幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『マーラー:交響曲第4番』  フォン・シュターデ(Ms)/アバド=ウィーン・フィルハーモニー

マーラー交響曲第4番』 
フォン・シュターデ(Ms)/アバドウィーン・フィルハーモニー 

Mahler - Symphonie No. 4 
Frederica von Stade - Wiener Philharmoniker 
Claudio Abbado 


CD: Deutsche Grammophon 
発売元:ポリドール株式会社 
F35G 50141 (413 454-2) 
¥3,500 

 


グスタフ・マーラー 
GUSTAV MAHLER 
(1860‐1911) 

交響曲 第4番 ト長調 
Symphonie Nr. 4 G-dur 

1.Bedächtig. Nicht eilen 16:05 
2.Im gemächlicher Bewegung. Ohne Hast 9:11 
3.Ruhevoll 23:26 
4.Sehr behaglich 9:03 
(『子供の不思議な角笛』から/ソプラノ・ソロ) 
(Text: aus "Des Knaben Wunderhorn") 


フレデリカ・フォン・シュターデ(メゾ・ソプラノ) 
Frederica von Stade, Mezzosopran 
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 
Wiener Philharmoniker 
ゲルハルト・ヘッツェル(ソロ・ヴァイオリン、第1、2、4楽章) 
Violin-Solo: Gerhart Hetzel 
指揮:クラウディオ・アバド 
Dirigent: Claudio Abbado 


プロデューサー、ディレクター:ライナー・ブロック 
レコーディング・エンジニア:ギュンター・ヘルマンス 
データ:1977年5月20ー25日 ウィーン、ムジークフェラインザール 
解説書表:ヘルベルト・トービアス撮影 


◆第4楽章(『子供の不思議な角笛』から)(渡辺護 訳)より◆

「我らは天上の喜びを味わう。
だから地上のことは避けるのだ。
どんな世の喧騒も、
天上では聴こえない! 
すべてが最上の安息にある。
我らは天使のような生活をし、
しかも愉快にやっている。
我らは踊り、跳び上がり、
はね回り、歌う。」


◆本CDについて◆

ブックレット(全12頁)にトラックリスト&クレジット、黒田恭一による解説、歌詞(第4楽章)対訳(渡辺護)、モノクロ写真図版2点(フレデリカ・フォン・シュターデクラウディオ・アバド)。盤はドイツ製(413 454-2/Made in W. Germany by PolyGram)です。

慢性躁鬱状態マーラー作品のうちでも最も「躁」寄りの多幸感あふれる本作では、潜伏する「鬱」状態も「天上の生活」に達するためのスプリングボードに過ぎないです。最終楽章で描かれる天上(天国)の生活は、ボスやブリューゲルが描いた愚者の楽園めいて、現実逃避的ではありますが、中世の「愚者の饗宴(Feast of Fools)」からアンデルセンのマッチ売りの少女まで、現実逃避こそ「この世の生活」のぬかるみから抜け出すための唯一の手段であり戦略であります。そういう意味では、本CDでの端正な演奏&歌唱はやや物足りないです。もっと祝祭的でもよかったです。とはいうものの、演奏自体はたいへんよいです。

★★★★★