『武満徹:雅楽《秋庭歌》/《旅》/《秋》抄/蝕(エクリプス) 他』
宮内庁式部職楽部/鶴田錦史、横山勝也
Toru Takemitsu: In an Autumn Garden / Voyage / Eclipse etc.
Music Department, Imperial Hoousehold / Tsuruta / Yokoyama
CD: Deutsche Grammophon
制作:ユニバーサル クラシックス&ジャズ
発売・販売元:ユニバーサル ミュージック合同会社
シリーズ:スタンダード・コレクション
UCCG-4709 (2010年)
税込¥1,600(税抜¥1,524)
Made in Japan
帯裏文:
「「世界のタケミツ」と称される武満徹の数多くの作品のなかから、雅楽器のための曲を収録したアルバムです。国立劇場委嘱作品の《秋庭歌》、薩摩琵琶を用いた《旅》のほかに、《秋》の抜粋、《ノヴェンバー・ステップス》から〈十段〉、《ノヴェンバー・ステップス》創作の契機となった《蝕》という3曲の琵琶と尺八のための作品を収録。《秋庭歌》と《旅》は1974年度レコード・アカデミー賞の特別部門日本人作品賞を受賞しています。」
1.雅楽《秋庭歌》(1973) 15:56
In an Autumn Garden for Gagaku orchestra
2.三面の琵琶のための《旅》(1973) 15:19
Voyage for 3 Biwas
3.《秋》抄(1973) 14:14
Exerpt from "Autumn"
4.《ノヴェンバー・ステップス》より十段(1967) 9:09
10th Step (Variation) from "November Steps"
5.蝕[エクリプス](1966) 15:48
Eclipse
宮内庁式部職楽部([1])
Music Department, Imperial Household
笙:多忠麿、薗広晴、薗隆博、岩波滋、豊英秋
篳篥:東儀良夫、東儀兼彦、大窪永夫
龍笛:芝祐靖、東儀勝、安斎省吾
高麗笛:上明彦
琵琶:山田清彦
筝:東儀俊美
鞨鼓:東儀博
太鼓:林広一
鉦鼓:安倍季昌
横山勝也(尺八)([3][4][5])
Katsuya Yokoyama, Shakuhachi
鶴田錦史(琵琶)([2][3][4]「5」)
Kinshi Tsuruta, Biwa
録音:1974年1月([1])、2月([2]) 東京、ポリドール・スタジオ/1975年9月 東京、石橋メモリアル・ホール([3]-[5])
Recording: Tokyo, Polydor Studio No. 1, 1/1974 ([1]), 2/1974 ([2]); Tokyo, Ishibashi Memorial Hall, 9/1975 ([3]-[5])
Recording Producer: Shosuke Akino
Tonmeister (Balance Engineer): Nobuo Sugita ([1],[2]), Hiroshi Senuma ([3]-[5])
◆秋山邦晴による解説より◆
「かれはこの新作雅楽では現在ある雅楽の形態や演奏形式よりも、むしろ古代の雅楽へと想像力をくりひろげているのである。たとえば雅楽は現在のように劇場や室内で演奏されるものではなかった。古くは節会(せちえ)のときなどにみられたように、庭園で奏楽した立楽(たちがく・りつがく)や、自然のなかを歩きながら奏する道楽(みちがく)が普通のことだった。かれはそういった自然の空間のなかにひろがっていく音楽をイメージしたのではないだろうか。」
「楽器編成(舞台中央)高麗笛(こまぶえ)、龍笛、篳篥(ひちりき)、笙、鉦鼓、鞨鼓、太鼓、筝、琵琶。各1名ずつ。
(舞台後方)龍笛(2)、篳篥(2)、笙(4)。
以上17人編成。そしてステージ中央の9人の奏者の後方に配置される8人の奏者は、笙の4人を中央にして、その左右に龍笛、篳篥をひと組ずつに分けて配置する。
作曲者自身は、ステージ中央の一群を「秋庭」、後方に配するグループを「木魂(こだま)群」と称している。つまり「秋庭」で奏される歌を、ちょうどそのエコーを奏するといったかたちで「木魂群」が演奏していくのである(ときには「木魂群」から奏すこともあるが……)。」
「雅楽についてはよくヘテロフォニーという特色が指摘される。同一旋律を多声的、同時的に結合するその異音性についてである。ところが武満はみずから「この作品は時間的なもの、空間的なものにおけるヘテロフォニーを意図した」と語っている。」
「雅楽には楽器どうしの音のぶつかり合うヘテロフォニーや旋律相互のずれといった特色がたしかにある。そして古い時代の雅楽が、先述のような庭園での大きな空間的な配置で奏されていたとしたら、そこには楽器間の空間的なずれや時差が存在したにちがいない。音の混然としたヘテロフォニーとともに、このような音の空間的な時差や多様なうごきに美しさを感じるといった独特な感性を、古代の日本人はもっていたのではあるまいか。そう武満徹は考えるのである。
こういった考えから、これは「秋庭」と「木魂群」のあいだでの空間的、時間的なヘテロフォニーをこころみ、音たちがたちのぼり、複雑に触れあい、交錯しあうそのひろがりのなかの「歌」を作曲したのである。」
◆本CDについて◆
ブックレット(全16頁)にトラックリスト&クレジット、「雅楽《秋庭歌〉とその背景」(木戸敏郎、1974年)、「秋庭歌/旅 解説ノート」(秋山邦晴、1974年)、「《秋》《ノヴェンバー・ステップス》《蝕》について」(武満徹、1977年)、「武満徹とその邦楽器のための3作品」(武田明倫、1977年)。
ポリドールよりリリースされたLP『秋庭歌/旅』(MG 2457) と『《秋》抄/《ノヴェンバー・ステップス》より十段/エクリプス』(MG 1056)を2イン1CD化したものです。
幽霊は夏だけでなく春にも秋にも冬にも出るし、夜中だけでなく真昼にも出ます。春の幽霊は人を狂わせ、冬の幽霊は人を取り殺しますが、枯葉をカサコソと踏みながら訪れる秋の真昼の幽霊はどこかなつかしい他者、もしかしたら過去や未来や並行宇宙の見知らぬ自分自身かもしれないです。
★★★★★
雅楽《秋庭歌》