幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『ストラヴィンスキー:《兵士の物語》』  マルケヴィチ 

ストラヴィンスキー:《兵士の物語》』 
マルケヴィチ 
Stravinsky: Histoire du soldat 
Jean Cocteau / Peter Ustinov / Ensemble de Solistes / Igor Markevitch, etc. 


CD: Decca 
製作:ユニバーサル クラシックス&ジャズ 
発売・販売元:ユニバーサル ミュージック合同会社 
シリーズ:ストラヴィンスキー定盤 
UCCD-2269 (2021年) 
定価:¥1,650(本体¥1,500)
Made in Japan 
SHM-CD 
ルビジウム・クロック・カッティングによるハイ・クオリティ・サウンド

 


帯裏文:

新古典主義への移行を示す重要作《兵士の物語》は「読まれ、演じられ、そして踊られる」と附記されている作品。詩人コクトー、名俳優ユスティノフをはじめとする演技陣、ストラヴィンスキーと深いかかわりをもつマルケヴィチの指揮のもと、トランペットのアンドレら7人の器楽奏者たちの奏でる音楽と一体化した“耳で見る”歴史的名盤で、コクトーが亡くなるちょうど1年前の1962年10月にスイスで録音されました。」


イーゴリ・ストラヴィンスキー 
Igor Stravinsky (1882-1971) 
兵士の物語
Histoire du Soldat 
(台本:シャルル・フェルディナン・ラミューズ)
(Texte: Charles Ferdinand Ramuz) 

第1部 [25:19] 
Part 1 
1.兵士の行進曲 1:45 
Marche du Soldat 
2.気持ちのいい所だ…(兵士) 0:49 
Voilà un joli endroit... (Le soldat) 
3.ヴァイオリンの音楽(第1場の音楽) 2:45 
Musique du violon (Musique de la première scène) 
4.そのヴァイオリンをわしに下さらんか(悪魔) 3:44 
Donnez-moi votre violin (Le diable) 
5.兵士の行進曲 1:41 
Marche du Soldat 
6.ばんざい!(兵士) 2:20 
Bravo! (Le soldat) 
7.田園の音楽(第2場の音楽) 2:25 
Musique champêtre (Musique de la deuxième scène) 
8.ちくしょう! 泥棒め!(兵士) 1:22 
Ah! brigand! (Le soldat) 
9.田園の音楽(第2場の終わりの音楽) 0:34 
Musique champêtre (Musique de la fin du deuxième scène) 
10.兵士は本を読み出した(語り手) 5:06 
Il se mit à lire dans le livre (Le récitant) 
11.田園の音楽(第2場の終わりの音楽) 2:25 
Musique champêtre (Musique de la fin du deuxième scène) 
12.見て下さいな ほうら(悪魔) 1:10 
Regardez, monsieur (Le diable) 
13.ヴァイオリンの音楽(第3場の音楽) 0:57 
Musique du violon (Musique de la troisième scène) 

第2部 [28:33] 
Part 2 
14.兵士の行進曲 1:40 
Marche du Soldat 
15.さて いま ここはよその国(語り手) 1:13 
Un autre pays à présent (Le récitant) 
16.王の行進曲 2:30 
Marche royale 
17.軍楽隊の鳴り物入りでお出迎え(兵士) 4:05 
On a fait marcher la musique (Le soldat) 
18.小音楽会 2:52 
Petit Concert 
19.3つの舞踏曲:タンゴ-ワルツ-ラグタイム 6:42 
Trois danses: Tango-Valse-Ragtime 
20.悪魔の踊り 1:24 
Danse du Diable 
21.小コラール 0:39 
Petit Choral 
22.うまくやったな ここまでは(悪魔の歌)(悪魔) 0:35 
Ça va bien pour le moment (Couplet du diable) (Le diable) 
23.大コラール 4:46 
Grand Choral 
24.悪魔の勝利の行進曲 2:03 
Marche triomphale du Diable 


