幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

Barbara  『à l'Atelier - Bruxelles 1954』 

BARBARA
à l'Atelier  
Bruxelles 1954 


CD: Le Chant du Monde / Harmonia Mundi 
274 1561 (2007) 
Made in Austria 

 

 

BARBARA 
L'Atelier 1954 


1. Frédé (Michel Vaucaire / Daniel White) 
2. Le Chouette quartier (Gaston Rico / Christiane Verger) 
3. Sur la place (Jacques Brel) 
4. L'Œillet blanc (Brigitte Sabouraud) 
5. Moi j'tricote (Michel Emer) 
6. À Saint-Lazare (Aristide Bruant) 
7. L'Avenir est aux autres (Claude Sluys / Andrée Olga) 
8. Viens gosse de gosse (Jean Lenoir) 
9. Les Dames de la poste (Francis Blanche / Alec Siniavine) 
10. Évidemment, bien sûr (Jean Variot / Christiane Verger) 
11. La Promenade (Claude Sluys / Andrée Olga) 
12. Le Couteau (Michel de Neuillac) 
13. Mon pote le gitan (Jacques Verrieres / Marc Heyral ) 
14. Méfie-toi (Georges Renoi) 
15. Madame Arthur (Paul de Kock / Yvette Guilbert) 
16. Romance (Henri Bassis / Joseph Kosma) 


Barbara, voix, piano 


Conception & direction artistique: Karine Le Bail & Philippe Tétart 
Restauration & mastering: Djengo Hartlap 
Prise de son: Jacques Vynckier 

Textes: Marie Aviles & Bernard Merle 
Maquette: Atelier harmonia mundi, Arles 
Recherche iconographique: Karine Le Bail et Philippe Tétart 


◆本CDについて◆

デジパック。ブックレット(全36頁)にトラックリスト&クレジット、Marie Avilesによる解説「Barbara en Belgique」、資料再録「Dans la presse bruxelloise au lendemain du récital de l'Atelier 1er octobre 1954」、関連人物紹介「Jacques Vynckier」「Marcel Hastir et L'Atelier」「Angèle Guller (1920-2000)」、「Quelques mots sur le programme de l'Atelier」、図版28点。文章はフランス語のみです。

シャンソン歌手バルバラのデビュー以前(当時24歳)の歌唱を収めた発掘音源CD『「アトリエ」で――ブリュッセル、1954年』。ピアノ弾き語りです。
ベルギーの画家Marcel Hastirはブリュッセルにあった自身のアトリエを若いミュージシャンたちに表現の場として提供しており、そこで1954年10月1日、当時ベルギーに滞在していたバルバラのリサイタルが開催されることになりました。自分の歌を録音して客観的に聴き直し改善していきたいというバルバラの要望で、アトリエに出入りしていたバルバラの友人Jacques Vynckierがアメリカ製のテープレコーダー「Ekotape Golden-tone 212」を持ち込んで記録したのが本CD収録音源です。翌1955年3月にバルバラはベルギーのデッカからレコード(シングル盤)デビューしています。ブックレットには1950年から1955年にかけてのベルギーでのバルバラの活動が豊富な写真・資料図版と共に詳述されています。
当時バルバラはアリスティード・ブリュアンやイヴェット・ギルベールをはじめ、ピアフ、ダミア、グレコなどのレパートリーを歌っていたようで、ややハイトーンのコケティッシュな歌唱が別人のようですが、特徴的なビブラートはまぎれもなくバルバラ。最後の「ロマンス」はジュリエット・グレコのレパートリーですが、すでに自家薬籠中のものにしていて、本CDをきいていると、人がどのように自らのスタイルを見出していくか、その現場に立ち会っているような気分にさせられる、そういう意味でも貴重な音源で、後年の、満場の拍手に迎えられてのモガドール劇場ライヴ『ゴーギャン』(1990年)での円熟の果ての衰弱と、無名時代の本作の未熟ゆえのポテンシャルの発露とを合わせ鏡にして、一人の傑出したシャントゥーズの等身大の肖像が浮かび上がってくる、そういうことではなかろうか。

★★★★☆

 

Frédé


Romance