幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『おお、春よ/ルネサンス・イタリア歌曲集』 キャサリン・ボット

『おお、春よ/ルネサンス・イタリア歌曲集』
La Primavera
キャサリン・ボット 
Catherine Bott 
ニュー・ロンドン・コンソート 
New London Consort
指揮: フィリップ・ピケット 
directed by Philip Pickett


CD: ポリグラム株式会社 
オワゾリール NEW ベスト 50 
POCL-5210 (1996年) 
税込¥1,800(税抜価格¥1,748)

 

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帯文: 

ルネサンス末期の技巧的な独唱歌曲をボットが驚異のテクニックで再現」


帯裏文: 

「●16世紀から17世紀にかけて、即ちルネサンスからバロックへの転換期にあたるこの時期のイタリアでは、それまでのポリフォニー中心の声楽作品から、よりドラマチックで技巧的な独唱作品が多く生み出されました。このCDにはモンテヴェルディカッチーニを始めとする当時最も時代の先端を走っていた作曲家の独唱曲が収録されています。
●歌っているのは古楽界きってのヴィルトゥオーゾ・ソプラノ、ボット。彼女の胸のすくようなテクニックと美声でこれらの曲が魅力的に再現されています。」


驚異のソプラノ/キャサリン・ボット
Virtuoso Italian Vocal Music 

1.チプリアーノ・デ・ローレ/ジロラモ・ダラ・カーザ: 私は仕合せ者だというでしょう 2:34 
Cipriani de Role (1515/6-1565)/Girolamo dalla Casa (1543-1601): Beato me direi 
2.エミリオ・デ・カヴァリエリ: 幸福で楽しげな、死ぬべき運命の者たちよ 1:06 
Emilio di Cavalieri (c. 1550-1602): Godi turba mortal
3.アントニオ・アルキレイ: 天のセイレーンの最高の領域から 4:06 
Antonio Archilei (c. 1550-1612): Delle più alte sfere
4.ルッツァスコ・ルッツァスキ: おお、春よ 2:25 
Luzzasco Luzzaschi (c. 1545-1607): O primavera
5.ジュリオ・カッチーニ: 星に対して彼は打ち明けた 2:13 
Giulio Caccini (c. 1545-1618): Sfogava con le stelle
6.ジュリオ・カッチーニ: フィルリは天を眺めて 2:45 
Giulio Caccini: Filli, mirando il cielo
7.ジュリオ・カッチーニ: 泉に、草原に 1:32 
Giulio Caccini: Al fonte, al prato
8.フランチェスコ・ラージ: フェーブスが私に 2:08 
Francesco Rasi (c. 1574-1620): Indarno Febo
9.フランチェスコ・ラージ: ああ、はかない愛よ 2:24 
Francesco Rasi: Ahi, fuggitivo ben 
10.フランチェスカカッチーニ: おお、何と新鮮な驚きだろう 5:41 
Francesca Caccini (1587-1640): O che nuovo stupor
11.マルコ・ダ・ガリアーノ: 羊飼いたちよ、さあ、起き上がりなさい 1:36 
Marco da Gagliano (1582-1643): Pastor levate su
12.ビアジョ・マリーニ: 空の星とともに 4:00 
Biagio Marini (c. 1587-1663): Con le stelle in ciel che mai
13.ビアジョ・マリーニ: 歓喜への誘い 3:02 
Biagio Marini: Invito all'allegrezza
14.ジロラモ・フレスコバルディ: ロマネスカ風アリア 2:54 
Girolamo Frescobaldi (1583-1643): Aria de Romanesca
15.ジロラモ・フレスコバルディ: 十字架の下のマグダラのマリア 3:25 
Girolamo Frescobaldi: Maddalena alla Croce
16.ジロラモ・フレスコバルディ: そよ風がとても愛らしく吹けば 0:58 
Girolamo Frescobaldi: Se l'aura spira
17.クラウディオ・モンテヴェルディ: 喜び踊れ、シオンの娘よ 4:55 
Claudio Monteverdi (1567-1643): Exulta filia Sion
18.クラウディオ・モンテヴェルディ: 主を讃えよ 3:32 
Claudio Monteverdi: Laudate Dominum 
19.ステッファノ・ベルナルディ: ああ、とてもいとしいわが恋人よ 3:00 
Steffano Bernardi (c. 1585-1636): O dulcissima dilecta mea
20.ルイジ・ロッシ: 嫉妬 4:50 
Luigi Rossi (c. 1597-1653): La gelosia
21.ジャコモ・カリッシミ: 死に臨んだメアリー・ステュアートの嘆き 9:21 
Giacomo Carissimi (1605-1674): Il lamento in morte di Maria Stuarda


