幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『メシアン:《鳥のカタログ》/ニワムシクイ』  アナトール・ウゴルスキ

メシアン:《鳥のカタログ》/ニワムシクイ』 
アナトール・ウゴルスキ 

Olivier Messiaen 
Catalogue d'oiseaux 
La Fauvette des jardins 

Anatol Ugorski 


CD: Deutsche Grammophon/ポリドール株式会社 
POCG-1751/3 (1994年) [3枚組] 
¥7,500(税込)(税抜価格¥7,282) 
Made in Japan 

 

スリーブケース(表)。

別冊ブックレット「鳥のカタログ」より。


帯文: 

「最も官能的で奔放な芳醇さ―」
「国内盤のみ特典
カラー「鳥のカタログ」付き」


帯裏文: 

「「それぞれの曲には様々な鳥の歌声が入っています。各曲は鳥の歌声だけでなく彼らの生活環境、それはまた私たち人間の住む環境でもある大きな自然界を表現しています。メシアンの音楽はナイーヴです。自然の音を聴くためには子供のような素直な耳が必要です。このレコーディングをお聴きになる方には、まず全体の印象をつかむためにメシアン自身による鑑賞の手引き(商品内封入)を読むことをお勧めします。その後はそこに書かれていたことはすべて忘れて無心に音楽をお聴きください」――アナトール・ウゴルスキ


オリヴィエ・メシアン
OLIVIER MESSIAEN 
(1908―1992) 

《鳥のカタログ》 
Catalogue d'oiseaux 

「フランスの田園地帯に生息する鳥たちの歌。個々の鳥たちの歌は、それぞれが生息する自然環境の中で耳にできるが、しばしば同じ地域に住む他の鳥たちの歌といっしょになって聴こえてくる。」

ニワムシクイ 
La Fauvette des jardins 

アナトール・ウゴルスキ(ピアノ) 
ANATOL UGORSKI, piano 


COMPACT DISC 1 [63:23] 

第1巻/1er LIVRE 
1.第1番:キバシガラス 8:42
I. Le Chocard des Alpes (Coracia graculus) 
2.第2番:キガシラコウライウグイス 8:35 
II. Le Loriot (Oriolus oriolus) 
3.第3番:イソヒヨドリ 13:44 
III. Le Merle bleu (Monticola solitarius) 

第2巻/2e LIVRE 
4.第4番:カオグロヒタキ 15:03 
IV. Le Traquet stapazin (Oenanthe hispanica) 

第3巻/3e LIVRE 
5.第5番:モリフクロウ 7:40 
V. La Chouette hulotte (Strix aluco) 
6.第6番:モリヒバリ 8:05 
VI. L'Alouette Lullu (Lullula arborea) 


COMPACT DISC 2 [62:45] 

第4巻/4e LIVRE 
1.第7番:ヨーロッパヨシキリ 29:13 
VII. La Rousserolle effarvatte (Acrocephalus scirpaceus) 

第5巻/5e LIVRE 
2.第8番:ヒメコウテンシ 4:25 
VIII. L'Alouette calandrelle (Calandrella brachydactyla) 
3.第9番:ヨーロッパウグイス 11:45 
IX. La Bouscarle (Cettia cetti) 

第6巻/6e LIVRE 
4.第10番:コシジロイソヒヨドリ 17:00 
X. Le Merle de roche (Monticola saxatilis) 


COMPACT DISC 3 [56:12] 

第7巻/7e LIVRE 
1.第11番:ノスリ 10:04 
XI. La Buse variable (Buteo buteo) 
2.第12番:クロサバクヒタキ 7:37 
XII. Le Traquet rieur (Oenanthe leucura) 
3.第13番:ダイシャクシギ 10:25 
XIII. Le Courlis cendre (Numenius arquata)  10:25 

4.ニワムシクイ 27:42 
La Fauvette des jardins (Sylvia borin) 


Executive Producer: Ewald Markl 
Recording Producer: Werner Mayer 
Tonmeister (Balance Engineers): Helmut Burk, Gernot von Schultzendorff (4/1993) 
Recording Engineers: Klaus Behrens (4/1993), Jost Eberhardt (3/1993), Reinhild Schmidt (7 & 11/1993), Wolf-Dieter Karwatky 
Editing: Mark Buecker 
Recordings: Berlin, Jesus-Christus-Kirche, 3/1993 (nos. 1-4, 9, 13) & 11/1993 (nos. 5, 7, 11); Berlin, Studio Lankwitz, 4/1993 (nos. 6, 8, 10, 12) & 7/1993 (Fauvette) 
Recorded using B &W Loudspeakers 
Cover Design: Holger Matthies, Hamburg 


石田一志「楽曲解説」より:

