『Ciconia & His Time』
Little Consort
『チコーニアとアルス・ノーヴァの音楽』
リトル・コンソート
CD: Channel Classics Records B.V., Amsterdam, Holland
CCS 0290 (1990)
Made in W. Germany
輸入・発売: 株式会社ミュージック東京
New Seasons Classics
NSC 133
帯文:
「リトル・コンソート新録音、チコーニアを中心に14世紀伊・仏のアルス・ノーヴァの代表作を……。」
Johannes Ciconia & His Time
1. Una Pnathera (Johannes Ciconia) 6:30
チコーニア: 一匹のヒョウは
2. Benche da voi Donna (Johannes Ciconia) 2:51
チコーニア: たとえあなたのところに
3. Per quella strada (Johannes Ciconia) 5:03
チコーニア: 天の川の近くで
4. Lucida pecorella son (Donato da Firenze) 2:47
ダ・フィレンツェ: つやつやした毛の小羊
5. Gli atti col danzar (Johannes Ciconia) 3:53
チコーニア: 踊りの仕方が
6. Lamento di Tristano (Anonym) 3:44
作者不詳: トリスターノの嘆き
7. Chi nel servir anticho (Johannes Ciconia) 4:20
チコーニア: ぼくが心を寄せる人は
8. Sus une Fontayne (Johannes Ciconia) 7:43
チコーニア: 泉のほとりで
9. Quod lactatur (Johannes Ciconia) 2:27
チコーニア: 自慢するかぎり
10. En remirant (Phillipot de Caserta) 9:30
デ・カセルタ: 思い出しながら
11. Helas, je voy mon cuer (Solage) 7:04
ソラージュ: ああ、ぼくの心は
Total time 56:31
Little Consort
リトル・コンソート
Lucia Meeuwsen: mezzo-soprano
ルシア・メーウセン(メゾ・ソプラノ) #1,3,5,7,8,10,11
Walter van Hauwe: flustes, traverseinne
ワルター・ファン・ハウヴェ(リコーダー、トラヴェルソ)
Toyohiko Satoh: mediaeval lute, lute, cetra, viella
佐藤豊彦(中世リュート、リュート、キタローネ、ガンバ)
Kees Boeke: viella, flustes
ケース・ブッケ(ガンバ、リコーダー)
Production: Channel Classics Studio
Producer: Kees Boeke
Recording engineer & editing: C. Jared Sacks
Arrangements: Kees Boeke & Little Consort
Cover illustration: Alex Roelofs
Design: Mirjam Boelaars
Text: Kees Boeke
German translation: Robert von Zahn
Recording location: Cattedrale SS Pietro e Paolo. Sovana Italy
Recording date: June 1988
録音: 1988年6月 イタリア・ソヴェナ、ピエトロ&パオロ教皇教会
◆本CD帯解説(佐藤豊彦)より◆
「今日では14世紀のイタリー、フランスの音楽は一般的に『アルス・ノーヴァ』の音楽と呼ばれる。これはフィリップ・ド・ヴィトリ(Philippe Vitry 1291年~1361年)によって書かれた『新芸術』或は『新技法』(L’Ars Nova)と言われる著作や、ヨハネス・デ・ムリス(Johannes de Muris)の1319年著なる『音楽の新技法』(Ars novae musicae)などの表題に由来している。
このアルス・ノーヴァの音楽家の代表として、フランスではギョーム・ド・マショー(Guillaume de Machaut 1304年頃~1377年)、イタリーではフランチェスコ・ランディーニ(Francesco Landini 1325年頃~1397年)が有名である。いづれもこの頃始まった多声対位法(ポリフォニー)を用いた技法による作品を残している。このCDに出て来る作曲家ソラージュ(Solage 生没年代不明)の4声体の作品はマショーの作風に非常に近く、ドナート・ダ・フィレンツェ(Donato da Firenze 生没年代不明)の作品はランディーニの作風に近い。チコーニアはリエージュとアヴィニョン時代にあきらかにフランス風アルス・ノーヴァの影響を受け、その後1360年頃イタリーへ移ってからは北イタリー風アルス・ノーヴァの影響を受けている。ことにフィリッポ・デ・カセルタ(Phillipot de Caserta 生没年代不明)とチコーニアはアヴィニョンか北イタリーで出会い、お互いに影響されている。
このCDではチコーニアの宗教的な作品(主としてパドゥア時代に書かれた)は取り上げず、むしろ彼の世俗音楽の中から、フランスで『シャンソン・バラデ』、イタリーで『バラータ』と呼ばれるものを中心とした。中でもチコーニアは『アルス・スプティリオ』(Ars Subtilior)或は『マナード・シャンソン』(Mannered Chanson)と呼ばれ、例えば三声体の作品の各々のパートが異ったリズムで書かれ、しかもしばしば曲の途中でリズムが変更されるといった恐ろしく複雑な技法を得意とした。この技法により、チコーニアをはじめ、フィリッポ・デ・カセルタ、アントネロ・デ・カセルタ、或はマテオ・ダ・ペルージャなどが非常に高度な美しい名曲を残している。
この技法は恐らく当時の社会状況(ペストの大流行や百年戦争)と無関係に生まれたものではなかった。人間にわずかの希望をも持つ余地を残さないこれらの大惨事は、人間の内部にのみその寄り所を求めさせる様になり、より高度なかつ複雑な技法へと向わせる結果となったのであろう。しかも、それらの曲の一つの旋律だけを取り上げて演奏してみるならば、何とも抽象的な、一見何の方向性も主調も持たないメロディーであるのも、その影響の表われであろうか。それが、全声部の同時に演奏される時点で美しく、さほど不思議でもなく響くのも何かを暗示している様であり、失望のどん底からむしろ神に近づこうとする人間の姿を見る様でもあり戦慄を感じさせられる。」
「さらにこれらの曲の歌詞の内容が恐ろしく複雑で、しばしば何を意味しているかわからない。むしろわざとわからなくした(つまり、言いたい事を表だって言えないので言葉の裏に隠した)のではないかと思われるほどである。でもその抽象性はわからないままにしておいても良いのではなかろうか。(中略)それよりその歌詞から生まれる響きが大切であり、それで美しくて充分に楽しめれば良いと思う。」
「ヨーロッパの古い音楽は、しばしば声を楽器とみなし、歌詞をその音色の変化として用いた。(中略)歌が入るととかくそのパートが主体で、他の楽器で演奏されるパートは伴奏である様に思われがちであるが、アルス・ノーヴァの音楽は決してそうではない。だいいちどのパートを歌ってもいいのであるし、どのパートも同じ様に重要なのであって、声が他の古い楽器群と一体をなして美しい響きを作り上げるのである。」
◆本CDについて◆
ブックレット(全28頁)に録音ロケーション・演奏者紹介(英・独語)、「Eugene Deschamps - de Musique」(L'Art de Dictier 1392)(フランス語、英・独訳)、Kees Boeke による解説「About Performing Trecento Music」「Text and Music」(英語原文・独訳)、楽曲コメント(英語)、歌詞(原文のみ)、写真図版(モノクロ)5点。
輸入盤に日本語解説帯(解説は佐藤豊彦)、歌詞訳(美山良夫)カードが添付されています。
★★★★★
Per quella strada
Lamento di Tristano
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