キャサリン・ボット(ソプラノ) 
Catherine Bott (Soprano)
ニュー・ロンドン・コンソート 
New London Consort 
指揮: フィリップ・ピケット 
directed by Philip Pickett

Philip Pickett: Soprano recorder, Alto recorder
Pavro Beznosiuk: Renaissance fiddle, Lira da braccio
Frances Kelly: Gothic harp, Double-harp
David Roblou: Harpsichord, Organ
Nigel North: 10 course lute, Theorbo, Guitar

Recording
Producer: Peter Wadland
Engineer: John Pellowe
Editor: Sue Parkinson
Location: Forde Abbey, London
Dates: September & October 1985


◆本CD「楽曲解説」(今谷和徳)より◆ 

「16世紀末から17世紀初めにかけての時期は、音楽史の上ではまことに大きな転換期にあたっていた。16世紀の間主流だった音楽は、宗教曲ではミサ曲やモテトゥス、世俗曲ではシャンソンやマドリガーレなおのポリフォニー楽曲であり、各声部がほぼ同等の役割を持ち、通模倣書法と呼ばれる作曲法によって書かれたものがほとんどだった。こうした音楽では、歌われる歌詞は明瞭ではなく、むしろ音の響きを楽しむという要素の方が強かった。宗教曲に関しては、16世紀後半に行なわれたトレント公会議で、このような音楽に批判の声があがったが、世俗曲においても、もっと言葉を重視し、歌詞の内容をよりはっきりと聴かせられる作曲法を生み出そうとする動きが、やはり16世紀の後半からあちこちで見られるようになった。
 そうした動きの中で最も注目すべきものは、イタリアのフィレンツェにおける、カメラータと呼ばれるグループの活動であろう。初めはバルディ邸で、後にはコルシ邸で行なわれたこのグループの会合には、学者や詩人、音楽家たちが集まり、ここで言葉と音楽の関係が論じられて行ったのである。その結果、彼らは従来のポリフォニー書法を捨て、通奏低音で伴奏される独唱歌曲の形を採用するに至る。独唱声部は、歌詞を半ば語るように歌うという新しい様式で演奏されるが、時には旋律を豊かに装飾するという方法がとられた。」
フィレンツェのカメラータのメンバーによる新しい音楽は、やがてエステ家の宮廷とも関係を持ったマントヴァの宮廷音楽家モンテヴェルディの手によって、揺るぎないものとなって行った。」
「このような初期バロックの独唱歌曲は、これまでにもレコードでいくつか聴くことができたが、このCDのように一人の歌い手によってまとまって紹介されるのは、それほど多くはなかった。しかもこのCDは、16世紀末の作品から17世紀中葉の作品に至るまでをとりあげ、初期バロックの独唱歌曲におけるイタリアの重要な作曲家をほとんど網羅している。つまり、この1枚によって、この時期のイタリアの独唱歌曲の流れを概観することができるのである。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全24頁)に「楽曲解説」「アーティスト紹介」(今谷和徳)、歌詞対訳(今谷和徳・訳)。

本作は1988年にオワゾリールより『Virtuoso Italian Vocal Music』のタイトルでLP/CDリリース、1994年に『O primavera: Virtuoso Italian Vocal Music』のタイトルでオワゾリール「Florilegium」シリーズよりCD再発、2007年にタイトルが『Virtuoso Italian Vocal Music』に戻されてオワゾリールより再リリースされています。
日本盤CDは1995年に『驚異のソプラノ』、1996年に本CD『おお、春よ/ルネサンス・イタリア歌曲集』 、2004年に『ルネサンス・イタリア歌曲集』(中世&ルネサンス文庫)としてリリースされています。

★★★★★ 


Marini: Con le stelle in ciel che mai

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