊かで深い余韻を湛えた作品を、広く世に紹介した名指揮者ビーチャムの、上品で洗練された指揮からは、淡々とした中にもこのうえなく美しい音楽が伝わって来ます。」
「このアルバムのソースは既に発売されている‟ビーチャム/ディーリアス:管弦楽曲集”(TOCE-8267・68)と同一です。音質的な違いはありません。」
ディーリアス
DELIUS
DISC 1
1.交響詩「丘を越えて遥かに」(ビーチャム校訂) 12:55
OVER THE HILLS AND FAR AWAY (ed. Beecham)
2.そり乗り(冬の夜) 5:25
SLEIGH RIDE (Winternacht)
3.ブリッグの定期市~イギリス狂詩曲 15:47
BRIGG FAIR - An English Rhapsody
フロリダ組曲(ビーチャム改訂&校訂)
FLORIDA SUITE (rev. & ed. Beecham)
4.第1楽章:夜明け~ラ・カリンダ舞曲 10:23
1st Movement : Daybreak (La Calinda)
5.第2楽章:河畔にて 7:11
2nd Movement : By the River
6.第3楽章:夕暮 9:40
3rd Movement : Sunset - Near the Plantation
7.第4楽章:夜に 7:34
4th Movement : At Night
8.マルシュ・カプリス 3:50
MARCHE CAPRICE
DISC 2
1.ダンス・ラプソディー 第2番 7:37
DANCE RHAPSODY No .2
2.夏の夕べ(ビーチャム校訂&編) 6:18
SUMMER EVENING (ed. & arr. Beecham)
2つの小オーケストラのための小品
TWO PIECES FOR SMALL ORCHESTRA
3.春初めてのかっこうを聞いて 6:57
No. 1 : On hearing the first Cuckoo in Spring
4.河の上の夏の夜 6:33
No. 2 : Summer Night on the River
5.夜明け前の歌 6:01
A SONG BEFORE SUNRISE
6.歌劇「フェニモアとゲルダ」間奏曲 5:08
FENNIMORE AND GERDA - Intermezzo
7.「イルメリン」前奏曲 4:59
IRMELIN PRELUDE
8.日没の歌(ダウソン詩) 29:25
SONGS OF SUNSET (Words by Dowson)
ジョン・キャメロン(バリトン)/モーリーン・フォレスター(コントラルト)(DISC 2 [8])
JOHN CAMERON (Baritone) / MAUREEN FORRESTER (Contralto)
ビーチャム合唱協会(DISC 2 [8])
BEECHAM CHORAL SOCIETY
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
ROYAL PHILHARMONIC ORCHESTRA
指揮:トマス・ビーチャム
cond. by SIR THOMAS BEECHAM
DISC 1
First Release: 1958 ([1], [3], [8]), 1960 ([1], [4]-[7])
Producer: Lawrance Collingwood
Balance Engineer: Christopher Parker
[1][4]-[7] recorded under the auspices of the Delius Trust
DISC 2
First Release: 1958 ([3]-[6]), 1960 ([1]), 1963 ([2], [7], [8])
Producer: Lawrance Collingwood ([8] with Victor Olof)
Balance Engineer: Christopher Parker
[1] recorded under the auspices of the Delius Trust
◆三浦淳史による解説より◆
「フレデリック・ディーリアスは1862年1月29日英ヨークシャー州のブラッドフォードに生まれたが、両親はドイツからの移住者なのでディーリアスにはイギリス人の血は一滴も流れていない。羊毛業を手広く営んでいた父はむすこに家業をつがせようとしたが、音楽の道に深入りしてゆくディーリアスは北欧、フロリダ、ライプツィヒ、パリと放浪の青春時代を送り、パリで知り合った女流画家イェルカ・ローゼンと結婚し1903年パリ近在の美しい村グレ=シュール=ロワンの邸宅に隠遁、後半生を大自然と作曲に没入して数々の美しい作品を書き、1934年6月10日同地で世を去った。」
「交響詩《丘を越えて遥かに》―幻想序曲(ビーチャム校訂)」
「1895―97年、つまりディーリアスのパリ時代に書かれた。(中略)ノルウェーの自然あるいは郷土ヨークシャーのムア(荒野)と丘陵のイマージュ(心象)だといわれているが、ディーリアス特有の精妙なタッチと管弦楽のカラーによって描かれた自然への讃歌といえよう。しかし、ほとんど印象派的ではなく、明晰な形式の上に構成されている。」
「そり乗り(冬の夜)」
