『琥珀色の夜~バグダッドのウード』
Iraqi Music / Ud Taqsim and Pasta
ワールド・ミュージック・ライブラリー 3
CD: キングレコード株式会社
KICC 5103 (1991年)
税込定価¥2,500(税抜価格¥2,427)
●ウード独奏 Ud Solo
1.セガ旋法のタクシーム Taqsim on Segah-mode 9:05
2.ラースト旋法のタクシーム Taqsim on Rast-mode 6:18
3.クルド旋法のタクシーム Taqsim on Kurd-mode 8:25
●パスタ Pasta
4.幸福の盃 A Glass of Happiness 6:10
5.酒で心を浄めなさい Wash Your Heart with Wine 5:43
6.わが心のうずき My Heart Promised Me . . . 2:17
7.琥珀色の乙女 A Girl with Brown Complexion 5:05
サフワット・ムハンマド・アリー: ウード
Safwat Mohammed Ali: Ud
アハメッド・ニーマ・カーメル: 歌(4-7)
Ahmed Nima Kamel: Voice
Recorded Aug. 10, 1981 at the No. 2 Studio, King Records, Tokyo.
Producer: Katsuhiko Nishida
Engineer: Hatsuro Takanami
監修: 小泉文夫/小柴はるみ
Cover Design: 美登英利
Cover Photo: 筒形容器甲象牙製飾板(出光美術館提供)
◆本CD解説(小泉文夫)より◆
「中国の琵琶にくらべて、アラビアのウードは、形が似ているにもかかわらず、その軽さに驚く。それは、中国や日本の琵琶が一木のくりぬきを胴にしているので、木の厚みのために重くならざるを得ない。」
「アラビアでは風土が乾燥しているため大きな樹が少なく、木材が不足しているので、一木で大きな楽器を作ることなど無理である。装飾的な寄木細工は、そうした必要上から生まれたが、楽器の発達という面では、かえって大きな意義があったと思う。
一木から彫りぬくのではなく、薄く細長い板を貼り合わせるので、胴の背を丸くすればかなり深く大きな容積をもつ胴を作ることが出来る。その結果、低音のよく響くまろやかな深みのある響きが得られる。」
「それにもう1つ。他のリュート属と違って、ウードには棹にフレットがない。(中略)ウードにフレットがないのは、アラビア音楽特有の微小音程を用いるからで、ほぼ4分の1音ごとにフレットをつけていたら、棹の上はフレットだらけになってしまうからだ。それに、この4分の1音ないし4分の3音と称するものは、実は厳密な音程ではなく、中間音程(中立音程)といって、長でも短でもない中間の不安定な音である。」
「実はこの中間音程がウード音楽(ひろくは西アジア音楽)の魅力のもう1つの秘密なのである。特にウードの第1曲《セガ旋法のタクシーム》のように、問題の中3度が終止音になるような旋法(ないし音階、これをマカームとよぶ)では、旋律の終りが、各フレーズごとに次第に消えるように弱まり、最後はこの中3度で終止する。まことに不安定で絶妙な表情がある。」
「アラビア音楽を代表するもう1つの種目はパスタである。パスタ(トルコではベステ)は、ひろく声楽曲一般をさす場合もあり、さらにひろく音楽作品を意味することもあるが、イラクのバグダードの伝統としては、声楽の独唱による一定のマカームとイーカー(リズム型)に基づいた歌曲をいう。」
◆本CDについて◆
ブックレットに「イラクの音楽――ウードと歌」(小泉文夫)、「楽曲解説」(小柴はるみ)、英文解説、写真図版(モノクロ)2点、譜例1点、「ワールド・ミュージック・ライブラリー」CDリスト、地図2点。歌詞は「楽曲解説」に大意のみ掲載されています。
1982年にLP『イラクの音楽/ウードと歌』(「民族音楽ライブラリー/シルクロード音楽の旅 2」シリーズ)(K20C-5104)としてリリースされ、1988年に同タイトルでCD化(「Ethnic Sound Collection 30」)(K30Y-5130)、1991年に本CD、1999年に『バグダッドのウード―琥珀色の夜』(ワールド・ミュージック・ライブラリー 18)(KICW 1018)、2008年に本作と『砂漠のアラベスク~アラビアの音楽』(KICC 5104)がカップリングされて2枚組CD『イラクの音楽』(ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー 3)(KICW 85003/4)として再リリースされています。
★★★★☆
セガ旋法のタクシーム
琥珀色の乙女