『Guillaume de Machaut: Messe de Notre Dame/Le Lai de la Fonteinne/Ma fin est mon commencement』
ギヨーム・ド・マショー
ノートルダム・ミサ
泉のレ、わが終わりはわが始まり
The Hilliard Ensemble
Paul Hillier: director
ヒリヤード・アンサンブル(指揮: ポール・ヒリヤー)
CD: Hyperion Records Limited, London, England
CDA66358 (1989)
Made in England
輸入・発売: 株式会社ミュージック東京
New Seasons Classics
NSC 92
税込定価¥2,781(税抜価格¥2,700)
Guillaume de Machaut (c1300-1377)
ギヨーム・ド・マショー
1-6. Messe de Notre Dame
ノートル・ダム・ミサ
1. Kyrie 5:43
キリエ
2. Gloria 4:10
グローリア
3. Credo 5:38
クレド
4. Sanctus and Benedictus 4:15
サンクトゥス
5. Agnus Dei 3:25
アニュス・デイ
6. Ite Missa est 0:55
イテ・ミサ・エスト
7-18. Le Lai de la Fonteinne 23:20
(The Lay of the Fountain)
泉のレ
19. Rondeau: Ma fin est mon commencement 5:38
(My end is my beginning)
わが終わりはわが始まり
Playing time 53'30
THE HILLIARD ENSEMBLE
ヒリヤード・アンサンブル
David James, Ashley Stafford: countertenors
Rogers Covey-Crump, John Potter, Mark Padmore, Leigh Nixon: tenors
Paul Hillier, Michael George: basses
Paul Hillier: director
指揮: ポール・ヒリヤー
Singers in the *Lai*: MP RC-C JP
Singers in the *Rondeau*: RC-C JP PH
The Mass was recorded on 30, 31 March 1987 at St John-at-Hackney, London
Recording Engineer and Producer: Robert Von Bahr, BIS Records
Digital Editing: Siegbert Ernst, BIS Records
The *Lai* and the *Rondeau* were recorded on 22 Februray 1989 at St Jude's -on-the-Hill, Hampstead, London
Recording Engineer: Antony Howell
Recording Producer: Mark Brown
Design: Terry Shannon
Executive Producers: Cecile Kelly, Edward Perry
The assistance is gratefully acknowledged of Stephen Haynes (pronunciation) and Elizabeth Randall (musical text for the *Lai*).
Front illustration: *The Virgin and Child in Majesty* by Cimabue (c1240-1302?)
◆本CD帯解説(今谷和徳)より◆
「マショーの一生はつねに諸侯の宮廷とともにあり、残された作品も、その大部分が宮廷風の愛を歌った世俗作品である。マショーの作品には、音楽が付されていない詩作品も多数あるが、自ら書いた詩に曲を付けた、トルヴェールの伝統を受け継いだ単旋律世俗歌曲や、多声の世俗歌曲なども数多く含まれている。ところが、大聖堂参事会員として活躍したにもかかわらず、マショーの作品の中には、典礼のために書かれた宗教曲がほとんどない。その例外的な作品が、実はこのCDに収録された名高い〈ノートル・ダム・ミサ曲 Messe de Notre Dame〉なのである。このミサ曲が、いつ、何のために書かれたのかはよくわかっていない。かつて、1364年のシャルル5世のランスにおける戴冠式で演奏されたのではないか、という説が出されたが、歴史的には証明されていない。むしろ、私的な礼拝のために作られたと考えられ、おそらくは、ランスの大聖堂の中のマリア小礼拝堂に捧げられた可能性が高い。
このミサ曲は4声で書かれ、全体は6章からなっている。すなわち、ミサで歌われる聖歌のうち、通常文の〈キリエ〉、〈グローリア〉〈クレド〉、〈サンクトゥス〉、〈アニュス・デイ〉、そして〈イテ・ミサ・エスト〉をそれぞれ多声曲として作曲し、まとめたものである。13世紀までは、このように通常文聖歌をまとめて多声化する習慣はなく、個々の聖歌を単独に、あるいは2つの聖歌を組み合わせて作曲する程度だった。14世紀になると、〈トゥルネのミサ曲〉、〈トゥールーズのミサ曲〉、〈バルセロナのミサ曲〉など、通常文各章をまとめて通作した形の多声ミサ曲が現われるが、これらは、様々な作曲家たちによる個々の聖歌の多声曲を、のちにまとめて通作ミサ曲の形態に整えたものであった。したがって、マショーのこのミサ曲は、一人の作曲家の手によって通常文各章がまとめて多声化された、史上最初の通作ミサ曲ということになる。15世紀以降、こうした通作ミサ曲の形は一般的となり、しかも、〈イテ・ミサ・エスト〉を除く5章によって構成されるようになるが、14世紀には、マショーのこの作品以外に、一人の作曲家が書いた通作ミサ曲はみられず、これはきわめて例外的なものといえよう。」
「さてこのCDには、ほかに、マショーの作品のほとんどを占める世俗歌曲の中から、2つの多声曲が収録されている。はじめの〈泉のレ Le lay de la fontaine〉は、12世紀の終わりに登場し、13世紀を通じて展開されたレという形式で書かれたものだが、レは、セクエンツィアのように多節からなる詩であり、歌曲であった。」
「〈わが終わりはわが始まり Ma fin est mon commencement〉は、ロンドーという定型で書かれた3声の多声歌曲である。マショーは、前述のように、伝統的な宮廷風の愛を歌った世俗歌曲をたくさん書き、ロンドーをはじめ、バラード、ヴィルレなどの定型を確立していったが、中には、この曲のように一種のパズルのような作品もある。この曲の歌詞は、実は曲の歌い方を説明しているのである。真中のテノール声部はそのまま歌われるのだが、上の声部は、テノールの旋律を終わりの方から逆に歌ってゆく。一番下の第3声部は、曲の真中まで歌ったら、その旋律を今度は逆に歌ってゆくのである。(中略)いわば、音楽の上で一種の謎解き遊びが行なわれているわけだが、こうした技巧は、このあと14世紀末から15世紀初頭にかけて活躍した作曲家たちによって盛んに用いられたもので、この作品は、のちのそうした作品群の先駆をなすものといえよう。」
◆本CDについて◆
輸入盤に日本語解説帯(解説:今谷和徳)と「歌詞 訳詞」(全6頁、日本語訳のみ/訳:細川哲士、今谷和徳)付。
原盤ブックレット(全12頁)に解説(英文)、歌詞(原文と Nigel Wilkins による英訳、Paul Hillier による注)。
★★★★☆
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