幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『ロシアの歌/ポクロフスキー・アンサンブル』 

『ロシアの歌/ポクロフスキー・アンサンブル』 
Russian Chorus Music: 
Pokrovsky Ensemble 

ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー 46   
ヨーロッパ/ロシア 


CD: キングレコード株式会社 
KICW 85065 (2008年)  
定価¥1,800(税抜価格¥1,714)

 

f:id:nekonomorinekotaro:20220212191419p:plain


帯文: 

「ロシアの農民音楽の伝統をわかりやすく現代に蘇らせるために結成されたフォークロア・ムーヴメントの先駆グループの日本公演ライブ。」


帯裏文: 

「歌を習うのではなく、相手の社会に入り込み、一体化することで【歌】になりきるというのがポクロフスキー・アンサンブル。コサックからロシア古儀式派、正教聖歌。西、中南部、シベリア民謡も。P・ゲイブルエル、P・ウィンターまで魅了するワールド・ミュージック系合唱団の最高峰です。白熱の東京ライヴ。」


ドン・コサックの音楽 
1.カムィシンカ川~わが緑の草よ 3:12 
2.ボルガ河を下って 3:01 
3.海に乗り出す魔法の船(叙事詩イリヤー・ムーロメツの歌」) 2:57 
4.はやぶさ 3:04 
5.森から 1:33 
6.馬上の友 1:27 
7.母なるロシア 2:47 
8.パラーニャ 1:55 

ブリヤンスク地方(西ロシア)の音楽 
9.弓矢 2:05 
10.女性(演奏による)葦笛と娘達 1:48 
11.カストラマ 3:58 
12.小枝 2:05 
13.笛と鎌 1:05 
14.大雨 2:32 

ネクラーソフ派コサックの音楽 
15.矢は放たれた 2:45 
16.海に乗り出す魔法の船(叙事詩イリヤー・ムーロメツの歌」) 1:29 
17.山々の上に太陽よ昇れ(歴史歌謡「ステンカ・ラージンの歌」より) 1:46 
18.ネクラーソフ派コサックの移住を歌う(「王の御旗」より) 1:23 

中南部ロシアの音楽 
19.カーリューキー 2:30 
20.娘たちは行ってしまった~過ぎ去りし良き日々 3:50 
21.聞け、老いたる者たち 0:52 

シベリアの音楽 
22.雁が飛ぶ 3:05 
23.老人たち 0:43 

ロシア古儀式派(旧教徒)と
ロシアのキリスト教各宗派の音楽 
24.主の祈り(ドゥホボル派) 2:17 
25.人生(シベリアの古いロシアの言い伝え) 3:02 
26.ヨセフの嘆き(古儀式派(ネクラーソフ派コサック)伝統歌唱) 1:53
27.聖ボリスと聖グレープの伝説(シベリア古儀式派) 2:07 
28.放蕩息子の物語(ロシア古儀式派) 3:45 
29.詩篇 第104番(モロカン派) 4:03 

ロシア正教の音楽 
30.聖なる主よ 4:56 
31.我らがマリア様 0:46 
32.ハレルヤ 1:36 


演奏:ポクロフスキー・アンサンブル 
マリア・ネフェドワ(音楽監督)、イリーナ・シシキイナ、オルガ・ユケシェワ、マリアナ・シェルカシナ、スベトラナ・ソロキナ・スボチナ、エフゲニィ・カールラモフ、スベトラナ・ドロホワ、ミハイル・コルシン、アンドレイ・サムソノフ、ミハイル・ステファニッチ

2001年7月9日、東京、紀尾井ホールにて録音(1-14)、2001年7月14日、東京、武蔵野シビックセンターにて録音(15-32) 
第17回〈東京の夏〉音楽祭より 
Licensed by アリオン音楽財団 


Cover Design: mitografico 
Cover Photo: 木彫ミミズク(国立民族学博物館所蔵/富浦隆則撮影) 


