幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『バリ/バンデのバラガンジュールとシダンのアンクルン』

『バリ/バンデのバラガンジュールとシダンのアンクルン』
Balaganjur of Pande and Anklung of Sidan
ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー 126


CD: キングレコード株式会社
KICW 85166 (2008年)
定価1,800円(税抜価格1,714円)

 

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〈バラガンジュール〉 〈Balaganjur〉 
1.ジャヤ・サクティ Jaya Sakti 21:20
2.バラガンジュール・クノ Balaganjur Kuno 9:03

ガムラン・グループ “クマラ・ブダヤ” Kumala Budaya
録音: 1990年11月28日、デンパサール市スムルタ村バンジャール・パンデにて

ガムラン・アンクルン〉 〈Gamêlan Angklung〉
3.ムラッ・アンゲロ Merak Angelo 20:25

アンクルン・グループ “アンクルン・シダン” Angklung Sidan
録音: 1990年12月1日、ギアニャール県シダン村にて


Producer: Hoshikawa Kyoji
Engineer: Takanami Hatsuro
Assistant Engineer: Naruoka Akira (SCI)
監修: 皆川厚一
Cover Design: mitografico
Cover Photo: 葬送塔(国立民族学博物館所蔵/富浦隆則撮影)


帯文:

「悪魔を祓う勇壮さと豪華絢爛な響きを持つふたつの儀礼音楽。
バラガンジュールは行列に付き物の演奏。」


帯裏:

「バリ音楽のなかで最も格好がいいものと訊かれれば、迷わずバラガンジュール。ガムラン・マーチの響きはもちろん、振り付けも最高。クマラ・ブダヤはトップ・グループの一つ。バリ最大のイベント、火葬に欠かせない青銅のアンクルン。究極のミニマルとも言えるものです。シダン村はこのジャンルのトップ。」
「★1995年発売のKICC-5197と同内容です。」


◆本CD解説(皆川厚一)より◆

「バラガンジュールは、通称ブレガンジュール Beleganjur ともバレガンジュール Baleganjur とも呼ばれるが、現在ではブレガンジュールの呼び名の方が一般的になっている。」
「ゴン、クンプルの深く骨の髄にしみるような低音と、ボナン、ポンガンの呪文のような旋律ライン。そして高性能機関銃のようにダイナミックで正確なクンダンとチェン=チェンのリズム。それらが一体化して作り出す青銅の雲のような音響がこのバラガンジュールの魅力であろう。」
「ジャヤ・サクティ Jaya Sakti; これはバラガンジュールの新作で、クマラ・ブダヤのオリジナル曲である。」
「バラガンジュール・クノ Balaganjur Kuno; クノとは “古い” という意味で、これは新作ではなく、昔から伝わっている最もオーソドックスなバラガンジュールの形である。」

「アンクルンは本来は竹で作られた楽器である。インドネシアでもスンダ Sunda 地方では今でも竹のアンクルンを使い、フィリピンにも同型の楽器が存在する。だがバリ島ではかなり古くから竹製の楽器から青銅製の楽器への移行が始まっていたらしく、現在ではほとんどの村で青銅製のガムラン・アンクルンが行われている。
 アンクルンはバリ島(特に南部)では葬儀、それも火葬の儀礼の音楽として演奏される。」
「アンクルンの音階はスレンドロ slendro と呼ばれる音階である。その特徴は、音階の各音の間隔がほぼ均等、即ち著しく狭い音程や広い音程が無い音階で完全5度を共和音程とする。特にバリの南部で用いられるアンクルンは4音のスレンドロという特殊な(スレンドロは通常5音音階)音階を用いる。その再低音と最高音との間の音程が完全5度になるように調律されている。」
「ムラッ・アンゲロ Merak Angelo; ムラッは孔雀。アンゲロは意味不明である。アンクルンの曲名には動物や自然現象を詠ったものが非常に多い。曲の構成はルランバタンという様式にのっとっている。これはプンガワッ pengawak、プンギサップ pengisep、プンゲチェ pengecet の三部分から成り、通常プンガワッとプンギサップは何回も繰り返される。」


◆本CDについて&感想◆

「ルランバタン」については本シリーズ『バトゥール寺院のゴングデ』の解説(皆川厚一)に詳しい説明があります。

ブックレットに日本語および英語解説、写真図版(モノクロ)7点、「ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー」CDリスト。ブックレット裏表紙に写真図版(カラー)1点。
本作は旧「ワールド・ミュージック・ライブラリー」では『彩りの祭列~バンデのバラガンジュールとシダンのアンクルン』(KICC 5197、1995年)としてリリースされていました。

民族音楽のCDは単調になりがちですが、本作は三曲とも違った曲調でバラエティに富んでいます。
バラガンジュールの新作は新作だけにゴン・クビャールっぽい表現がみられますが、ミニマル色が濃いです。
オーソドックスな方のバラガンジュールはさらにミニマル色が強いです。クンダン(太鼓)とチェン=チェン(小型シンバル)がアクセントをつけています。このへんはまるで「CAN」みたいでかっこいいです。というより「CAN」がバラガンジュールみたいでかっこいいというべきでしょう。
アンクルンは耳につくような不協和音もなく、たいへんききやすいです。短い曲が何度も繰り返して演奏されています。

★★★★★


Balaganjur of Pande - Balaganjur Kuno

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