幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

フランソワーズ・クシェイダ  『スカルプ川よりセーヌ河へ』

フランソワーズ・クシェイダ 
『スカルプ川よりセーヌ河へ』 

Françoise Kucheida 
De la Scarpe à la Seine 


CD: Saravah 
発売:株式会社オーマガトキ 
OMCX-1007 (1996年) 
¥2,500(税抜価格¥2,427)
Made in Japan 

 


帯文:

「声そのものに悲劇(ドラマ)を
持つ女性歌手、
フランソワーズ・クシェイダ 
……大野修平」
エディット・ピアフ以来の 
フランスのブルースの復活。
1996年アカデミー・シャルル・クロス 
グランプリ受賞」


1.ひまわり 3:02
TOURNESOL (Prévert / Kosma) 
2.アデライド 4:02 
ADELAÏDE (J. Debronckart) 
3.アレグレス 4:16 
L'ALLÉGRESSE (Barouh / Galliano) 
4.小さい紙片 3:15 
LES PETITS PAPIER (S. Gainsbourg) 
5.マルガレットの唄 3:46 
LA CHANSON DE MARGARET (MacOrlan / Marceau
6.レオン 3:15 
LÉON (F. Kucheida) 
7.ラ・ボエーム 3:32 
LA BOHÈME (Aznavour / Plante) 
8.失われた小さなダンス・パーティ 3:07 
LE PETIT BAL PERDU (Niel / Verlor) 
chanté avec Romain DIDIER 
9.ドーフィン広場の恋人達 7:22 
LES AMANTS DE LA PLACE DAUPHINE (Aragon / Barouh) 
chanté avec Pierre BAROUH 
10.小さなジュピレー 1:25 
LE PETIT JUPILER (Leprest / Didier) 
11.テディーに捧げる歌 3:01 
CHANSON POUR TEDDY (Barouh / Lai) 
12.リエヴァンの画架 2:54 
LE CHEVALET DE LIÉVIN (Leprest / Didier) 
13.マルガレットの唄・サックス編 4:09 
LA CHANSON DE MARGARET - SAX 


ARRANGEMENT: ROMAIN DIDIER. 
PRODUIT PAR PIERRE BAROUH 1995. 
Conception Maquette: Gérard Ségard. 
Photo verso: l'élève de lycée Pablo Picasso (Avion 62) 

Romain DIDIER (clavier) 
Serge EYMARD (guitare) 
Olivier MORET (contrabasse) 
Jack DOMPIERRE (batterie) 
Thierry ROQUES (accordéon) 
Maxime THOLANCE (violon) 
Patrick MONDON (violon) 
Olivier GRIMOIN (alto) 
Philippe NADAL (cello) 
Daniel MILLE (accordeon) 
et Etienne BRUNET (sax) pour "La Bohème"
Patrick SAUSSOIS (guitare) pour "Tournesol" 
Etienne BRUNET pour la 2ème version de "La chanson de Margaret" 


大野修平による解説より◆ 

「今年の2月、ピエール・バルーはこう言いながらこのアルバムを手渡してくれた。「現代のフレエルだよ。」」
「フランソワーズ・クシェイダは、1946年、フランス北部パ・ド・カレ県のマルル・レ・ミーヌに生まれた。若い頃、いくつかの合唱団で歌った経験を持つ。85年から92年にかけて、北部地方で「レクレ・シャンソン」というスペクタクルを巡演した。この時期にシングル盤を4枚発表している。歌への情熱が高まり、リエヴァンにカフェ・テアトル「トロワ・ピエロ」を開く。ロマン・ディディエ、アラン・ルプレストも来演し、同地方のシャンソンの中心地となっている。
 93年5月、モントーバンで行われたフェスティヴァル終了後のパーティは早朝まで続いた。誰もが疲れを覚え始めた頃、ひとりの女性が立って歌いだした。それがフランソワーズ・クシェイダだった。ピエール・バルーはすぐに彼女の才能に魅せられた。この出会いから本アルバムの企画が生まれることになる。
 タイトルにあるスカルプ川はパ・ド・カレ県に源を発し、県庁所在地のアラス市を通り、ベルギーのエスコー川に合流する。セーヌ川はもちろん、パリを貫き英仏海峡に注ぐ、数々のシャンソンに歌われた川。
 伝統を受け継ぎながら、ルプレスト、ディディエ、バルーたちの新曲にも取り組み、シャンソンの表現の可能性を広げている歌手だ。」

