幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『3羽のカラス~レイヴンズクロフトの“うた”』  アントニー・ルーリー/コンソート・オブ・ミュージック

『3羽のカラス~レイヴンズクロフトの“うた”』 
アントニー・ルーリー/コンソート・オブ・ミュージック 

There Were Three Ravens 
THE CONSORT OF MUSICKE 
Songs, rounds and catches by 
THOMAS RAVENSCROFT  


CD: Erato/Warner Classics 
ワーナーミュージック・ジャパン 
シリーズ:Originale: Period Instrumental Series 
WPCS-16221 (2015年) 
定価¥1,400(本体)+税 

 

 

帯文: 

市民社会が形成されてきた17世紀イギリスの時代考証をふまえ、
その時代の大衆歌曲集を再現したユニークなアルバム。
田舎くささを残しつつも、都会の雰囲気を醸し出そうとしている歌唱は聴きもの。」

「CD国内プレス 
日本語解説・歌詞対訳付」


トマス・レイヴンズクロフト 
Thomas Ravenscroft (c1582-c1635) 


1.チープサイドのふれまわり屋の歌 2:46 
The Cryers Song of Cheape-Side 
2.3つの田舎舞曲が1つになるラウンド 2:41 
A Round of Three Country Dances in One 
3.マーチンは従者にいった 1:55 
Martin said to his man 
4.俺たちゃ3人兵士 1:37 
Wee be Souldiers three 
5.あそこに来るのは立派な騎士殿 4:46 
Yonder comes a courteous knight 
6.今までに見た鳥のうち 1:13 
Of all the birds that ever I see 
7.ケントの自作農の求婚歌 3:03 
A wooing Song of a Yeoman of Kents Sonne 
8.ブラウニング・マダム 2:17 
Browning Madame 
9.3匹の盲目のネズミ 2:16 
Three blinde Mice 
10.あしたは町にキツネが来るよ 1:59 
To morrow the Fox will come to towne 
11.5声のヴァイオル・ファンシィ 2:43 
Viol Fancy a5 
12.ファンタジア 第4番 3:25 
Fantasia No. 4 
13.ファンシィ 第1番 3:52 
Fancy No. 1 
14.ベルフィービの戴冠 3:16 
The crowning of Belphebe 
15.カエルとネズミの結婚 2:21 
The Marriage of the Frogge and the Mouse 
16.ただ独り 物思いにふけっていると 3:26 
Musing mine owne selfe all alone 
17.われ嘆きによりて疲れたり 2:45 
Laboravi in gemitu meo 
18.わが仇の喜ぶことなからしめたまえ 3:00 
Ne laeteris inimica mea 
19.3羽のカラス 7:02 
There were three Ravens 
20.ホッジとマルキンの求婚物語 4:39 
The wooing of Hodge & Malkyn 

Total Time  61:14 


コンソート・オブ・ミュージック 
The Consort of Musicke 
アントニー・ルーリー(指揮) 
Anthony Rooley, director 

アンドリュー・キング(テノール・ソロ)[1] 
Andrew King, tenor solo 
アラン・イーウィング(バス・ソロ)[3] 
Alan Ewing, bass solo 
メアリー・ニコルズ(アルト・ソロ)[5][14] 
Mary Nichols, alto solo 
ポール・アグニューテノール・ソロ)[7][20] 
Paul Agnew, tenor solo 
エヴリン・タブ(ソプラノ・ソロ)[10][15][20] 
Evelyn Tubb, soprano solo 
エマ・カークビー(ソプラノ・ソロ)[19] 
Emma Kirkby, soprano solo 


録音:1989年5月 フォード・アビー、チャード、ドーセット、イギリス 
「Originale」シリーズ・マスター制作:杉本一家(JVCマスタリングセンター) 


Editions prepared by Francis Steele, Edward Thompson and Anthony Rooley 

Producer: Anthony Rooley 
Balance engineer: Antony Howell 
Executive producer: Simon Foster 
Recording: Forde Abbey, Chard, Dorset, May 1989 
Cover: Raven, from Belon's *L'Histoire de la nature des oiseaux* (Paris, 1555). 
Design: The Third Man, London 
Photos of the Consort of Musicke by Alex von Koettlitz 


