幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『バリ/トゥンガナンのスロンディン』

『バリ/トゥンガナンのスロンディン』
Gamêlan Selonding "Guna Winangun", Tenganan
ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー 125


CD: キングレコード株式会社
KICW 85165 (2008年)
定価1,800円(税抜価格1,714円)

 

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1.スカル・ガドゥン(サイー・サディ) Sekar Gadung (saih Sadi) 18:00
2.ルジャン・イレー(サイー・サディ) Rejang Ileh (saih Sadi) 11:22
3.ルジャン・ダウー・トゥカッド(サイー・プジャ・スマラ) Rejang Dauh Tukad (saih Puja Semara) 10:22
4.ルジャン・グチュック(サイー・サディ) Rejang Gucek (saih Sadi) 4:06
5.ニャン・ジャンガン(サイー・プジャ・スマラ) Nyang Jangang (saih Puja Semara) 7:57

ガムラン・スロンディン “グナ・ウィナングン” トゥンガナン
録音: 1990年12月2日 バリ島にて
Recorded Dec. 2, 1990 at Br. Pegerinsingan, Tenganan, Karangasem


Producer: Hoshikawa Kyoji
Engineer: Takanami Hatsuro
Assistant engineer: Naruoka Akira (SCI)
監修: 皆川厚一
Cover Design: mitografico
Cover Photo: スロンディン(古屋均撮影)


帯文:

「バリ島先住民族バリ・アガの住むトゥンガナン村に伝わる
神から与えられた鉄製のガムラン。その神聖な儀礼演奏。」


帯裏:

「バリの先住民族バリ・アガといわれるカランガサム県トゥンガナン村の人たち。彼らのガムラン・スロンディンは、きわめて珍しい鉄製で僅かしか伝承されていません。トゥンガナンにも雷鳴と共に降りてきたという伝説があります。この録音にも、ガムランに呼応するかのように遠雷が効果的に響きます。」
「★1994年発売のKICC-5182と同内容です。」


◆本CD解説(皆川厚一)より◆

「トゥンガナンの住民はバリの先住民族、いわゆるバリ・アガの子孫といわれている。」
「村は、両脇を低い山に挟まれ、南北に細長く発達している。村の周囲は細長い壁で外の世界と隔絶され、僅か数個所に空いた狭い入り口だけが外界との通路になっている。さらに村の内部も縦に三列に仕切られている。一番西にある列は最も純粋なバリ・アガの血を守っている人々が住む場所で、真中と東の列はタブーを侵し、外部の人間と交わった(婚姻関係を結んだ)者が移り住む場所とされている。」
「またこの村は周辺に広大な土地を有しており、先住民として他のバリ人から “準貴族” のような扱いを受けているので、その生活は見かけよりも裕福である。村の北側に広がる肥沃な土地は良質の椰子の産地としてバリ中に有名であり、周辺の村にそれを耕作管理させ、自らは地主のような生活をしている。」
「このように、外界に出て額に汗して働かなくとも、壁の内側でちゃんと生活ができるようになっている。バリ・アガとしての立場を積極的に利用している。このしたたかさこそ、いまなお何世代も続く先住民の先住民たる所以である。」

ガムラン・スロンディンは、唯一鉄で作られた神聖なガムランとされ、バリの東部カランガサム県の山岳地帯の数個所にのみ現存する、極めて珍しいガムランの形態である。特に有名なのはこのトゥンガナンのスロンディンで、その古い鉄の楽器はバタラ・バグス・スロンディンという銘を持っている。これは “偉大にして全能の祖先” という意味で、楽器それ自体が神、あるいは祖先として扱われていることがわかる。」
「太古の昔、トゥンガナンに住む人々は、あるとき天空から轟く雷鳴を聞いた。その音は大きな波となって地上に達した。(中略)そしてその波が去ったあとに、3枚のスロンディンの鍵板が落ちていた。鍵板はその後も天から降ってきて、最終的に40枚の鍵板が集まった。それを数台の楽器に振り分けてアンサンブルにしたのがこのガムランのはじまりであった。
 このガムランはそれが発する音も神格を帯びているという理由で録音することすら禁じられていた。(中略)今回のこのCDの録音は、トゥンガナンのスロンディン・グループの世話役である、パルタ・グナワン氏所有のレプリカを使って行われた。」


◆本CDについて&感想◆

ブックレットに日本語および英語解説、写真図版(モノクロ)2点、「ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー」CDリスト。
旧「ワールド・ミュージック・ライブラリー」シリーズでは『天降る鉄のガムラン~トゥンガナンのスロンディン』(KICC-5182、1994年)としてリリースされていました。

これもたいへんよいです。鉄琴です。キンコンカンコンいってます。チェン=チェン(小型のシンバル)も加わってシャンシャンいってます。鉄琴テクノポップ
一定のリズムを保ちつつ延々と演奏が繰り広げられる点ではサロン(ガムラン・ルアン)とおなじ路線ですが、低音がないので、なにやら浮遊感があります。
天から降って来た鉄琴ならば、いつかまた天へ帰ってゆくのではないでしょうか。
人は魂になって天に帰りますが、鉄は音になって天に帰ってゆくのでしょうか。

★★★★★


Nyang Jangang (Saih Puja Semara)

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