幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『バリ/バトゥアンのガンブー』

『バリ/バトゥアンのガンブー』
Gambuh of Batuan
ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー 78


CD: キングレコード株式会社
KICW 85110/1 (2008年) 2枚組
定価2,800円(税抜価格2,667円)

 

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バトゥアンのガンブー「馬殺しの物語」
Gambuh of Batuan "Tebek Jaran"

Disc 1
1.ギノマン~バテル "Ginoman-Batel" 2:38
2.タブ・ガリ "Tabuh Gari" 3:16
3.スバンダル "Subandar" 13:11
4.プラヨン "Playon" 5:20
5.マス・クマンバン "Mas Kumambang" 8:20
6.バパン・グデン "Bapang Gede" 12:18
7.クンジュル "Kunjur" 3:56

Disc 2
1.レンケル "Lengker" 14:12
2.クマラダス "Kumeradas" 12:10
3.バパン・スリシル "Bapang Selisir" 2:00
4.ググンタンガン "Geguntangan" 4:36
5.ビアカラン "Biakalang" 10:12
6.トゥンバン・ウユン "Tembang Uyung" 3:47


演奏: サンガル・タリ・バリ「ニョマン・カクル」
sanggar tari Bali "Nyoman Kakul"
録音: 1990年12月1日、ギアニャール県ブドゥル村、サムアン・ティガ寺院にて
Recorded in Dec. 1, 1990 Pura Samuan Tiga, Bedulu, Gianyar


特別監修: イ・ニョマン・スダルサナ
Special supervisor: I Nyoman Sudarsana
監修: 皆川厚一
Supervisor: Minagawa Koichi

Cover Design: mitografico
Cover Photo: ガンブーのパフォーマンス(古屋均撮影)


帯文:

「バリ芸能の源泉ガンブー! 東ジャワ、モジョパヒト王朝から
受け継ぐ英雄物語「パンジ」に題材をとった舞踊劇。」


帯裏:

「レゴン・クラトン、アルジャを生み出し、数多くのガムラン名曲を提供するバリ古典芸能の大本が舞踊劇ガンブー。1メートルあまりのスリンを中心とするガムラン・ガンブーは他では聴けない響きです。「馬殺しの物語」の段、全篇を演じるのは、本場バトゥアンのサンガル・タリ・バリ「ニョマン・カクル」。」


◆本CD解説(無記名)より◆

「ガンブーはバリ芸能の古典とみなされる舞踊劇である。」
「このガンブーの文学的根本は14~15世紀頃のジャワで成立した英雄遍歴物語「パンジ」に依っている。パンジ物語はヒンドゥ=ジャワ時代のインドネシアを代表する文学であり、イスラム到来以前のマジャパヒト王朝文化の精緻を象徴するものとして、ジャワではイスラム化した後も、舞踊・影絵芝居その他の芸能の源泉として今日まで伝承されている。またイスラム化を拒み、唯一ヒンドゥ=ジャワ文化の後継者となったバリでは、「マラット年代記」という名称でパンジ物語は伝承され、ガンブーをはじめ様々な芸能の題材として今日まで用いられている。」
ガムラン・ガンブーはスリン・ガンブーと呼ばれる全長1メートルあまりの長大な竹笛を主要旋律楽器とするアンサンブルで、それ以外の楽器は太鼓や銅鑼などリズム系の打楽器で構成される。」
「音階は7音のペログ音階を使用する。これは7つの音から5つを音階音として抽出して何種類かの調を形成し、残った2つの音を装飾音として適宜旋律に織り交ぜるという音階システムである。」

「パンジ物語は東ジャワのコリパン国の王子パンジを主人公とする英雄遍歴物語である。彼は結婚直前に謎の失踪をした許嫁、チャンドラ・キラナ姫(またはスカル・タジ姫)を探し求め諸国をさまよい歩き、そこで出会う人々や物事を通じて様々な経験を積んでいくというのが物語の粗筋である。」
「「馬殺しの物語」あらすじ
 ググラン国にはディア・ラトナ・ニングラットという王女がいた。彼女は音楽愛好家で、ガムランの演奏も好んでおこなった。一方、放浪のパンジ王子は有名な音楽家であり、旅先で色々な人から作曲を依頼されたり、ガムランの指導を依頼されたりしていた。」
「ある日パンジは、過日知り合ったググラン国王女ディア・ラトナ・ニングラットのもとへ向かっていた。彼は自作の曲「トゥンバン・サルカット」をその日彼女に教授することを約束していたのだった。たとえ失踪した許嫁を探索中の身であっても、高貴な婦人の依頼は決して断らないパンジであった。(中略)ともかく、彼は家来の将軍と従卒を伴い、ダラン・キ・アンタバンという名の白馬にまたがってググラン国へ出発したのだった。
 ググラン国の城に到着すると、パンジはすぐに王女の部屋に入り(中略)ガムラン演奏を教授し始めた。その間従卒は城の前に白馬をつなぎ主人のつとめが終わるのを待ち続けていた。
 一方、ググラン王の甥であるアル・ミサ・プラバンサ王子は、趣味の賭博を町中で楽しんだ後、城に帰ってきた。すると城の前に見知らぬ白馬がつながれているのを見て驚いた。プラバンサは従卒に馬の持ち主は誰か、と詰問する。威圧的なプラバンサの態度に圧倒された従卒は、いっこうに要領を得ない返答を繰り返すのみである。激怒したプラバンサは刀を抜き、白馬キ・ダラン・アンタバンを殺してしまう。
 あわてた従卒は城の中に入りパンジに事の次第を報告する。驚いたパンジは城の外に飛び出し、プラバンサと口論となる。やがてそれは決闘となり、互いに刀を抜いて斬り結ぶ状態となる。(中略)家来の将軍が駆けつけ、実は二人が異母兄弟であることを告げる。」
「この突然の邂逅に二人は感動し、決闘の件を互いに詫びあった。そしてプラバンサは自分の将軍の中から超能力に長けた者を選び、呪文によって、死んだキ・ダラン・アンタバンを蘇生させる。(中略)二人は仲良く並んでググラン王へ拝謁に向かったのだった。」


◆本CDについて&感想◆

ブックレットに日本語および英語解説、写真図版(モノクロ)4点、「ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー」CDリスト。

1990年に録音された未発表音源です。歌とセリフが入っています。スリンも出ずっぱりの大活躍です。

★★★★★


Lengker

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