『魚の目をもつ女神への祈禱/マドライ・ミナクシ寺院の朝の法要』
A Hindu Ceremony at Minaksi-Sundaresvara Temple
JVC ワールド・サウンズ[インド]
CD: ビクター エンタテインメント株式会社
VICG-5348 (1994年)
¥2,500(税込)(税抜価格¥2,427)
帯文:
「先住民ドラビダ族が信仰するミナクシ(魚の目をもつ女神)をまつる
南インド最大の寺院における祈りを、世界ではじめて録音。
ひたすら神々の名前を唱えつづける僧侶の祈禱と伴奏音楽から、
インド音楽のルーツともいえる大衆的な宗教音楽の魂が伝わってくる。」
魚の目をもつ女神への祈禱
マドライ・ミナクシ寺院の朝の法要
1.シヴァ神とヴィシュヌ神を讃える朝の祈り
Morning Prayer in Praise of Lord Shiva and Lord Vishnu 69:38
企画・構成:山城祥二
録音・解説・写真:大橋力
制作ディレクター:藤本草
マスタリング・エンジニア:今泉徳人
ジャケット・デザイン:田中一光
ジャケット編集:由井幸男
1989年6月 インド共和国マドライ ミナクシ寺院にて現地録音
Date of recording: June 1989
Place of recording: Minaksi-Sundaresvara temple, Madurai, India
◆本CD解説(大橋力)より◆
「インド亜大陸の南端に近いタミル・ナード(Tamil Nadu)州の“幻想都市”マドライ(Madurai)。そのシンボルとなっているのが、神秘のミナクシ寺院です。インド先住民ドラヴィダ族の信仰の対象となっている土着のミナクシ女神(魚の目をもつ女神)とその夫であるシヴァ神をまつるこの寺院は、天にそびえるヒンドゥー建築とそれをうめつくすおびただしい彫刻とによって、全インドにその存在をしられているといってよいでしょう。このミナクシ寺院での1時間以上にわたる祈禱の模様を収録したのがこのディスクです。」
「祈禱の内容は、シヴァ神とその化身たちをたたえるタミル語の讃歌と詩、およびヴィシュヌ神をたたえる「ヴェーダ」からのサンスクリット語の詩からなっています。(中略)詠唱をささえるように、両面太鼓のムリダンガム(muridangam)がのりのよいリズムであおり、ちいさなシンバルが金属性のシャープなひびきでビートをきざみ、小型オルガンのハルモニウム(harmonium)がやわらかい和音をかなで、宗教的な陶酔をいやがうえにもたかめていきます。」
「ミナクシ女神(魚の目をもつ女神)には、まぶたのない魚がねむる時も目をつぶらないように、神もまたつねに目をみひらいて世界を監視しているという意味がこめられているようです。平和と幸福を象徴するオウムを肩にのせたこの女神は、本来ドラヴィダ族の信仰する土着の神でしたが、後代、ヒンドゥーのシヴァ神信仰とむすびついていきました。北インドのバラモンたちは無視できない勢力をもつドラヴィダ信仰の神々を正統的ヒンドゥーの体系にとりこむために、これらの土着の神々が実はヒンドゥーの神々と同一の存在であるとしたり、女性神の場合は、有力な男性神(主にシヴァ神)と結婚させるといった神話の再創造をおこないました。ミナクシもまた、シヴァ神(マドライではスンダレーシュバラ神とよばれる)と結婚し、その存在をシヴァの妻パールバティーと同一視され、シヴァ信仰の体系にくみこまれていったのです。」
「このCDでおききいただく祈禱の前半は、シヴァ神とその化身たちをたたえるタミル語の讃歌と詩です。(中略)ミナクシ寺院でうたわれているのは、7世紀ころからあらわれたナーヤナールとよばれる、シヴァ神にたいする絶大的なバクティ(信愛)の感情を吐露する熱烈な宗教詩人たちによる讃歌です。(中略)また、後半は古代バラモン教の聖典「ヴェーダ」におさめられているサンスクリット語の詩で、シヴァ神とならぶヒンドゥー2大神、ヴィシュヌ神をたたえる詩からなっています。」
◆本CDについて◆
ブックレット(全16頁)にトラックリスト&クレジット、解説(大橋力)とその英訳、写真図版(モノクロ)5点。
南インドの宗教音楽。朝っぱらからディープです。寺院の空間性が感じられるような録音になっています。
★★★★★