メシアンブリュッセルの万国博での講演で、(中略)次のように述べている。
 「すべてがだめになり、道を失い、なにひとつ言うべきものをもたないとき、いかなる先人に習えばよいのか。深淵から抜け出るためにいかなるデーモンに呼び掛けるべきなのか。相対立する多くの流派、新旧の様式、矛盾する音楽語法があるのに、絶望している者に信頼を取り戻す人間的な音楽がない。この時にこそ大自然の声がくるべきなのである。……私についていえば、鳥に興味をもってその歌を採譜するためにフランス中を歩いている。バルトークが民謡を求めてハンガリー中を歩いたように。これは大変な仕事である。しかし、それは私に再び音楽家である権利を与えた。技術とリズムと霊感とを鳥の歌によって再発見すること。それが私の歴史であった。」」

メシアンによれば、鳥たちは、われわれの遊星上に存在するおそらく最大の音楽家ということになるのだが、その歌が歌われるにはいくつかの動因があるという。
 つまり鳥の世界ではとりわけ雄が歌い、とりわけ春の発情期に歌うわけだが、その彼らが歌うのは主に3つの場合だという。まず、所有権を主張する場合。これは自分の餌場を宣言する歌で、ときには縄張り争いのために歌合戦が生じるときもあるという。つぎに、雌を誘惑し興奮させるときで、この歌の場合には婚姻パレードなどの儀式を伴っているという。最後が、鳥の歌のなかでもとりわけ美しいとされる、日の出、日没に歌われる光への挨拶の歌だそうだ。」


◆「「これこそ私の曲だ!」―ウゴルスキメシアンを弾く―」より◆

アナトール・ウゴルスキは記憶に基づいて弾くが、メシアンのような音楽を楽譜を見ずに弾くというのは極めて異例である。(中略)ウゴルスキは、《鳥のカタログ》について語るとき、その楽譜のどの小節でも即座に口にすることができるほど、たなごころを指すごとくにそれを完全にそらんじている。」
ウゴルスキが最初にひとりで《鳥のカタログ》を14時間ぶっ続けで弾いたとき、幸福感に満たされたという話の裏には、もうひとつの話がある。彼はその感じを、メシアンの音のコンビネーションが及ぼす、古(いにしえ)の精神物理学的効果として説明している。「私にはずっと幼いころに受けた音楽的な感覚としての古い忘れていた経験があって、それがこの音楽によって突然よみがえり私を驚かせたのです」。そして彼はさらに続けて、彼がレニングラード音楽院の生徒だったころのある日、ハープの練習室に隠れ、長い時間見つけられずにハープの弦、「特にベースの低い音」をつまみながら過ごした時のことについて語る。「私は独りっきりでどんな音色にも触れてみることができました。それらはどこか別の世界から私に直接呼びかけているように思えました。もちろん、私たちおとなにとっては、音というものを説明することは簡単です。それは特定の振動の組み合わせから成っていて、すべての音色にはそれぞれ独自の構造がある。それだけのことです。ところが、小さな子供にとってはまったく違います。彼らにとっては音は魔法です。ただ聴覚で感じるだけのものではないのです。それはなにか超自然的なもの、天上からくるものを呼び覚ますのです」と。」


◆「アナトール・ウゴルスキ、《鳥のカタログ》について語る」より◆

「この音楽は神秘主義と深くかかわっています。芸術における神秘的なもの、瞑想的なものは、その現れ方に少なくとも2通りあります。極端な禁欲からくるものと、最も官能的で奔放な芳醇さからくるものとです。《鳥のカタログ》の場合は後者に当たります。それは官能的で豊かで例を見ないほど華やかです。その音楽は伝統的な意味では模倣的ではありません。模倣では、模倣するものがその対象物になり切ることはできません。しかしメシアンでは音楽が対象物になり切っています。対象物そのものがその音楽の中に取り込まれているのです。小鳥たちだけでなく太陽も山も海も。」


◆本CDについて◆ 

三方背スリーブケースに3枚組用ジュエルケース(24mm厚)&別冊ブックレット「鳥のカタログ」。ジュエルケース内ブックレット(全68頁)にトラックリスト&クレジット、石田一志による「楽曲解説」、図表(作成:石田一志+村上美佐子)、「鳥の索引」(和名/仏名/ラテン名/英名/登場曲)、「「これこそ私の曲だ!」―ウゴルスキメシアンを弾く―」(「この対話は1993年5月13日に行われた」)、「アナトール・ウゴルスキ、《鳥のカタログ》について語る」、「4Dオーディオ・レコーディングとは」、写真図版(モノクロ)6点。別冊ブックレット「《鳥のカタログ》/ニワムシクイ~作曲者によるプログラム・ノート、そして鳥たち~」(本文32頁/Translation: Sho Watanabe/Illustration: Masaki Kawaura/Design: Hideaki Hosoda)にイラスト図版(カラー)14点、写真図版(モノクロ)1点。

鳥好きにおすすめ。

★★★★★ 


キバシガラス