幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

オーネット・コールマン  『チャパカ組曲』

オーネット・コールマン 
『チャパカ組曲』 
Ornette Coleman 
Chappaqua Suite 


LP: CBS/SONY INC (Tokyo Japan) 
BEST JAZZ COLLECTION 
SOPW 13~14 [2枚組] 
¥3,800 

 

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帯文: 

「3年間の沈黙を破り、ファラオ・サンダースを卒いて
録音したコールマン最高の話題作!」


Record 1 

SIDE A  
チャパカ組曲Ⅰ 21:55 
Chappaqua Suite I 

SIDE B 
チャパカ組曲Ⅱ 19:00 
Chappaqua Suite II 


Record 2 

SIDE A 
チャパカ組曲Ⅲ 17:40 
Chappaqua Suite III 

SIDE B 
チャパカ組曲Ⅳ 21:58 
Chappaqua Suite IV 


Ornette Coleman: as 
Pharoah Sanders: ts 
David Izenzon: b 
Charles Moffett: ds 
brass and strings dir. by Joesph Tekula 

June 15 / 16 / 17, 1965 NYC  


◆本LP解説(清水俊彦)より◆ 

「このアルバムにのっている一連の写真は、コンラッド・ルークスの映画「チャパカ」のスチールである。足かけ4年間、この若いアメリカの映画作家は、自分が伝えたいと思うメッセージをフィルムに移し換えるために世界中を歩き回ったが、その仕事がほとんど終りに近づいたとき、彼は「チャパカ」の音楽の作曲と演奏をオーネット・コールマンに頼んだらどうかと考えた。当のコールマンはことの重大さにおどろいて、しばらくためらったが、とうとう引き受けることになり、編曲者のジョセフ・テクラと仕事にとりかかった。1965年6月15日、このアルト奏者と彼の忠実なサイドメンであるベース奏者のデヴィッド・アイゼンゾン、ドラマーのチャールズ・モフェットの3人は、テナー奏者のファロア・サンダースや11人のすぐれたスタジオ・ミュージシャンたち(木管楽器、ブラス、ストリングス)と一緒にニューヨークのある大きなスタジオに入った。」
「(中略)コールマンは、このアルバムで、それまでとは非常に違ったやり方で自分自身を表現している。というのは、彼はそのアイディアを書きおろしたばかりでなく、それらを火のような即興演奏と、かつてない独自の大きな形式の中で一挙に爆発させたからだ。「チャパカ組曲」のもつこうした特別の性質と重要性のために、今度はコンラッド・ルークスの方がためらう番になった。それ自体で非常に傑出しているこの音楽を、映画のバックグラウンド・ミュージックとして使うべきかどうか、コールマンの音楽のあまりの力強さは映画に役立つよりもむしろ傷つけるのではないか、あるいは逆に、映画の画面が音楽を損うことになるのではないか……と。そしてついにルークスは、もう一つのスコアをラヴィ・シャンカールに依頼することに決め、このレコーディングはそのままの形で2枚のLPに収めて(中略)提供することにしたのである。」

「ニューヨークで化粧品会社を経営する大金持を父にもちながら(中略)、15歳の頃からアル中になり、さらに麻薬の常習でジャンキーになったコンラッド・ルークスは、さんざん苦しんだあげくやっと麻薬から解放されたが、(中略)26歳のときから3年の月日と75万ドルの費用をかけてつくったのが、この自伝映画「チャパカ」である。」
「監督と主人公を兼ねるルークス自身は、この時はまだズブの素人だったというが、撮影を担当しているのはアメリカの最もすぐれたカメラ・アーチストの一人(中略)ロバート・フランクである。その上、俳優のジャン・ルイ・バロー、「裸のランチ」の作家で麻薬通のウィリアム・バローズ、詩人のアレン・ギンズバーグ、一流モデルのポーラ・プリチェットといったそうそうたるメンバーが助演者として顔を出しているばかりでなく、ラヴィ・シャンカールサウンド・トラックのほとんどを受けもっており、それにフォーク・ロックのファッグスが協力し、バッハの音楽も使われている。舞台になっているのはチャパカ、ニューヨーク、ジョージア、ニュー・メキシコ、パリ、スイス、インドなどで、チェロキー・インディアンのペヨーテの儀式や、イギリスのサリスバリー平原にある有史以前の巨大な石柱群ストーンヘンジなども出てくる。そして1966年のヴェニス国際映画祭でシルヴァー・ライオン賞を受賞し、ロジェ・ヴァディムフランソワ・トリュフォーなどに絶讃されたといういわくつきのものである。」
「ところでチャパカとは一体どこにあるのか、(中略)それはニューヨークから50哩ほどのところにある小さな町で、(中略)コンラード・ルークスが少くとも少年時代の一時期を幸福と平和のうちに送った場所であり、映画にはこの一時期がくり返しあらわれてくる。」

「「チャパカ組曲」は、2年間の沈黙を破ってジャズ・シーンにカムバックしたオーネット・コールマンの最初のレコーディングであり、(中略)すでにその頃、彼はイギリスのミュージシャン・ユニオンの激しい反対に直面しながらも、ロンドン郊外にあるクロイドンのフェアフィールド・ホールにおけるあの記念すべきコンサート(「クロイドン・コンサート」はその実況録音である)の準備に取りかかっていたのである。そして依然として、あの非常に透明で喚起的なサウンドを生み出す白いプラスチック製のアルト・サックスを吹いていた。その同じサウンドがこの「チャパカ組曲」でも聴かれるが、用いられている素材の多くも、後に「クロイドン・コンサート」や「アット・ザ・ゴールデン・サークル」でおなじみになったものである。」

「「チャパカ組曲」は、1967年のはじめにフランスCBSから2枚組のアルバム(CBS62896/7)として刊行され、その年の国際ディスク大賞のジャズ部門でゴールド・メダルを獲得した。つづいて数ヶ月後に、全く同じジャケットでイギリスのCBSから発売された(CBS66203)。」
組曲は4つのパートに分れており、それぞれが何か違ったものを提出している。いちばん細かく記譜されているのがパート1であり、パート2では次第にトリオ演奏に重点が置かれ、パート3は全面がトリオ演奏になる。パート4ではふたたびオーケストラが入ってくるが、演奏は最もワイルドである。ここではまた、後半になって、倍音を伴ったファロア・サンダースの例のきしるような異様なソロが聴かれる。」


◆本LPについて◆ 

見開きジャケット。中ジャケにJean-Louis Ginibreによるライナーノーツ(英文)、写真図版(モノクロ)8点。ジャケットには「Produced in France by CBS DISQUES/Supervision: Henri Renaud」とある以外はクレジット&トラックリストの記載はありません。インサート(ライナー)にトラックリスト&クレジットと清水俊彦による解説。帯はやや厚めの紙を折って上に被せるタイプのやつです。

★★★★★ 

 


Chappaqua (1966)