『バリ/シンガパドゥのサロン』
Saron of Singapadu
ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー 80
CD: キングレコード株式会社
KICW 85113 (2008年)
定価1,800円(税抜価格1,714円)
1.リリット~プンゲチェ Lilit-Pengecet 29:38
2.ギナダ(小パンジ) Ginada (Panji Cenik) 19:54
サロン・シンガパドゥ
録音: 1990年12月3日、バリ島ギアニャール県シンガパドゥ村にて
Producer: Hoshikawa Kyoji
Engineer: Takanami Hatsuro
Assistant engineer: Naruoka Akira (SCI)
監修: 皆川厚一
Cover Design: mitografico
Cover Photo: 傘(国立民族学博物館所蔵/富浦隆則撮影)
帯文:
「葬礼の音楽として使用されている、バリ古楽の流れを汲むサロン。
青銅の鍵盤打楽器サロンと木製鍵盤楽器チャルックの絶妙な演奏。」
帯裏:
「サロン(ガムラン・ルアン)は葬礼には欠かせないガムラン。バリには珍しく、インドシナの響きを感じさせる木琴チャルックと青銅のサロンの心地よい音の融合と、サイ・ピトゥ(7音階)の旋律が耳に心地よいのです。ギアニヤール県シンガパドゥは、このガムランを継承する数少ない村の一つ。森の中の柔らかな反響が優しく包み込みます。」
「★1999年発売のKICW-1070と同内容です。」
◆本CD解説(皆川厚一)より◆
「サロンは正式にはガムラン・ルアン Gamelan Luang という名称のガムランである。サロンとは通称であり、それはこのガムランの編成中に含まれる青銅製の鍵盤打楽器の名に由来する。
サロンはガムラン・ガンバン Gambang やガムラン・スロンディン Selonding など同じ古楽の流れを汲むものであるが、編成中の楽器のいくつかが中世以降のガムラン・ゴン・グデ Gong Gede の楽器と構造的に似ており、歴史的には比較的後になってから成立した演奏形態ではないかと考えられる。」
「サロンの音楽は葬儀、特にお通夜から遺体を火葬にする本葬の日までの数日間の深夜から明け方にかけて延々と演奏される。」
「サロンの音色上の特徴は、ガンバン系の木製鍵盤打楽器チャルックの音と青銅製の楽器群の音が混在している点にある。木と青銅の音の混じり合いは、深くしっとりと耳の奥に響き、聴く者の心に深い沈静効果をっもたらす。更にゴングの周期が非常に長く、曲のテンポも緩やかで極端な盛り上がりやブレイクも無く延々と川の流れのように続くので、まるで大河を下る帆船に乗っているような心地良い錯覚をもたらしてくれる。」
◆本CDについて&感想◆
ブックレットに日本語および英語解説、写真図版(モノクロ)4点、「ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー」CDリスト。ブックレット裏表紙に写真図版(カラー)1点。
本作は、旧「ワールド・ミュージック・ライブラリー」では『鎮魂の響き~シンガパドゥのサロン』(KICC-5196、1995年)として、1999年のシリーズでは『バリのサロン――鎮魂の響き』(KICW-1070)としてリリースされていたものと同一内容です。
これはたいへんよいです。一定のリズムを保ちつつ延々と演奏が繰り広げられる点ではゴン・グデとおなじ路線ですが、構成が小さいのでゴン・グデのような重厚感はなく、寝ころがって雲を眺めているような和やかな感じです。雲が刻々と形を変えながら、つねに不定形であるように、「サロン」もなんとなくなつかしげなメロディが断片的にあらわれてきますが、それが線としてつながって発展していくことはないです。西洋音楽的には「間違った」音も、ここではそういうものとして存在を許されていて、こういう音をきいているとじつに何もしたくなくなりますが、「何もしない」ということがどれほど尊いことか、間違ったものを排除しないということがどれほど有難いことか、そして自己顕示しない断片的なメロディというものがどれほど豊かであることか、それはそれとして、これはお通夜の音楽ということですが、こういう音をきいていると、現世への執着も死への恐怖もなく、心穏やかにあの世に行けそうです。
★★★★★
Ginada (Panji Cenik)
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