「ライプツィヒで書かれたので、さいしょの原題はドイツ語により、Schlittenfahrt (Winternacht) だった。(中略)1887年の夏、ディーリアスはノルウェーの南部へ孤独な徒歩旅行に出かけた。その秋、ノルウェー語を修得したディーリアスはライプツィヒで何人かのノルウェーの作曲家と交友をもった。中でもクリスティアン・シンディング(1864―1935)と親交を結び、年の暮れ近くにグリーグ(1843―1907)が来て3人はほとんど毎日のように会った。クリスマス・イヴに最年長のグリーグはパーティをもち、ハルヴォルセン(1864―1935)も仲間に加わった。初めの計画では、めいめいが新作を持ち合わせ、夕食後ピアノで演奏し、たがいに批評し合うということだったので、ディーリアスは《そり乗り》の手書きスコアをたずさえていった。ところが、会合の楽しさが計画の実現をはばんだのだった。」
「《ブリッグの定期市》―イギリス狂詩曲」
「「ブリッグの定期市」という題名は、オーストリア出身の名ピアニスト=作曲家パーシー・グレインジャー(1882―1961)がイングランド東部のリンカンシャー州の寒村で採譜した民謡の題名である。ディーリアスはこの旋律が気に入り(中略)グレインジャーの許可を得て、1907年に(中略)管弦楽曲《ブリッグの定期市》を書き上げた。」
「『いかに魔術的に《ブリッグの定期市》の最初の数頁が地平線を掩っている淡い靄(もや)と大気のなかにある曙のかぐわしい匂いを暗示しながらイギリスの田舎の初夏の朝の気分をよびさますことか!』〔セシル・グレイ、1924年〕。」
「《フロリダ組曲》(ビーチャム改訂&校訂)」
「ライプツィヒで音楽院のクラスを聴講し、連日オペラやコンサートにかよっていたディーリアスは、1887年最初のオーケストラ作品となる《フロリダ組曲》を完成した。その年の早春、ディーリアスはローゼンタル公園にあったレストランの大ビア・ホールで《フロリダ組曲》の初演奏をもくろんだ。指揮者のハンス・ジットに100マルクの礼金を払い、66名の楽員にはビールをたらふく振る舞うという条件だった。聴衆はわずか2人だった。作曲者自身と折からライプツィヒへ来ていたグリーグだった。」
「ダンス・ラプソディー 第2番」
「ディーリアスがパリ近郊のグレ=シュール=ロワンに隠栖したのは40の声をきいてからであった。《ダンス・ラプソディー第2番》も1916年(54歳)にグレで書かれた。」
「夏の夕べ(ビーチャム校訂&編)」
「1890年(28歳)、パリで書かれた「3つの小さな音詩」の第1曲に当たっている。」
「2つの小オーケストラのための小品」
「春初めてのかっこうを聞いて」
「1912年に書かれ、《河の上の夏の夜》といっしょに、1914年1月10日(中略)英初演がもたれた。(中略)序奏ののち第1主題が現われる。これはイギリス的な性格を帯び、ディーリアス自身のものだが、次に現われる第2主題にはノルウェー民謡「オーラの谷間で」が用いられている(グリーグのピアノ曲「ノルウェー民謡曲集」作品66にも採られている)。そのあとで「春初めてのかっこう」の鳴き声がきこえる。」
「河の上の夏の夜」
「1911年グレで書かれた。(中略)おぼろな和音は河上にたちこめる霧を表わし、リズムは河上で静かに揺れる小舟を示唆している。(中略)曲の終わりで、オフ・ビートの木管の和音が遠くからきこえてくる蛙の声をほのめかしているのも風情がある。」
「夜明け前の歌」
「1918年に(中略)書かれた小編成の交響詩である。英詩人スウィンバーンの詩に感興を得て作曲したといわれるが、日の出前のイギリスの田園美を描いたものである。」
「歌劇《フェニモアとゲルダ》間奏曲」
「デンマークの小説家=詩人J.P.ヤコブセン(1847―1885)の小説「ニイルス・リーネ」に基づく(中略)このオペラは1908年に手がけられ、1910年に完成したディーリアスさいごのオペラである。」
「《イルメリン》前奏曲」
「《イルメリン》は1890年から92年にかけて作曲されたディーリアスの最初のオペラである。台本は北欧に伝わるロマンティックなお伽話にもとづいてディーリアス自身が書いた。」
「日没の歌」
「1906年の夏、(中略)ノルウェーでディーリアスはアーネスト・ダウソン(1867―1900)の詩をテクストとする《日没の歌》の作曲にとりかかった。《日没の歌》は1908年ディーリアスの隠棲していたパリ近郊の美しい村グレ=シュール=ロワンの自邸で書き上げられた。」
「ダウソンは(中略)英詩人で、生来病弱のため、悲しい恋に破れ、ついに血を吐いて死んだ薄幸の詩人である。(中略)恋に破れたダウソンは傷ついた獣のように紅灯の巷をさすらい、その弱い肉体と心を衰えさせていった。ディーリアスもパリ時代には夜の巷を彷徨し、芸術家仲間と奔放な生活を送った。《日没の歌》は「イングリッシュ・ヴェルレーヌ」といわれたダウソンの絶妙な抒情詩に付曲したソング・サイクル(通篇歌曲)である。」
◆本CDについて◆
2枚組用ジュエルケース(10mm厚)。ブックレット(全24頁)にトラックリスト&クレジット、三浦淳史による解説、「日没の歌」歌詞&対訳(三浦淳史)、「ハイサンプリング・レコーディングシステム」、「CLASSIC 21 入会のご案内」。
久しぶりにディーリアスをきいてみました。自分がディーリアスの名前を知ったきっかけはケイト・ブッシュの曲「ディーリアス(夏の歌)」でした。
★★★★★
Songs of Sunset
「They are not long, the days of wine and roses:
Out of a misty dream
Our path emerges for a while, then closes
Within a dream.」
「葡萄酒と薔薇の日々はそう長くはつづかない。
霧立ちこめる夢のなかから
われらの路はしばし現われ、またしても
夢のなかに消えてしまう。」