幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『壮麗の饗宴/ダルマ・サンティのゴン・クビャール』

『壮麗の饗宴/ダルマ・サンティのゴン・クビャール』
GAMELAN GONG KEBYAR
"Darma Santi" Ensemble of the Academy of Art and Dance, Denpasar
JVC ワールド・サウンズ
バリ/ガムラン・ゴン・クビャール

 

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CD: ビクターエンタテインメント株式会社 
VICG-60356(2000年)
定価1,995円(税抜価格1,900円)


1. ジャヤ・スマラ Jaya Semara 4:03 
2.レゴン・ラッスム Legong Lasem 18:25 
3.グスリ Gesuri 9:23 
4.ガンブ「クサンドラ・ラッスム物語」 Gambuh "Kesandura Lasem" 14:41


演奏: ダルマ・サンティ・ゴン・クビャール
1982年10月5~6日 東京、国立劇場にて録音


企画: 国際交流基金
解説: 田村史
写真: 菅洋
制作ディレクター: 藤本草
録音エンジニア: 寺尾壽章
ジャケット・デザイン: 田中一光
ジャケット編集: 由井幸男


◆本CDについて◆

旧「JVCワールド・サウンズ」シリーズVICG-5265(1993年)の再リリースで、オリジナルはLP『火の島の響き――バリ島ガムランの世界』(ビクター SGS-31、1982年)としてリリースされました。
ブックレットに写真(モノクロ)15点、「ゴン・クビャールの一般的配置図」1点。日本語・英語解説(日本語解説はLPと同一内容。英語解説は日本語解説の抄訳)。
ブックレットには全曲「古典曲」とありますが、解説によると①は1959年、③は1964年にクビャール曲として作曲されたものです。
②は「18~19世紀中頃」に成立した「3人の少女による踊りの伴奏音楽」で、「踊り手はチョドンと呼ばれる少し活発なタイプ1人とレゴンと呼ばれる優雅なタイプ2人の3人に限られており、衣裳を替えることもなく、語り手の言葉とともに、少女は王や王妃や、鳥に変身する」、いわゆるレゴン・クラトンです。これは女声の歌(語り)が入っているのが特徴的です。
以上(①~③)が、国立の「音楽大学の講師陣と大学院の学生たち」によって構成された「ダルマ・サンティ」グループによる「近代的」な「ガムラン・ゴン・クビャール」の演奏です。
④は「ガムラン・ガンブ」です。「ガンブ」は「16世紀の頃に出き上がった古典舞踊劇」で、レゴン・クラトンの元型ですが、その伴奏に用いられるのが「ガムラン・ガンブ」で、この曲のみ「伝統的な方法で伝承を受けてきた村の演奏家たち」からなる「バトゥアンという村のマヤ・サリというガンブのグループ」による「伝統的」な演奏になっています。
解説によると、②と④は「時間が限られているため」「一部をカットした形」(②)「時間の都合でくり返しの部分を省略」した(④)とありますが、「時間の都合」というのはLPレコードの収録時間のことでしょう。全曲演奏したものを後から編集でカットしたのではなく、元々省略バージョンで演奏したものと思われます。
なお、「レゴン・ラッスム」(レゴン・クラトン「ラッサム王の物語」)に関しては、「ガムラン・スマルプグリガン」(スマル・プグリンガン)による全曲演奏が、「JVCワールド・サウンズ」シリーズ『幻視と瞑想のガムラン』(演奏グループは「ティルタ・サリ」)、『耽美と陶酔のガムラン』(演奏グループは「マンダラ・ジャティ」こと「グヌン・ジャティ」)、キングレコード「ワールド・ミュージック・ライブラリー」シリーズ『輝きのスマル・プグリンガン』(演奏グループは「グヌン・ジャティ」)に収録されています。
また、「バトゥアン村のガンブ」に関しては、キングレコード「ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー」シリーズ『バリ/バトゥアンのガンブー』に、「パンジ物語」から「馬殺しの物語」の部分(省略なし)が収録されています。
そういうわけで、短めの典型的なクビャール曲(器楽曲)二曲と、新旧二つのスタイルの舞踊の伴奏曲が(短縮形ではありますが)収められていて、ヴァラエティに富んでいるので、ガムラン入門編としてうってつけなのではないでしょうか。
個人的には、もののけの唸り声を思わせるスリン(笛)とルバーブ(弦楽器)で始まる「ガムラン・ガンブ」④の古風ながらも鬼気迫る演奏に心惹かれました。ルバーブは他の三つのクビャール曲でもフィーチャーされていて、それがこのCDの特徴になっています。

★★★★☆

 

 

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