『雉の祝宴~1454年 ブルゴーニュ公の宮廷における祝宴の音楽』
アンサンブル・ジル・バンショワ
Musique à la cour de Bourgogne
Music at the court of Burgundy
Ensemble Gilles Binchois
Dominique Vellard
Le Banquet du voeu 1454
CD: Erato/Warner Classics
ワーナーミュージック・ジャパン
シリーズ:Originale: Period Instrumental Series
WPCS-16214 (2015年)
定価¥1,400(本体)+税
Made in Japan
帯文:
「1454年に開催された「雉の祝宴」の音楽を、詳細な研究の下に再現したアルバム。中世の音の響きが心地よく広がる。」
Le Banquet du voeu 1454
The Feast of the Pheasant
第一のアントルメ
Premier entremet
1.ジャック・ヴィド:そして、十分に 1:36
Jacques Vide: Et c'est assez
[chalemie, cornemuse]
2.作者不詳:さらば、わが愛しの貴婦人 4:04
Anon: Adieu ma tres belle maistresse
[AL, harpe]
3.作者不詳:ひとたび死を前にすれば 2:39
Anon: Une foys avant que morir
[flûte, harpe, vièle, luth]
4.[ルグラン]:ヴィルヘルム・ルグラン殿 1:25
[Legrant]: Wilhelmus Legrant
[orgue]
5.ギョーム・デュファイ:めでたし天の女王 1:47
Guillaume Dufay: Ave regina celorum
[EB, DV, PhB]
第二のアントルメ
Deuxième entremet
6.作者不詳:ひばりの歌 1:22
Anon: Au chant de l'alowette
[cornemuse]
7.バンショワ:わたしはかつてあなたに比肩するものを見たことがない 4:40
Binchois: Je ne vis onques la pareille
[AL, DV]
8.ウォルター・フライ:めでたし天の女王 2:19
Walter Frye: Ave regina celorum
[3 flûtes]
9.バンショワ:あなたのいと甘く魅惑的な眼差し 4:03
Binchois: Vostre tres doulx regart
[DV, harpe]
10.バンショワ:栄光と賛美とほまれとは 6:12
Binchois: Gloria, laus et honor
[AD, DV, EB, PhB]
第三のアントルメ
Troisième entremet
11.ニコラ・グルノン:わたしは貴方を求めはしない 2:37
Nicolas Grenon: Je ne requier de ma dame
[2 flûtes]
12.ギョーム・デュファイ:哀れにもわが身をかこつ 2:04
Guillaume Dufay: Je me complains piteusement
[AL, BL, CJ]
13.作者不詳:不幸なるきみ 1:52
Anon: Ellend du hast
[orgue]
14.バンショワ:シャンソン 2:25
Binchois: Chanson
[3 vièles]
15.ピエール・フォンテーヌ:あなたを喜ばせ続けるために 3:02
Pierre Fontaine: Pour vous tenir
[AL, BL, flûte, 2 vièles, luth]
第四のアントルメ
Quatrième entremet
16.作者不詳:ため息つくわが心 1:51
Anon: Du cuer je soupire
[2 flûtes]
17.バンショワ:喜びから、ひとり、離れて 5:21
Binchois: Seule esgaree
[AT, EB, vièle]
18.作者不詳:ヴェネツィア 2:45
Anon: Venise
[flûte, harpe]
19.ジャック・ヴィド:わたしはとてもつらい 5:03
Jacques Vide: Il m'est si grief
[BL, CJ, vièle]
20.作者不詳:レ音に基づく前奏曲 1:40
Anon: Preambulum super re
[orgue]
21.バンショワ:主よ感謝します 0:35
Binchois: Deo gracias
[AT, DV, EB, PhB]
アンサンブル・ジル・バンショワ
Ensemble Gilles Binchois
ドミニク・ヴェラール(指揮)
Dominique Vellard: direction
Anne-Marie Lablaude [AL]: chant (voice)
Brigitte Lesne [BL]: chant (voice) & harpe
Catherine Joussellin [CJ]: chant (voice) & vièle
Akira Tachikawa [AT]: chant (voice)
Emmanuel Bonnardot [EB]: chant (voice) & vièle
Dominique Vellard [DV]: chant (voice) & luth