ジャン・コクトー(語り手)
Jean Cocteau, le récitant 
ピーター・ユスティノフ(悪魔) 
Peter Ustinov, le diable 
ジャン=マリー・フェルテ(兵士) 
Jean-Marie Fertey, le soldat 
アンヌ・トニエッティ(王女) 
Anne Tonietti, la princesse 

アンサンブル・ド・ソリスト
Ensemble de Solistes: 
ユリス・ドゥレクリューズ(クラリネット) 
Ulysse Delécluse, clarinet 
アンリ・エレール(バソン) 
Henri Helaerts, basson 
モーリス・アンドレ(トランペット) 
Maurice André, trumpet 
ローラン・シュノルク(トロンボーン) 
Roland Schnorkh, trombone 
シャルル・ペシエ(パーカッション) 
Charles Peschier, percussion 
マヌーグ・パリキアン(ヴァイオリン) 
Manoug Parikian, violin 
ヨアヒム・グート(コントラバス) 
Joachim Gut, double-bass 

指揮:イーゴリ・マルケヴィチ 
Conducted by Igor Markevitch 

録音:1962年10月4日-8日 スイス 

「おことわり:曲によりお聴き苦しい箇所がございますが、マスター・テープに起因するものです。予めご了承くださいますようお願い致します。」


三浦淳史による解説より◆

ストラヴィンスキー(1882-1971)とシャルル・フェルディナン・ラミューズ(1878-1947)が初めてスイスで会ったのは、1915年のことだった。(中略)ラミューズはスイス・フランス語圏の小説家である。かねてからストラヴィンスキーを敬愛しており、2人の友情は急速に進展した。」
ストラヴィンスキーは、少人数の巡業劇場が上演できるような小規模な劇作品を考え、アファナシエフのロシア民話集の中にある物語をもとにして、ラミューズに台本を執筆してもらうことにした。(中略)ラミューズはロシア語ができないので、ストラヴィンスキーがその内容をフランス語で口述し、ラミューズがフランス語で台本を執筆するというプロセスをとった。こうして、「読まれ、演じられ、そして踊られる」(To be read, played and danced)《兵士の物語》の作曲は1918年、スイスのモルジュにおいて完成された。」


安藤元雄による台本対訳付記より◆

「ラミューズの台本では、舞台上の演技の大半をパントマイムとし、普通なら俳優の語るべき台詞も「語り手」にゆだねている部分が多いが、このアルバムではできるだけそれぞれの役に語らせている。その結果、上演用台本では無言の役だった「王女」も台詞を与えられている。
 さらに、舞台を見ずにアルバムを聞くだけでも物語の筋が追えるように、「語り手」が台本のト書の一部までを朗読している。
 要するに、舞台劇よりもむしろラジオ・ドラマに近い形になるような処理がほどこされているわけで、それがこのアルバムの大きな特色となっている。」


◆本CDについて◆

ブックレット(全28頁)にトラックリスト&クレジット、三浦淳史による解説(©1988)、台本対訳(訳および訳者付記:安藤元雄)。

ジャン・コクトーによるデッサンをあしらったブックレット表紙はオリジナルLP(仏Philips/1963年/ステレオ・ヴァージョン)のジャケットをほぼ忠実に再現していますが、フィリップスのクラシック部門がデッカに統合されたため、左下の「PHILIPS」の文字がDECCAのロゴに差し替えられています。

この作品の教訓は、お金で愛情は買えない、負けるが勝ち、人は今の幸せで満足しなければならない、の三つです。
コクトーストラヴィンスキーは1910年頃にディアギレフの許で出会い、1927年には共作オペラ=オラトリオ「オィディプス王」が初演されていますが、二人の仲は紆余曲折があったようで、ここに収められているのは1962年、コクトーが逝去する1年前の録音ですが、危篤状態にあったコクトーへの励ましのコメントを求められたストラヴィンスキーは辛辣な調子で、コクトーは自分の死さえ宣伝に利用せずにはいられないようだな、と答えたということです。とはいえ1963年にはコクトーを回想して、フランスでできた最初の親友であり、その後もずっと親しい友人であったと語っています。

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