『ウシュクダラ~トルコの吟遊詩人』
Turkish Folk Songs and Instrumental Music
ワールド・ミュージック・ライブラリー 2
CD: キングレコード株式会社
KICC 5102 (1991年)
税込定価¥2,500(税抜価格¥2,427)
1.ウシュクダラ Üsküdara (イスタンブール) 2:59
2.バーラマ独奏 Bağlama Solo 12:46
3.「鶴はさびしく空を飛ぶ」 "Garip Turnlar (Foreign Cranes)" (クルシェヒル地方) 6:02
4.チェチェンの娘 The Girl of the Çeçen Tribe (トラブゾン地方) 2:44
5.ジュラ独奏 Cura Solo 3:52
6.異国のうぐいす Garip Bülbül (A Foreign Nightingale) (ギレスン地方) 3:27
7.桜が咲く Cherry Blossom (リゼ地方) 1:32
8.メイとダウル Mey and Davul 3:36
9.高原から来た娘 A Girl from the Highland (レシャディエの町) 2:14
10.アゼルバイジャン民謡「私の心~さようなら」 Azerbaijan's Folksong "My Heart - Good-Bye" 5:41
11.タールとダウル Tar and Davul 4:01
12.ベシリ・ホイラート Beṣili Hoyrat 3:35
13.ディワンとホイラート Divan and Hoyrat 5:04
14.ズルナとダウル Zurna and Davul 4:26
15.カヴァールとダウル Kaval and Davul 3:51
16.アレビー派の踊り「セマー」 "Sema", a Mystic Dance of Ali Sect (エルズルム地方) 5:30
ウミット・トクジャン: 歌(1,3,4,6,7)
Ümit Takcan: Vocal
メフメット・オズベック: 歌(10,12,13)、ジュラ(6,10,13)、ダウル(4,8,9,11,14,15)
Mehmet Özbek: Vocal, Cura, Davul
アリフ・サー: バーラマ(2,3,4,6,9,10,12,13,16)、カバック・ケマネ(7,10,13)、タール(10,11,13)、ダウル(10,13)、ジュラ(5)、メイ(8)、ズルナ(14)、カヴァール(15)、歌(16)
Alif Sağ: Bağlama, Kabak Kemane, Tar, Davul, Cura, Mey, Zurna, Kaval, Vocal
録音: 1980年9月16日、キングレコード第2スタジオ
Recorded Sept. 16, 1980 at the #2 Studio, King Record, Tokyo
Supervisor: Fumio Koizumi, Harumi Koshiba
Producer: Katsuhiko Nishida
Engineer: Hatsuro Takanami
Cover Design: 美登英利
Cover Photo: スタンダード頭部(イスタンブル考古学博物館蔵・中近東文化センター提供)
◆本CD解説(小柴はるみ)より◆
「各地方でたくさんの民謡が今も生き続けているが、それらは2つの対照的な様式に分けてとらえられている。つまりウズン・ハワ Uzun Hava (長い歌)とクルク・ハワ Kirik Hava (割りくだかれた歌)。前者は、拍子にとらわれず自由リズムで、長く音を引き伸ばし、のどをふるわせこぶしやゆり(引用者注:「こぶし」「ゆり」に傍点)で飾り、概して広い音域の旋律を1人でうたうもので、日本の江差追分のようなメリスマ的歌である。後者は、厳格な拍子に基づく短い旋律で、音域は広くなく装飾音も少なく大勢でうたい、そのほとんどは踊り歌(オユン・ハワ Oyun Hava)であるようなシラビックな歌である。
歌をこうした2つの表現様式で分ける考え方は、小泉文夫先生がかつて日本の民謡の目立ったタイプとして追分様式と八木節様式を考えられ発表されたが、日本と関連するばかりでなく、朝鮮半島、モンゴルを経てハンガリーに至る特にシルクロードに深く係わりを持つ民族にもみられるものである。」
「●拍子について
短い旋律が何度も繰り返されるクルク・ハワ様式の民謡を豊かに彩どるのは、多種類の拍子である。2拍子・4拍子はどの地域にもあるが、とくに5、7、8、9、10拍子といった付加的リズムが厳格に守られうたわれる。それらは、2の単位とその1.5倍である3の単位の組合わせからなり、9拍子だと(2+2+2+3)のように、どこかが0.5倍だけ伸ばされる。あるいは、(3+2+3)の8拍子は、1部分だけ0.5倍拍が短縮されたことになり、そこでちょっとつまずくような拍節感を与える。そのためとくに、アクサック aksak という名で呼ばれるが、バルカン半島一帯にもこうした不均衡なリズムが分布している。トルコではアクサック(“不具者”の意)はとくに9拍子を指す。原則として踊り歌や踊りの伴奏旋律の中で多くみられ、体の動きや足のステップと関連が深いと考えられる。」
「このディスクは1980年9月に、民音シルクロード音楽会の番外編「遠き旅人たちの歌とロマン」に出演のため来日した、トルコの若手で最も優れた音楽家3人によるものである。(中略)たった3人の演奏家だが、この録音でもわかる通り、実に多面的なトルコの民俗音楽を紹介してくれた。イスタンブールを中心に活躍する彼らからは、民謡の土くささとともに、大都会での洗練さも加えたバランスのとれた表現が聞かれよう。」
「1)ウシュクダラ(イスタンブール Istanbul)
アメリカでヒットしたこの歌を、以前江利チエミがうたってはやらせ、ある年齢以上の日本人が知る唯一のトルコの歌である。日本語の歌詞は、アラビアンナイトを思わせるエキゾチックな夢の世界だったが、元歌の意味はむしろ散文的である。ボスポラス海峡をはさんでイスタンブールのアジア側にあるウスキュダルの町は、アナトリアの入口とはいえかつては一寒村にすぎなかった。
現地では、この歌は純粋な民謡というより、大勢が知るはやり歌のように考えられているようだ。歌詞中のキャーティプとは本来書記の意で、恋人を指すが、もともとこの歌の題名は「私のキャーティプ」である。
(歌詞)
ウシュクダルに行ったら 雨だった、
私の恋人の着る長い裾は泥だらけ、
彼は 起きたばかりなのか 目はぼんやりしてる。」
「ウシュクダルに行ったら
1枚のハンカチを見つけた、
ハンカチの中に ロクム菓子をつつんだ、
私が彼を探したらすぐ近くにいた。」
◆本CDについて◆
ブックレットに「解説」(小柴はるみ)、英文解説、写真図版(モノクロ)6点、「図」2点、楽譜(「ウシュクダラ」)1点、「ワールド・ミュージック・ライブラリー」CDリスト、地図2点。歌詞は「解説」中「曲目について」で大意のみ掲載されています。
1988年リリースのCD『黒海吟遊~トルコ・音紀行』(Ethnic Sound Collection 17)の再発で、1985年リリースのLP「遠き旅人たちの歌とロマン」シリーズの二枚『トルコの民謡』『トルコの民俗楽器』から選曲したものです。
★★★★☆
Üsküdara
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