Keith Tippett's Ark
『Frames』
Music for an Imaginary Film
キース・ティペッツ・アーク
フレイムス
CD: Ogun Recording Limited
OGCD 010/011 (1996) [2CD]
Made in England
Distributed by Cadillac Distribution
Distributed in Japan by disk union
Arcàngelo
ARC-1004/1005 (2枚組)
税込定価¥3,605(税抜価格¥3,500)
帯文:
「初期キング・クリムゾンのキー・パースン:キース・ティペットの代表作。ついに初CD化!」
「22人のオールスターが結集したブリティッシュ・プログレッシヴ・ロック/ジャズの金字塔。」
KEITH TIPPETT'S ARK - FRAMES (MUSIC FOR AN IMAGINARY FILM)
Disc 1 - Frames Parts 1 & 2 39:13
フレイムス・パート1&2
Disc 2 - Frames Parts 3 & 4 44:29
フレイムス・パート3&4
Keith Tippett - piano, harmonium
キース・ティペット
Stan Tracey - piano
スタン・トレイシー
Elton Dean - alto sax, saxello
エルトン・ディーン
Trevor Watts - alto & soprano saxes
トレヴァー・ワッツ
Brian Smith - tenor & soprano saxes, alto flute
ブライアン・スミス
Larry Stabbins - tenor & soprano saxes, flute
ラリー・ステイビンズ
Mark Charig - trumpet, small trumpet, tenor horn, Kenyan thumb piano
マーク・チャリグ
Henry Lowther - trumpet
ヘンリー・ロウザー
Dave Amis - trombone
デイヴ・エイミス
Nick Evans - trombone
ニック・エヴァンス
Maggie Nicols - voice
マギー・ニコルス
Julie Tippetts - voice
ジュリー・ティペット
Steve Levine - violin
スティーヴ・レヴァイン
Rod Skeaping - violin
ロッド・スキーピング
Phil Wachsmann - electric violin, violin
フィル・ワックスマン
Geoffrey Wharton - violin
ジェフリー・ワートン
Alexandra Robinson - 'cello
アレクサンドラ・ロビンソン
Tim Kramer - 'cello
ティム・クレイマー
Peter Kowald - bass, tuba
ペーター・コヴァルト
Harry Miller - bass
ハリー・ミラー
Louis Moholo - drums
ルイス・モホロ
Frank Perry - percussion
フランク・ペリー
All music composed, arranged and directed by Keith Tippett
Published by Ogun Publishing Co.
Music originally commissioned by Ogun Publishing Co. and first performed at the Roundhouse, London on 21 May 1978.
This studio recording was originally released in 1978 on LP as Ogun 003/004
Recorded 22, 23, 24 May 1978 at Wessex Studios, London N5.
Engineer: Gary Edwards, assisted by Jeremy Spencer-Green.
Pianos by Bosendorfer.
Produced by Hugh Hopper.
Executive producer: Keith Beal.
Remastered for CD at Porky's, 1996, assisted by Steve Beresford.
Original sleeve design & photography by Dick Whitbread.
CD layout/typesetting by David Ilic.
CD reissue co-ordinated by Hazel Miller.
録音:1978年5月22、23、24日(ロンドン)
◆荒井信義による日本語解説より◆
「キース・ティペットがあるインタビューで述べるには、22人ものオールスター・メンバーを結集したこのオーケストラのプロトタイプは、1966年に遡って12人編成のバンドだったという。(中略)それから12年後、1978年にそのプロトタイプはさらに10人を加え、22人による豊かな色彩を得て再登場したのである。しかしARKと名付けられたこのバンドの航海は短いものだった。ロンドンの「ラウンドハウス」でただ一度だけのライヴが行われ、本作が唯一のレコーディングとして残されたのみである。」
◆Keith Tippettによる本CDへのコメントより◆
「May music never just become another way of making money.」
◆本CDについて◆
輸入盤国内仕様。三面紙ジャケット(13×13cm)。ジャケットにSteve LakeによるオリジナルLPライナーノーツ、Julie Tippettsによる歌詞、Keith Tippettによるコメント(February 1996)、トラックリスト&クレジット、写真図版1点。投げ込み(十字折り/片面印刷)にトラックリスト&クレジット、荒井信義による日本語解説。
本作のメンバー表記をみるとピアノが二人、アルトが二人、テナーが二人というように、各楽器の奏者が二人一組(ヴァイオリンは四人)になっています。これはオーネット・コールマンの「ダブル・カルテット」の拡大版を意図したものだと思われますが、グループ名が「アーク(方舟)」なので、旧約聖書のノアの方舟(はこぶね)のくだり(『創世記』第6章)に「すべての生き物(中略)の中から、それぞれ二つずつを箱舟に入れて、あなたと共にその命を保たせなさい。」とあるのにちなんでいるのかもしれないです。しかし『創世記』には続けて「それらは雄と雌とでなければならない。」とありますが、ティペットのアークはチェロ以外はすべて同性のペアなので、音の洪水を生き延びても子孫を残せるのはチェロだけ、という英国流ブラックユーモアかもしれないです。
タイトルの「フレイムス(frames)」については、本作はオーヴァリー・ロッジのような完全即興ではなく、あらかじめ作曲された曲を演奏していますが、曲はあくまでインプロヴィゼーションのための枠組み(フレーム)にすぎない、と原盤ライナーノーツで指摘されています。それと同時に、船(方舟)のフレーム(竜骨・肋骨)とか、副題に「架空の映画のための音楽」とあるので、映画フィルムのフレーム(コマ)とかの意味も含ませていると思います。
ジュリー・ティペッツによる「First Piece」の歌詞には、鳥との意思疎通の可能性が歌われていて、これはノアが鳥を放って洪水の終息を知るのと照応していますが、あるいは失われた楽園の回復の可能性を示唆しているのかもしれないです。
そうすると、「架空の映画」というのは、原初の楽園からのアダムとイブの追放に始まって、大洪水とその後の人類の繁栄、最後の審判と楽園の回復(新しいエルサレム)、すなわち「創世記」から「ヨハネの黙示録」に至る人類史が、フリージャズからビッグバンドへとめまぐるしく変転するサウンド・トラックによって描き出されているのかもしれないです(楽園の回復は鳥のさえずりによって象徴されています)。
ところで、ノアの洪水は大水による世界の浄化ですが、ジュリー・ティペッツによる「Third Piece」の歌詞、
「Burning - fire is coming.
Morning glory coming.
Children of the dawning -
Lullaby the warning -
Burning - fire is coming etc.」
は、エクピュローシス(大火による世界の浄化)を連想させます。そうすると本作の四つのパートは四大元素をあらわしているのかもしれないです。
★★★★★