『ベルク: 《ルル》組曲/3つの管弦楽曲/アルテンベルク歌曲集』  マーガレット・プライス/アバド指揮ロンドン交響楽団

ベルク:
《ルル》組曲 
3つの管弦楽曲 
アルテンベルク歌曲集  
マーガレット・プライス(ソプラノ) 
クラウディオ・アバド指揮 ロンドン交響楽団
Berg 
Lulu Suite 
Altenberg Lieder 
Three Pieces for Orchestra 
Margaret Price 
London Symphony Orchestra 
Claudio Abbado  


CD: ポリドール株式会社 
シリーズ: 20世紀のクラシック 20th Century Classics 
POCG-2932 (1993年) 
¥2,200(税込)(税抜価格¥2,136) 

 

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帯裏文: 

「ベルクの作風は新ウィーン楽派の作曲家の中でも特に劇的表現力に優れていたと言われ、また時に過去の音楽伝統への郷愁を残すとも言われる。そうした彼の「オペラ的な」作風は当ディスクに収録した三曲にも示されている。二十世紀最高のオペラと称賛される《ルル》は無論のこと、ベルク唯一の管弦楽作品である作品6や《アルテンベルク歌曲集》においても、その劇的緊張力の強さ、濃密な抒情性は際立っており、ベルク特有の妖しいまでに美しい音楽の源泉となっている。」


アルバン・ベルク 
Alban Berg 
(1855-1935) 


《ルル》組曲 (1929-34) 
―歌劇《ルル》からの交響的小品集 
"Lulu" Suite - Symphonic pieces from the opera "Lulu" 
1.1.ロンド 15:10 
Andante (Introduzione) - Hymne, Sostenuto 
2.2.オスティナート 3:25 
Allegro 
3.3.ルルの歌 2:56 
Comodo 
4.4.変奏曲/主題 3:24 
Moderato (Grandioso - Grazioso - Funèbre - Affettuoso) - Subito a tempo mederato 
5.5.アダージョ 8:55 
Sostenuto - Lento - Grave 

3つの管弦楽曲 作品6 (1914-15)(1929改訂版) 
Three Pieces for Orchestra op.6 (Revised Version of 1929) 
6.1.前奏曲 4:56 
Langsam 
7.2.輪舞 5:48 
Anfangs etwas zögernd - Leicht beschwingt 
8.3.行進曲 9:48 
Massiges Marschtempo 

アルテンベルク歌曲集 作品4 (1912) 
―ペーター・アルテンベルクの絵はがきのテキストによる5つの管弦楽付き歌曲集 
Five Orchestral Songs op.4 to picture-postcard texts by Peter Altenberg 
9.1.心よ、おまえは吹雪のあとではさらに美しく 2:52 
Seele, wie bist du schöner 
10.2.きみは夕立のあとの森を見たか 1:08 
Sahst du nach dem Gewitterregen den Wald 
11.3.きみは宇宙の果てを冥想し 1:37 
Über die Grenzen des All 
12.4.わたしの心に訪れるものはなく 1:32 
Nichts ist gekommen 
13.5.ここには安らぎがある 4:29 
Hier ist Friede 


マーガレット・プライス(ソプラノ) 
Margaret Price, soprano 
ロンドン交響楽団 
London Symphony Orchestra 
指揮: クラウディオ・アバド 
Conductor: Claudio Abbado 

録音: 1970年12月 ロンドン 


プロデューサー: カール・ファウスト 
ディレクター: ライナー・ブロック 
レコーディング・エンジニア: ギュンター・ヘルマンス 
データ: 1970年12月 ロンドン、デンハム 
解説書表: H. マッティース 