◆高久桂による解説より◆ 

「このCDでは、イングランドの作曲家にして音楽理論家であるトマス・レイヴンズクロフトによって編集・出版された3つの曲集〈パメリア〉(1609)、〈デューテロメリア〉(1609)、〈メリスマータ〉(1611)に集められた曲を中心に、その他レイヴンズクロフトによる曲を併せて収録している。レイヴンズクロフトが出版した上記3つの曲集は当時広く歌われていた俗謡やバラッド、輪唱に劇中歌などを集めたもので、この類の出版物としてはイングランドで最初に出版されたものである。」
「当時のロンドンの町の様子を活写している[1]《チープサイドのふれまわり屋の歌》は導入にぴったりの曲だ。街角では触れ役や呼び売りの商人が声をかけ、あるいは流行のバラッドの旋律に乗せて歌っていたのであろう。そうした様子を音楽で描いた「呼び売りの歌」は当時ちょっとした流行となり、ギボンズやウィールクス、デリングなどの作曲家が作品を残している。[2]《3つの田舎舞曲が1つになるラウンド》は(中略)3つの俗謡が同時に歌われ1つの曲になるという凝った歌。ジョン・リリー作とも言われる劇『少女の変身』では3人の田舎者がそれぞれによく知られた歌を歌いながら出てくる場面があるが、おそらくこのような曲だったと思われる。[3]《マーチンは従者にいった》のリフレインに出てくる「さあ馬鹿はどいつだ」の句はトマス・デッカーによる『年老いたフォルトゥナトゥスの楽しい喜劇』にあるものだという。[4]《俺たちゃ3人兵士》は男声3重唱によって歌われているが、こうした3人組は当時の劇にもしばしば登場するものであった。」
「[19]《3羽のカラス》は〈メリスマータ〉に含まれる曲の中でも古い時代のものであるとされる。ここにあらわれる騎士の恋人の雌鹿への変身はケルト伝説に由来するという。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全24頁)にトラックリスト&クレジット、高久桂による解説、中山真一による演奏者紹介(「コンソート・オブ・ミュージック」「アントニー・ルーリー」)、歌詞&対訳(斉藤さゆみ)、写真図版(モノクロ)1点。ブックレット裏表紙に写真図版(カラー)1点。

#11~13は器楽曲。#17、18はラテン語で歌われています。

★★★★☆


There were three Ravens 


「There were three Ravens sat on a tree, 
3羽のカラスが木の枝に 
Downe adowne hay downe; 
(ダウン、アダウン、ヘイ、ダウン) 
There were three Ravens sat on a tree, 
3羽のカラスが木の枝に 
With adowne; 
(ウィズ、アダウン) 
There were three Ravens sat on a tree, 
3羽のカラスが木の枝に 
They were as blacke as they might be, 
その黒いことに勝るものはない 
With adowne derrie downe. 
(ウィズ、アダウン、デリィ、ダウン) 

The one of them said to his mate, 
1羽が仲間にいうことには 
Where shall we our breakefast take? 
さて、朝めしはどうするか 

Downe in yonder greene field, 
むこうの緑の野原には 
There lies a Knight slain under his shield. 
騎士のしかばね、楯のした 

His hounds they lie downe at his feete, 
忠犬たちが足もとで 
So well they can their Master keepe. 
ご主人さまを見守ると 

His Hawkes they flie so eagerly, 
鷹もしきりに飛びまわり 
There's no fowle dare him come nie. 
鳥たちは近くにも寄りつけず 

Downe there comes a fallow Doe, 
牝鹿(娘)が一頭やって来た 
As great with yong as she might goe. 
大きな腹には子がいる 

She lift up his bloudy hed, 
血だらけのしゃれこうべを抱きあげ 
And kist his wounds that were so red. 
まっ赤な傷に口づけを 

She got him up upon her backe, 
娘は騎士を背にかつぎ 
And carried him to earthen lake. 
土の湖に運んでいく 

She buried him before the prime, 
まだ夜の明けぬ暗いうちに、娘は騎士を葬った 
She was dead her selfe afore even-song time. 
夕べの祈りを待たないうちに、娘自身も息絶えた 

God send every gentleman, 
神はどちらの紳士にも、お恵みをほどこされる 
Such haukes, such hounds and such a Leman.
そんな鷹、犬、恋人を」