Philippe Balloy [PhB]: chant (voice)
Pierre Hamon [PH]: flûte & cornemuse
Pierre Boragno [PB]: flûte
Randall Cook [RC]: vièle, flûte & chalemie
Georges Lartigau [GL]: orgue
録音:1989年12月 スイス
Musicological consultant: David Fallows
Producer: Pere Casulleras
Balance Engineer: Pere Casulleras
Executive Producer: Patrick Mouyren
Recording: Amsoldingen, Switzerland; December 1989
Cover: Le Banquet 'Renaut de Montauban' 1462, school of Loyset Liedet for Philip the Good (Bibliothèque de l'Arsenal, Paris / Giraudon)
Design: The Third Man
「Originale」シリーズ・マスター制作:杉本一家(JVCマスタリング・センター)
Total Time 59:33
◆斉藤基史による解説より◆
「1454年2月17日の日曜日「雉の祝宴 Banquet du Faisan」あるいは「雉の誓いの祝宴 Banquet des vœux du Faisan」と呼ばれる祭典がブルゴーニュ善良公フィリップ3世(1396‐1467)の主催で開催された。(中略)このCDは音楽学者の協力の下、この祭典の様子を再現したものである。前年1453年5月にオスマン・トルコ帝国により東ローマ帝国の首都コンスタンチノープルが陥落した。父ジャン公が1396年のトルコとの戦いで捕虜になり、報復の意志を持っていたフィリップ公は1430年に金羊毛騎士団を結成、十字軍に対する意欲を示していたが、ローマ教皇ニコラウス5世から十字軍の要請があり、それに応ずる意志を表明するために開催されたのがこの祝宴だった。参加者は皆、メインディッシュの雉に向かって意気込みを誓ったという。ブルゴーニュ公に仕えた宮廷詩人で年代記作家オリヴィエ・ド・ラ・マルシュの『回想録』には、宴の様子が詳細に記録されている。彼自身が演出にも携わり、アントルメに本人が自ら出演していた。ちなみにアントルメとはコース料理が供される合間の余興を指す。それには、テーブルごとの派手な飾りつけによる「静」のアントルメと、劇や音楽を伴う「動」のアントルメがあり、この宴の目的を象徴的に表す演出がなされていた。例えば音楽に関係するものだと、大テーブルでは巨大なパイの中から28人の楽師が出てきて演奏したという。また、招待客が着席すると、中テーブルに設置された教会模型(中にはオルガンと4名の歌手がいた)の鐘が鳴り音楽が奏でられ、その後、2人のトランペット奏者を乗せて駆け回る馬と、それを導く16人の騎士が登場した。このCDは、こういったシーンの再現が意図されているのである。」
◆本CDについて◆
ブックレット(全16頁)にトラックリスト&クレジット、斉藤基史による解説(2015年9月)、歌詞&対訳(訳詞:浜脇大)、図版(モノクロ)3点。原盤解説は掲載されていません。
オリジナルCDはVirgin Classicsより1991年にリリースされました。
本作は、1454年の雉の祝宴という歴史上の特殊な出来事に焦点を絞りつつも、「中世の秋」のブルターニュの音楽のありよう(器楽曲と声楽曲、宗教曲と世俗曲)を概観できる内容になっています。
★★★★★
バンショワ:喜びから、ひとり、離れて
「Seule, esgaree de tout joyeulx plaisir,
喜びから、ひとり、離れて
Douleur seree en quoy me fault languir
わたしは、居座る悲しみに封じ込まれ、
Toute afermee de jamais avoir joye
決して喜びは訪れない。
Sui et seray ne pour riens que je voye;
見えているものよりも遙か遠くにわたしは離れ、
Tant que vivray n'aray que desplaisir.
生きることよりも長くわたしは嘆くことだけ。
Bien aseuree a tout me parvenir
あらゆる不幸に出会うことは約束されているのに、
Desconforter sans jamays departir,
安らぎもなく、逃れることもできず、
Sui demoree quelque part que je soye
たとえ何処にいようとも、悲しみに封じ込まれてしまう。
En ma pensee n'aray nul souvenir
わたしの心には何も浮かばない、
De chose nee que me puist esjoir.
わたしを喜ばせる事々なども。
Avoir duree longuement ne voldroye
この様が続くことなどわたしは望まない、
Sy pri a Dieu que la mort brief m'envoye
ただ神に死を願うのみ、
Car jamais mieux ne me puist advenir.
わたしに訪れる無というものに勝るものはないから。」