◆本CD解説(曽我昭子)より◆ 

「《ルル》組曲は、アルバン・ベルク(1885-1935)の未完のオペラ《ルル》の素材を、ソプラノ・ソロを含む5楽章の交響風小品として抜粋・再構成した作品である。タイトルとしては組曲でとおっているが、いわゆる組曲というより、副題にある「オペラ《ルル》からの交響的小品」あるいはしばしば呼ばれるように「ルル交響曲」が本意であろうと思われる。1928-35年までのベルクの最晩年にとりくまれたオペラ《ルル》は、結局ベルクの死によって第3幕のオーケストレーションが不完全なままに絶筆となった。しかしベルクは、全曲の完成に先立ってオペラの予告版として《ルル》組曲の上演を思いつき、1934年の7月に作曲を完了、演奏時間およそ35分の組曲はその年の11月30日に、ベルリンのウンター・デン・リンデン劇場におけるエーリッヒ・クライバー指揮ベルリン国立管弦楽団の演奏会で初演された。」
「オペラ《ルル》の台本は、劇作家フランク・ヴェーデキント(1864-1918)のふたつの戯曲『地霊』(1893)と『パンドラの箱』(1904)を、ベルク自らが脚色・変質させて1本に縮め、3幕7場に改編したものである。(中略)女主人公ルルは、(中略)本能のおもむくままに生き続け、社会的地位を得る(中略)が、殺人の罪を犯したことから転落の人生が始まり、刑務所を脱獄、最後は場末の街婦となって殺人鬼に殺害されてしまう(中略)。」
「〈オスティナート〉は、『地霊』と『パンドラの箱』の接続部分にあたる箇所で、(中略)ここにはオペラのすべての音列形態が現れ、クライマックスを形成したあとは、中央のピアノの分散和音の上行形後のフェルマータを境に音楽が正確な逆行を始めていく。このシンメトリー(鏡像構造)を楽譜なしで聴きとることはできないが、ルルの運命の上昇(成功)と下降(没落)をこのような形式であらわそうという発想はひじょうに興味深い。
 《ルル》組曲の中心に置かれている〈ルルの歌〉は、自分は思うままに生きてきただけだというルルの根本的信条を歌う技巧的なコロラトゥーラ・アリアである。自由に浮遊するコロラトゥーラ様式が、非現実の夢のような世界を暗示すると同時に、「脈拍のテンポで」という指示のとおり、ルルは「善悪を越えた一片の自然」として生そのものを生きてゆく。」
「終曲の〈アダージョ〉は、(中略)同性愛者ゲシュヴィッツ伯爵令嬢のルルへの哀歌(引用者注:「ルル!――わたしの天使!――もういちど顔を見たい!――すぐそばにいるのよ――いっしょにいてちょうだい――いつまでも!」喜多尾道冬訳)でしめくくられる。」


◆「アルテンベルク歌曲集」歌詞(喜多尾道冬訳)より◆ 

「きみは宇宙の果てを冥想し、見はるかし、
家や雑事を思い煩うことはなかった! 
この世に生きることも、その夢も、すべては不意に意味を失った… 
きみはいまもなお宇宙の果てを冥想し、見はるかしている。」

「わたしの心に訪れるものはなく、これからもないだろう… 
わたしは待ちに待ち、ああ、待ちつづけた! 
日々はひっそりと過ぎ去ってゆくだろう。
 そしてわたしの絹のような灰色がかった金髪は、むなしくわたしの青ざめた顔をなぶっている!」

「ここには安らぎがある。ここでわたしは心ゆくまで泣き明かした! 
ここでわたしの心を焼く、はかり知れぬほど深い苦しみが消える… 
ほら、ここにたたずむものはなく、また訪れるものもない… 
ここに安らぎがある! 雪が音もなく水たまりに 降るここに…」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全12頁)に解説(曽我昭子/橋本久美子)、演奏者紹介、歌詞対訳(訳: 喜多尾道冬)、トラックリスト&クレジット、写真図版(モノクロ)2点。

ペーター・アルテンベルクに関しては、池内紀『道化のような歴史家の肖像』に次のように紹介されています。

「ウィーンの富裕な商人の家に生まれ、大学を中退したあと、のらくら者として親の遺産を食いつぶした。(中略)このペーターは世紀末ウィーンで知られた畸人だった。市中の安ホテルの一室を住居として、『椋鳥通信』(森鴎外)のいうとおり、「夜どほし遊び歩いて、翌日寝て、午後六時に起きて朝食を食べる」。おりおりカフェで文章を書いた。短いが鮮やかな印象で切りとった、とてもすてきな散文だった。」

同じように「善悪を越えた一片の自然」として「思うままに生き」た「妖婦」ルルと「のらくら者」アルテンベルクの人生の明暗を左右したものは「人間社会」に他ならないです。社会の人間関係の濁流に呑み込まれ「成功」し「没落」していったルルと、人間社会など頭から眼中になかったがゆえに「安らぎ」を得ることができたアルテンベルクと。他人事ではないです。

★★★★★ 


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