「[1] ひまわり」
ジャック・プレヴェールが1951年に発表した詩集「見世物(スペクタクル)」に収められた一篇。50年12月12日にフレール・ジャックにより録音された。その一カ月後、映画「失われた思い出」のなかでイヴ・モンタンによって歌われている。「枯葉」「バルバラ」などプレヴェール作品の多くに曲を書いたジョゼフ・コスマが作曲した。」
「[2] アデライド」
「初めはジュリエット・グレコナナ・ムスクーリに作品を提供していたジャック・ドゥブロンカール(1937-83)。シンガー・ソングライターとして65年にファースト・アルバムを出す。この作品も同年に発表されたもので、フレール・ジャック、イヴェット・ジローが初めに取り上げた。」
「[3] アレグレス」
ピエール・バルーが作詞し、アコーディオニストのリシャール・ガリアノが作曲した作品。」
「[4] 小さな紙片」 
セルジュ・ゲンズブールが作詞・作曲したシャンソンで、1965年、女性歌手レジーヌがレコーディングしている。」
「[5] マルガレットの唄」
「詩人ピエール・マッコルラン(1882~1970)による1951年の作品。(中略)曲をつけたのはアコーディオニストのヴィクトル・マルソー。(中略)この曲はラストでエティエンヌ・ブリュネのサックスをフィーチャーしてもう一度歌われている。」
「[6] レオン」
「フランソワーズ・クシェイダ自身の作詞・作曲によるオリジナル・ナンバー。」
「[7] ラ・ボエーム
「ジャック・プラント作詞、シャルル・アズナヴール作曲の1965年の作品。フランシス・ロペスのオペレッタムッシュー・カルナヴァル」の中で、ジョルジュ・ゲタリーによって歌われた。66年、アズナヴールが歌い、ヒットする。」
「[8] 失われた小さなダンスパーティ」
「《C'etait bien》「それは素晴らしかった」という別題もある。ブールヴィルジュリエット・グレコなどの演唱で知られるシャンソン・作詞はロベール・ニエル、作曲はギャビー・ヴェルロルが手掛けた。」
「[9] ドーフィン広場の恋人達」 
「詩人・小説家ルイ・アラゴン(1897~1983)が1969年に刊行した詩集「詩人たち」所収の一篇に、ピエール・バルーが音楽を書いた。フランソワーズ・クシェイダとピエールとの掛け合いで歌い進められる。」
「[10] 小さなジュピレー」
「サラヴァからCDをリリースしているシンガー・ソングライター、アラン・ルプレストの歌詞に、ロマン・ディディエが曲をつけた。」
「[11] テディに捧げる歌」
「1977年にレコーディングされたピエール・バルーのアルバム「ヴァイキング・バンク」の収録曲。ピエールが作詞し、(中略)フランシス・レイが作曲した。」
「[12] リエヴァンの画架」
「これもアラン・ルプレスト作詞、ロマン・ディディエ作曲によるオリジナル・ナンバー。フランソワーズ・クシェイダが住んでいる北フランスのリエヴァンが舞台に選ばれた。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全8頁)にP. Barouhによる仏文ライナーノーツ、歌詞(#1、3、5、6、10、12のみ)、写真図版(モノクロ)2点。インレイにトラックリスト&クレジット。投げ込み(巻き三つ折りクロス二つ折り)にトラックリスト、大野修平による解説、ピエール・バルーによるライナーノーツの日本語訳、歌詞(全曲)日本語訳(小池はるひ、潮田敦子バルー/但し#10、12は「言葉の音を楽しむ内容ですので対訳ではなく説明にしてあります。」)。

1995年リリースの1st。その後Saravahから3枚のCDが出ています。バルーもいうようにフレール、ダミア、ピアフといった戦前のシャンソンを彷彿とさせる歌唱です。アレンジもアコースティック主体で温故知新です(#1でゲスト参加しているパトリック・ソッソワのジャンゴ・ラインハルトふうアコギがよいです)。バルーは「フレンチ・ブルース(blues Français)」といっていますが、自作曲の#6などはややカントリーふうです。

★★★★☆


Tournesol


Léon