幻の猫たち 改訂版

まぼろしの猫を慕いて

『マーラー:交響曲第9番』  クーベリック/バイエルン放送響

マーラー交響曲第9番』 
クーベリック指揮 
バイエルン放送交響楽団 

Gustav Mahler 
Symphony No. 9 
Symphonie-Orchester des Bayerischen Rundfunks 
Rafael Kubelik 


CD: Deutsche Grammophon 
制作:ユニバーサル クラシックス&ジャズ 
発売・販売元:ユニバーサル ミュージック株式会社 
20世紀の巨匠シリーズ/ラファエル・クーベリックの芸術 
UCCG-3955 (2005年) 
定価¥1,200(税抜価格¥1,143) 
Made in Japan 

 


グスタフ・マーラー 
Gustav Mahler (1860-1911) 

交響曲 第9番 ニ長調 
Symphony No. 9 in D major 


1.第1楽章:アンダンテ・コモド 26:00 
I. Andante comodo 
2.第2楽章:ゆったりしたレントラーのテンポで、いくらかぶきっちょに、そして非常に粗野に 16:03 
II. Im Tempo eines gemächlichen Ländler. Etwas täppisch und sehr derb 
3.第3楽章:ロンド=ブルレスケ。アレグロ・アッサイ(きわめて反抗的に) 13:23 
III. Rondo-Burleske. Allegro assai (Sehr trozig) 
4.第4楽章:アダージョ(きわめて遅く、そして控えめに) 21:44 
IV. Adagio (Sehr langsam und noch zurückhaltend) 


バイエルン放送交響楽団 
Symphonie-Orchester des Bayerischen Rundfunks 
指揮:ラファエル・クーベリック 
Conducted by Rafael Kubelik 

録音:1967年2月28日-3月4日 ミュンヘン 


◆本CDについて◆ 

8頁ブックレット(巻き四つ折り)に解説(渡辺護)、「ラファエル・クーベリックについて」(福本健)。

「終楽章において、彼はこの世に訣別を告げる。その結尾は、あたかも青空に融けいる白雲のようである」(ブルーノ・ワルター、村田武雄訳)。

ステレオ録音の利点を活かした演奏になっています。音はやや曇りがちですが、それはむしろ耳に優しくてよいです。
本作はマーラーの音楽による自伝かもしれないです。自然のなかで我を忘れて気楽に(comodo)過ごした幼少年期、人付き合いが苦手ゆえにどこへ行っても粗野な異邦人(よそ者)扱いされる青年期、「音楽」を通して自己を追求しつつ無理解な社会に対して(道化=トリックスター的に)戦う反抗的な壮年期、そして病を得て妻アルマに看護される第二の幼少年期(「私はまるで子供の面倒を見るようにしてマーラーを看護した。食物は一切れずつ口に入れてやり、夜は服を着たまま彼の部屋に寝た」アルマ・マーラー、石井宏訳)。第2と第3の長くて辛い時期に比べると、第1と第4の幸福な時期――第4の時期は作曲の時点では未来に属しますが――はほんのひととき、あっという間でしたが、本作ではその二つの楽章が最も長くなっているのは、「記憶の遠近法」の作用によるものでしょう。

「ある日、(中略)私が彼のベッドに坐り、回復したら何をしようかと話し合ったことがあった。「エジプトへ行って、ただ一面の青空だけの世界を見ようじゃないか」と彼は言った」(アルマ・マーラー、石井宏訳)。

★★★★★ 


Mahler: Symphony No. 9 in D - IV. Adagio


画像はトブラッハ近郊アルトシュルーダーバッハを散策するマーラーと妻アルマ(1909年)。ここでマーラーは本作と「大地の歌」を作曲しました。