『シナウィ／韓国シャーマン・ミュージックの極致』

『シナウィ／韓国シャーマン・ミュージックの極致』
The Folkloric Instrumental Traditions [I]
Sinawi and Sanjo
JVC ワールド・サウンズ［韓国］　

CD:　ビクター音楽産業株式会社　
VICG-5020　（1990年）　
税込定価￥2,500（税抜価格￥2,427）　

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1．シナウィ　Sinawi　20：24　
2．奚琴散調（ヘーグムサンヂョウ）　Haegum Sanjo　11：23　
3．牙箏散調（アジェンサンヂョウ）　Ajaeng Sanjo　27：10　

杖鼓（チャンゴ） Changgo：　朴鍾〓（漢字：ヒ＋咼） Park Jong Sul　
牙箏（アジェン） Ajaeng：　朴鍾善 Park Jong Sun　
大笒（テーグム） Taegum：　金〓（漢字：竹＋方）炫 Kim Bang Hyun　
奚琴（ヘーグム） Haegum：　金燦燮 Kim Chan Sub 〈シナウィのみ〉　
觱篥（ピリ） Piri：　韓世鉉 Han Se Hyon
チン Ching：　全貞敏 Jung Jung Min
奚琴 Haegum：　洪玉美 Hong Ok Mi 〈散調のみ〉　

プロデューサー・解説：　藤本寿一　
制作ディレクター：　藤本草　
録音エンジニア：　伊藤俊之　
ジャケット・デザイン：　田中一光　
写真：　椎橋晟　
ジャケット編集：　由井幸男　
1988年6月28　ビクター青山スタジオ　DAS900デジタル録音　

◆本CD解説（藤本寿一）より◆

「このCDには、韓国で通称「南道地方」と呼ばれる全羅道を中心とした地域で生まれ育った音楽で、こんにちの韓国を代表する民俗楽である「シナウィ」と「散調」が収められている。全羅道は朝鮮半島の中でも独特の民俗風習を伝承し、文化的に強烈な個性を持つ地域であるが、高麗時代以来、政治的には故なき迫害を受けてきた歴史をもち、その影響は今日でも中央と鋭く対立する政治的風土を作り上げている。音楽的には、韓国の語り物音楽として名高い「パンソリ」や、独奏器楽曲として高度な様式にまで高められた「散調」、その他、数多くの音楽や舞踊を生んだ土地として、韓国民俗楽の揺籃の地とも言える場所である。
　このCDの第1曲目にある「シナウィ」も、南道地方の生んだ魅力的な古典器楽アンサンブルの一つである。シナウィは、もともと巫楽である。神あるいは霊魂を呼び招き、現世の人間との対話を仲介するのが、シャーマンである巫女（韓国では巫堂（ムーダン）とよぶ）の役割であり、神との対話をおこなうため、踊りによってトランス状態に入る。シナウィは、このような場面での踊りの伴奏音楽として発達してきた。初期のシナウィは、管楽器と打楽器のみの小人数で演奏されたといわれているが、今日鑑賞用として演奏されるときは、このCDにあるように弦楽器も加わったフル編成で演奏されるのが普通である。」
「シナウィは他の民俗楽と同様、即興で演奏されるもので楽譜などは存在しない。楽士たちは前もって簡単にリズムに関する打合せを済ませると直ちに演奏に入る。これはもちろん彼らが南道音楽という共通の音楽的背景をもち、共有の語法に通じているからこそ実現できることであるが、現在ではこのような伝統の中で育った人は数少くなりつつある。
　ここに収録した演奏家たちは、アルム・パフォーミング・アーツの招きにより、サントリー・ホールおよびFM東京ホールの公演のために来日したメンバーで、幸運なことに、このビクター・スタジオでの即興演奏では、今回のどの公演でも聴けなかった見事なアンサンブルが実現した。」
「シナウィに用いられる旋法は、ミ・ラ・シの3音に基づく界面調（ケメンジョ）である。これらの音は幅広く揺れるヴィブラートを伴った音であったり、ある音から急に降りてくる音であったりすることによって、豊かな陰影と無限の色彩感を旋律に与えている。普通、長短（チャンダン）（リズム型）は、チュンモやチュンジュンモリ、ヒモリなどが使われるが、このCDに収録された即興演奏には、クッコリとチャジンモリが現われている。各楽器は一見アナーキーに動き廻っているように見えるが、杖鼓の打ち出す長短によって全体は統率されている。またこの演奏では各楽器が交替で少しずつソロをするように打ち合せがされている。」

◆本CDについて◆　

ブックレット（全12頁）に日本語および英語解説、写真図版（モノクロ）11点、「JVCワールド・サウンズ」CDリスト。

★★★★★　

Sinawi

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