幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『武満徹:夢の引用~オーケストラのための作品集』  ナッセン

武満徹:夢の引用~オーケストラのための作品集』 
ナッセン 


CD: CD: Deutsche Grammophon 
企画・販売:Tower Records  
制作・発売:ユニバーサル ミュージック合同会社 
シリーズ:Tower Records Vintage Collection +plus Vol. 30 
PROC-2308 (2020年) 
¥1,143(税抜)+税 
Made in Japan 

 

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帯文: 

武満徹生誕90年企画。友人ナッセン指揮の武満第2作となったアルバムが10年振りに復活。武満作品、最後の10年間より7曲をセレクト。」」
ルビジウム・クロック・カッティングによるハイ・クオリティ・サウンド」 


武満徹 
TORU TAKEMITSU 
(1930-1996) 


1.デイ・シグナル(1987) 2:01
Day Signal 
―シグナルズ・フロム・ヘヴンⅠ― 
- Signals from Heaven I - 
Antiphonal Fanfare for Two Brass Groups 


2.夢の引用(1991) 16:12 
Quotation of Dream 
―セイ・シア、テーク・ミー!― 
- Say sea, take me! - 
for Two Pianos and Orchestra 

ポール・クロスリー(ピアノⅠ)  
Paul Crossley (Piano i) 
ピーター・ゼルキン(ピアノⅡ)
Peter Serkin (Piano II) 
(世界初録音) 
(World PRemiere Recording) 


3.ハウ・スロー・ザ・ウィンド(1991) 10:42 
How Slow the Wind 
for Chamber Orchestra 


4.トゥイル・バイ・トワイライト(1988) 12:39 
Twill by Twilight 
モートン・フェルドマンの追憶に― 
- In Memory of Morton Feldman - 
for Large Orchestra 


5.群島S.(1993) 
Archipelago S. 
for 21 Players 

マイケル・コリンズ/マルク・ファン・デ・ヴィール(クラリネット) 
Michael Collins - Mark van de Wiel (Clarinets) 
マイケル・トンプソン(ホルン) 
Michael Thompson (Horn) 
アンドルー・クローレー(トランペット)
Andrew Crowley (Trumpet) 
セバスティアン・ベル(フルート) 
Sebastian Bell (Flute) 
ガレス・ハルス(オーボエ) 
Gareth Hulse (Oboe) 
ジョン・オーフォード(バスーン) 
John Orford (Bassoon) 


6.夢窓(1985) 
Dream/Window 
for Orchestra 

セバスティアン・ベル(フルート) 
Sebastian Bell (Flute) 
ティモシー・ラインズ(クラリネット) 
Timothy Lines (Clarinet) 
レベッカヒルシュ(ヴァイオリンⅠ) 
Rebecca Hirsch (Violin I) 
ジョーン・アサートン(ヴァイオリンⅡ) 
Joan Atherton (Violin II) 
ポール・シルヴァーソーン(ヴィオラ) 
Paul Silverthorne (Viola) 
ティモシー・ジル(チェロ) 
Timothy Gill (Violoncello) 

7.ナイト・シグナル(1987) 
Night Signal 
―シグナルズ・フロム・ヘヴンⅡ― 
- Signals from Heaven II - 
Antiphonal Fanfare for Two Brass Groups 


ロンドン・シンフォニエッタ 
London Sinfonietta 
指揮:オリヴァー・ナッセン 
Conducted by Oliver Knussen 


Recordings: London, Abbey Road Studios, Sstudio One, 12 / 1996 ([4],[5],[7]); Watford, The Colosseum, 12 / 1996 ([1],[3],[6]), 3 / 1997 ([2]) 
Executive Producer: Nigel Boon 
Recording Producers: Tryggvi Tryggvason, Oliver Knussen 
Balance Engineer: Tryggvi Tryggvason 
Assistant Engineers: Andrew Hallifax, Jamie Dunn 
Editing and Post-Production: Marian Freman 
Artist Photos: Malcolm Crowthers (P.8) / Akira Kinoshita (P.3) 


◆本CD解説(楢崎洋子)より◆ 

「ロンドン・シンフォニエッタは、ヴェーベルン、ベルクなどの20世紀音楽の古典を演奏するほか、武満を含めて現代の作曲家に作品を委嘱してレパートリーに加えていく。さらにロンドン・シンフォニエッタは、聴衆に現代曲を聴かせるだけでなく、彼らを創作に参加させる活動も行っている。たとえば、一般の小中学校にロンドン・シンフォニエッタのメンバーが行き、子どもたちに楽器を手渡して助言を与えながら音作りに参加させたり、子どもたちだけでなく、年金生活者、身体障害者、囚人たちに曲を作らせたりする。そこで作られた作品は、作曲家や演奏家にとって刺激になるのだという。」

「デイ・シグナル/ナイト・シグナル」
「《デイ・シグナル》と《ナイト・シグナル》は「2つのアンティフォナルなファンファーレ」の副題をもつ《シグナルズ・フロム・ヘヴン》(1987)を構成する2曲で、いずれも2群に分けられた金管楽器が向き合って位置する。《ナイト・シグナル》には「喜ばしく」と記され、《デイ・シグナル》には「平和に」と記されている。」

「夢の引用」
「《夢の引用》(1991)には、ドビュッシー管弦楽曲《海》が部分的に用いられている。スコアには「ドビュッシーの《海》の〈波の戯れ〉から引用」「ドビュッシーの《海》の〈風と海の対話〉から引用」「ドビュッシーの《海》の〈海上の夜明けから真昼まで〉から引用」と断続的に記されている。それらの引用と武満のオリジナルな部分とが交互しながら曲は進行する。」
「副題の“Say sea, take me !”は、武満が他の作品の作曲にさいしてもインスピレーションを得ているエミリー・ディッキンソンの詩の一節で、武満によれば「私の記憶の底にいつも見え隠れしている詩句」であるという。」

「ハウ・スロー・ザ・ウィンド」
「この作品のタイトルもエミリー・ディッキンソンの詩からとられている。」

「トゥイル・バイ・トワイライト
モートン・フェルドマンの追憶に―」 
「じゅうたんの図柄を丹念に織りなしていく女たちの仕事ぶりに音楽構造の示唆を得たというフェルドマンのテクスチュアが、武満の音のパレットを通していっそう精緻になっているのを感じさせる。(中略)武満によれば「トゥイル」は「あや織り」、「トワイライト」は「日没後の夜へ向かう瞬時の華やぎ」という。」

「群島S.」
「21人の奏者はABCDEの5つのグループに分けられ、Aは舞台の下手、Bは上手、Cは中央に位置し、DとEは、それぞれ客席中央の左右に位置する。《群島S.》(1993)の「S.」とは、複数を表すと同時に、武満が観た群島のイニシャルが、ストックホルム、シアトル、瀬戸内海とSであったことに由来するという。」

「夢窓」
京都信用金庫が創立60周年を迎えたのを記念して委嘱された交響的三部作《京都》の第3曲として1985年に作曲された。(中略)タイトルの「夢」と「窓」は、内と外へ向かうふたつの相反するダイナミズムを表しているという。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全12頁)にトラックリスト&クレジット、楢崎洋子による解説(1999/「既発売CDのブックレットから転載しました。」)、写真図版(モノクロ)2点。

夢は音楽として外在化され、さらに内面に取り込まれて、昼と夜の、生と死の、存在と非在のトワイライトでさらなる夢が織り成され、個から個へと呼び交わされていく。音楽の歴史もまたひとつの長い夢である、そういうことだと思います。

★★★★★ 


夢の引用