◆本CD解説(伊東信宏)より◆ 

「ドミートリー・ポクロフスキー(1944-98年)(中略)は、1973年にこのアンサンブルを設立した。」
「このCDに収録されているのは、ポクロフスキー・アンサンブルが2001年に第17回《東京の夏》音楽祭の公演の一環として行なった二晩の演奏会からの抜粋である。」
「最初の演目は、南ロシアの「ドン・コサックの音楽」。コサックとは、ロシアの圧政を逃れて、独自の共同体を形成した自由農民のことで、ドン・コサックはそのうちドン河流域に住む者たちを指す。シベリアを征服したアタマン(頭目)を歌った「カムィシンカ川」、宝物を探して旅する盗賊たちを歌った「ボルガ河を下って」、ナポレオン戦争時代の愛国歌「馬上の友」など、勇壮な歌が多い。
 続いて西ロシア「ブリヤンスク地方の音楽」。その深い森の故に、この地方にはキリスト教以前の異教的伝統が残存している、と言われる。演じられているのは、豊作を願う古代スラブの儀礼「弓矢」、異教の織物の女神「カストラマ」をめぐる儀式の歌など。
 三番目の演目は、「ネクラーソフ派コサックの音楽」。彼らも元来はドン・コサックに属したが、同時に彼らは「旧教徒」だった。「旧教徒」とは、17世紀の総主教ニーコンによる改革に反対し、それ以前の信仰や典礼のあり方を守ろうとした人々で、(中略)彼らは迫害を逃れてシベリアはもとより、世界各地へと散らばった(函館にも到達した記録がある)。その中で、ドン・コサックのグループに加わって、リーダーであったイグナート・ネクラーソフの言葉を守り、200年以上もロシアに戻ろうとしなかったグループが、「ネクラーソフ派コサック」である。(中略)中世の英雄叙事詩イリヤー・ムーロメツ」、17世紀の歴史歌謡「ステンカ・ラージン」(ステンカ・ラージンは17世紀のドン・コサックの抵抗運動を指揮した人物)に基づく歌が収録されている。
 四番目、五番目は「中南部ロシアの音楽」と「シベリアの音楽」。前者は、ベルゴロド州とクルスク州で、後者は文字通りシベリアの諸地域でポクロフスキー・アンサンブルのメンバーが習い憶えた歌が披露される。
 さらに六番目は「ロシア古儀式派(旧教徒)とロシアのキリスト教各宗派の音楽」である。ここには先ほどのネクラーソフ派コサックの歌の他に、シベリアの古儀式派、西ロシアの古儀式派の歌なども含まれる。また「ドゥホボル派」は、旧教徒とは区別されるが、既成の教会制度・聖職・典礼・聖書を否認し、イエス・キリストを神の英知を備えた単なる人間と考えた一派であり、激しい弾圧にあった。(中略)また「モロカン派」は、聖書のみを教えの根幹とし、その教えを「純粋の霊的ミルク(モロコー)」と称したグループであり、彼らも弾圧によってカフカスモルドヴァなどの辺境に追われた。
 そして最後に「ロシア正教の音楽」がおかれている。これまでの民俗的色彩の濃い、様々な地方、宗派の音楽と異なり、いずれも正教の典礼で用いられる歌である。民族的、宗教的区別を超えて、その音楽を実際に自分たちのものにし、自分たちの身体を使って演じるという、この見事な並列ぶりこそが、ポクロフスキー・アンサンブルの特質であり、聴きどころだと言えるだろう。」


◆本CDについて◆ 

ブックレット(全16頁)に曲目解説(伊東信宏)とその英訳、写真図版(モノクロ)2点、「ザ・ワールド・ルーツ・ミュージック・ライブラリー」CDリスト。インレイにトラックリスト&クレジット(邦文)。歌詞は掲載されていません。

ライブなのでいちいち拍手が入っています。踊りながら歌っているのでしょう、足を踏みとどろかす音も入っています。

★★★★★ 


ブリヤンスク地方(西ロシア)の音楽