『瞑想変幻~ジョクジャカルタのガムラン』
The Javanese Gamelan
ワールド・ミュージック・ライブラリー 29
CD: キングレコード株式会社
KICC 5129 (1991年)
税込定価¥2,500(税抜価格¥2,427)
帯文:
「バリのガムランとは対照的なジャワの宮廷ガムラン。
洗練と格調のガムランの中を浮遊する女性ヴォーカルは絹のそよ風。」
帯裏文:
「バリのガムランが青銅の嵐ならば、ジャワの宮廷ガムランは宇宙のシャワー。洗練と格調のガムランの中を浮遊する女性ヴォーカルは絹のそよ風。まさにアブサラ(天女)の午睡である。」
1.パンブコ「プラブ・マタラム」(マタラム王) 10:59
Panbuka "Prabu Mataram"
2.「パラン・カナルポ」~「ギワン・クスモ(花の首飾り)」 17:04
"Parang Kanarpa" ~ "Giwang Kusuma"
3.「マディヨラトゥリ(守りの木)」~クタワン「スリカウルヤン」 28:25
"Madyalatri" ~ Ketawang "Srikawuryan"
4.影絵芝居「スマル王位につく」 6:37
Wayang Kulit Jakarta "Semar Jadi Raja"
5.レオッグ・ポノロゴ 4:32
Reog Ponorogo
6.チレボン仮面舞踊 6:10
Topeng Cirebon
ジョクジャカルタの王宮ガムラン(1-3)
Gamelan of Jogja Kraton
ダラン: ネ・ミット・ビン・ブレンテット(4)
Dalang: Nemit bin Bientet
現地録音(1972年8月=1-3/1971年8月=4-6)
監修: 小泉文夫
Cover Design: 美登英利
Cover Photo: ジャワ・ボナン・バルン(富浦隆則 撮影・国立民族学博物館 蔵)
「原盤に若干のノイズがありますが
作品の完成度が高いため採用しました。」
◆本CD解説より(田村史)◆
「このCDでは中部ジャワの大規模な青銅のガムランを中心に、西ジャワと東ジャワの典型的な合奏を加えて、ガムランの世界の広がりを感じさせてくれる。」
「中部ジャワの宮廷ガムランは、各地に原型的な形をとどめるより小規模の合奏形態を統合洗練して、おそらく18世紀後半ごろまでに作りあげられたものであろう。合奏の規模の大きさ、芸術性の高さでは群を抜いている。」
「この大編成のガムランは、スレンドロとペロッグという全く異なった系統の二つの音階を用いている。青銅楽器は弦楽器のように容易に音高を変えることができないから、それぞれの音階の為に別のセットが用意されている。ともに五音音階であるが、スレンドロは半音を含まない日本の民謡音階や律音階に近いもので、ペロッグは半音を含む沖縄音階によく似たものである。」
「ここに演奏が収められているヨグヤカルタのハマンク・ブオノ王家は16世紀末パヌンバハン・セノパティによって中部ジャワに興されたマタラム王国の流れを汲むものである。マタラムはイスラムを信奉しながらもヒンドゥー的な色合をつよく残し独特のジャワ文化を作りあげた。17世紀を絶頂期とし、この時代に、ガムラン、舞踊、ワヤン・クリ、等の芸術は発展の元ができあがったとされる。」
「1)パンブコ: ラドラン「プラブ・マタラム」(マタラム王)=スレンドロ音階
パンブコとは序曲の意味である。(中略)ラドランは第二曲目にも用いられている曲の構造をあらわす用語である。(中略)曲は男女斉唱の部分と女性の独唱に手拍子の入る部分とが交互し、この王家独特の様式を堪能させてくれる。」
「2)ラドラン「パラン・カナルポ」~ラドラン「ギワン・クスモ(花の首飾り)」=ペロッグ音階
悠々としたテンポと、(中略)クプラのトト、トトトット、という音から踊りの伴奏の曲だと分かる。クプラは厚手の長方形の木箱を木槌で叩くもので、踊りの振りの動きに応じて幾つかのリズム・パターンを使い分ける。(中略)録音は「ギワン・クスモ」の終わるところでF.O.」
「3)マディヨラトゥリ(守りの木)」~クタワン「スリカウルヤン」=スレンドロ音階
この一連の曲は、舞踊やワヤン・クリの伴奏でなくてガムランだけで演奏される時の典型的な様式を聞かせてくれる。」
「4)ワヤン・クリ(影絵芝居)「スマル王位につく」
ワヤン・クリは水牛の皮を浮き彫りにした人形の影を白いスクリーンに映しだし、ガムランの伴奏でインド伝来のマハバラタやラマヤナの物語を語るものである。」
「ここに収録されているのは中央ジャワスタイルのワヤン・クリである。やはり16~17世紀の頃に現在のような上演形式の原型が出来上がったといわれている。」
「5)レオッグ・ポノロゴ
ポノロゴは東ジャワの西寄りに位置する町である。レオッグは日本の獅子舞にも似た一種の道行芸能である。(中略)行列は非常に大きな獅子を被った男がふたり(中略)、獅子をからかう道化がふたり、それに馬の形をしたものを体に結びつけた馬乗りが数人。この馬乗りはクダ・ケパンという。伴奏は8人からなり、つかわれている楽器は、チャルメラのような管楽器スラン・プレット、太鼓、クプラという拍子木、それに何種類ものゴング類。このえんえんと続くゴングの響きと太鼓の激しいリズム、そしてスラン・プレットのけたたましいおとは人々を容易に興奮状態に導き入れる。馬乗りたちはかならずトランス状態になり、火に飛び込んだりガラスを食べたりする。」
「6)トペン・チルボン
トペンは仮面舞踊劇でワヤン・クリと並ぶ重要な芸能である。西ジャワの北海岸の東寄りに位置するチルボンのトペンは特に素晴らしい。トペンは仮面という意味も持つが、踊り手は人々のみている前で素面にトペンをつけ、いくつもつけ替えていろいろなキャラクターを踊りわける。(中略)伴奏のガムランは中部ジャワのものよりずっと小規模で簡素であるが、太鼓の数が多くそれがとても華々しい活躍をする。」
◆本CDについて◆
ブックレットに「楽曲解説」(田村史)、英文解説、写真図版(モノクロ)1点、「ワールド・ミュージック・ライブラリー」CDリスト、地図2点。
1987年にCD「エスニック・サウンド・コレクション 9」『瞑想変幻~ジャワのガムラン』(K30Y 5109)としてリリースされたものの再発です。
#1-3は1978年にLP「世界の民俗音楽シリーズ」『ジャワのガムラン音楽』(GXC-5014)としてリリースされています。
★★★★☆
Reog Ponorogo
nekonomorinekotaro.hatenablog.com
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